寝る前に読むお話

第1話 夏の終わり

猛暑を記録した夏が、いよいよ終わりを告げる。


「ふわっ」「さあっ」


窓を明けると夜風と共にセミの鳴き声が聴こえてきた。


「チリチリチリ」


あれほど寝苦しかった夜が終わるというのに、どこか寂しさを感じるのは、不思議なものだ。


私はこの寂しさを知っている。

初恋の人を見かけて鼓動が高鳴り、目で追うが、彼は私に気づかず立ち去ってしまう。

気づかれないようにそっと見守っていたが、本当は気づいてほしかった。


また、来年会おう。


私はもうすぐ訪れるであろう秋の夜更けを思いながら眠りについた。

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