対価交換ー病気や怪我を対価で治す謎の少年は異世界人でしたー

第52話 NOのじゃロリ

「わしは異世界対策室リーダーのミナトだ。」

「で、何で子供？」

「その話しないといかんか？これも能力の1つだ。こう見えてもお前なんかよりずっと年上だ敬えよ。」

「なんでだあああああああああああああ」

僕が急に叫び出したので他のみんなはビクっとした。僕は顔を両手で押さえて嘆き悲しんだ。

「どしたゆずる。発作か？いつもの発作なのか？中学2年生になると急に右目に黒炎が宿るという発作が起きたのか？」

葵が僕にかけよってまあまあ失礼な発作を押し付けてくる。

「ミナトお前は重要な間違いを犯している。」

「ほう、会ったばかりのわしに攫われた身で意見するのか。いいだろう年上の余裕で聞いてやろう。しかしだ、しょうもない事だったらその場でお前は処刑だ。よくよく考えて口を開けよ小僧。」

「ゆずるやめておけ、お前の事だどうせしょうもない事だろう。これは友達としての忠告だ。」

葵が失礼な事を言って僕を諌めようとしてくれるが友達として言ってくれた事は嬉しかった。

「ありがとう葵。だが僕は冷静だよ。その上で異世界対策室リーダーのミナトには絶対に言わなければいけない事があるんだ。たとえこの身が焼かれようともな。」

キメ顔で葵を見た。

「ぷっそ、そうか。そこまでのぷぷ、決心があるのならもう止めはしないぷぷぷぷ。その顔止めろ。」

なぜか僕のキメ顔を見て笑う葵をよそにミナトへと向き合う。

「なんでだ？ミナト。なんでお前は……」

「あん？なんだ最後の方が聞こえんぞ、もっと大きい声でいえ。」

「なんでお前はのじゃロリじゃないんだ〜〜〜〜〜」

「「はあ？」」

ミナトと葵は呆気にとられた顔をする。

「解説しよう、のじゃロリとは語尾に「～じゃ」「～のじゃ」などをつけてしゃべる少女を示す。異世界物の定番じゃないか〜〜〜〜。ミナトお前は幼いながらも僕よりも年上だ。すべての条件を満たしている。惜しむらくは性別だけなのだが、そこは定番ののじゃロリで来るべきだろうがよ〜〜〜〜！」

「血の涙を流すほどか！」

「のじゃロリには多数登場人物が出てきても書き分けが簡単、あと個性を出しやすいというメリットも兼ね備えている作者思いのキャラクターなんだぞ！それをそれをお前は踏みにじったんだ〜〜〜〜〜。」

「いや、別にわしのせいじゃないだろうに。」

「ブレないわね、さすがゆずる。」

「あっそうだ。ミナト男の子だからこれからは男の娘として女装してもらえればのじゃロリ路線を諦めなくてもいいんじゃ…」

僕が名案を閃いてミナトに提案すると、いきなり炎に包まれた。

「あちちちちいきなり！あち。」

「ふん、しょうもない事だったからゆずるには宣告どおり処刑だ。お前の望み通りその身を焼いてな。」

目の前が真っ赤でもう何も見えない。僕にふさわしい終わりだなと熱い中ぼんやり考えていたら、ぱっと火が消えた。

僕の前には刀を構えた葵がいた。

「何のつもりだ葵？なぜ火を消してそいつを助けた？」

「ゆずるはレイをおびき寄せる餌にするのでは？今ここで消したら作戦に支障がでるのではないのか？」

「こんな些末な奴が異世界人にとって重要な存在だとは思えん。殺しても問題ないだろう。」

「それはどうかな？ゆずるの事をわかったつもりで消しておいて半年前から練った作戦に支障をきたされたのでは俺達が困る事になる。」

僕は頑張れ葵！負けるな葵！と心のなかで応援した。こんな緊迫した場面で、主に自分の命が天秤にかけられている中でふざけた発言をする空気読めないマンではないのだ僕は。

「おでおしっこしてくるね。」

空気読めないマンがここにいた〜〜〜〜。安定のアキラは部屋を出て行った。

「まあいいだろう、葵に免じて許してやろう。ゆずる座れ。」

「ありがとう葵、さすが打算的友人だ。」

「打算って口に出しちゃってるけど？隠す気もないんか！」

もちろん照れ隠しだ。

僕は円卓のミナトの目の前に腰掛ける。

「わしはお前にそんなに価値はあるとは思っていないが、これまで集めた資料からは異世界人にとっての弱みになるとの分析だ。まあ、当たっても外れてもわしにとっては痛くも痒くもない程度の作戦だ。何案も用意してあるからな。」

「基本的な事を聞いてもいい？そもそも異世界人であるレイ君やこころに異能者とはいえ、勝ち目があるの？僕が思うに、どうひいき目に見ても明らかに地球人である君たちの異能は劣っていると思うよ。」

「何だとゆずる、貴様。」

葵が怒って僕に抗議しようと刀に手をかけたが、

「待て、葵。やっと建設的な意見交換ができるようになるのじゃないか。ゆずるの考えを聞こうじゃないか。」

ミナトは僕に話せと促してくる。

「君たちの異能は確かに人間同士には有効だろうね。だけど異世界人であるレイ君やこころの使う魔法には及ばないと思う決定的な根拠があるんだ。」

「根拠？異世界対策室全てのメンバーを見ずに、たかだか2、3人を見ただけで決定的だとまでのたまう浅はかな根拠を聞かせてもらおうか。その根拠いかんでは今度は苦しむ間もなく消し炭になると思えよ。」

おおう。小学3年生、10歳くらいの男の子とはとても思えない程の圧を感じる。さすがリーダー、伊達に長年生きてはいないのだろう。いつもの僕なら早々にお漏らしをしてしまっていたかもしれないね。

だけど今の僕には心強い仲間がいるんだ。

「はい、これが僕の根拠です。」

僕はズボンのポケットから丸い球体を取り出した。

「これなーんだ？」

僕がとぼけた感じで問いた。

その球体はピンク色をしたツヤツヤの光沢を放って回転している。

「ゆずる何だその球体は？何か可愛い気配がするな。触ってもいいか？っていうかちょうだい。」

「あげないよ！葵はアグレッシブだね。」

「なめていいか？おいしそう」

「アキラ…なめていいぞ。」

僕がそう答えると球体から抗議の声が！

“キュピピピー”

「「なっ」」

みんな球体から声が発せられた事で驚いているようだ。

「おっみんな揃っているな。じゃあお邪魔するぞ。」

「レイさん、みんなって言っても3人だけですよ。」

「遅かったじゃないかみんな。とりあえず空いてる席に座ってよ。」

この部屋には窓もなく、この部屋に出入りできるドアがミナトの後ろに1つしかないのにそれとは逆方向から、いつの間にかレイ君とこころが僕を挟んで現れた。異世界対策メンバー達が驚いている中、それを意に介さずに席へと座った。

「初めまして異世界対策室リーダーのミナトだっけ？俺が君たちが消したいと望んでやまない超絶美形美少年のレイだ。よしなに。」

「こころです。よく美少女だねって言われます、よしなに。」

「じゃあ、みんな揃ったから話し合いを始めましょうか。」

間を取って僕が上から目線でそう提案してみた。

まあレイ君達をおびき寄せるために磔にされて、火あぶりと水攻めを交互に行われて死ぬ一歩手前でおしっこをかけて溺死させる予定になっていた僕なんですけどね。