第24話  相互扶助みたいなもの

「それで、後は立花さんに任せて帰ってきたぞ。」

今日の朝珍しく定時出勤してきたレイ君と昨日の事を話していた。


「やっぱりアイツら頭悪かったわ。タバコの火を押し付けられて“ギイいいいいい”って演技までしてやったのに。もう次の瞬間オレがケロッとした顔でタバコの焼け痕ないんだぜ、せっかくわかりやすくアピールしてやったのに気づかなねーんだもん。」

と、昨日の出来事を臨場感溢れるダイジェストでお送りしてくれた。


「やっぱりね。僕もあまりの間抜けっぷりにイキリ顔缶バッチ作ろうかと思ったんだけどどうだろ?売れるかな?」

「止めとけ、それ見て笑えるのオレとゆずるだけだぞ。」

二人で笑い合った。


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「相互扶助みたいなもんだな。」


前にレイ君に聞いた事がある。

対価交換には3つの条件があった。

それを破ると対価交換によって治った箇所が元に戻り、

最初の病状の2倍ほど痛むようになるらしい。


それとレイ君に危害が及ぶと(この場合の危害とは死ぬことかな)

今まで対価交換で治した人全てが対象で

元に戻ってしまうらしい。

激痛2倍増しで!


だから治してもらった事のある権力者や有力者達はレイ君を守ろうと

お互いが人員を投入したり、影で危害を加えられないように守ってくれたりもしたのだが、レイ君のうっとおしいの一言で解散させたらしい。


まあ、レイ君が脆弱な青年なら相互扶助の組織があった方が安心だからありがたいだろうけどね。彼の方がこの世界の圧倒的な強者だから必要ないね。


しかし、身体的な身を守ることではなくもめ事を解決するためには権力者達の協力があったほうが物事がスムーズに行く事も多いので、たまには昨日みたいに面倒臭い時や、先方に都合が悪い時には直接手を出さずに任せているらしい。


その方がお互い有効活用出来てWinWinの時もあるだろうしね。


ちなみに昨日の件は下部組織のガマガエルがレイ君の噂を聞きつけて勝手に無計画に実行したらしい。少し調べれば裏の繋がりも分かるように普段からチラつかせていたようなんだけれども…気づかなかったみたい。


残念な生き物達だった。


その後は…組を解散させられて他の組の一部になっただとか、

よりヤバイしのぎ担当になっただとか

キツめの仕事に転職したのは間違いないらしい。


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「あっ解除されたな。」

レイくんと一緒にいると偶にある。


対価交換の条件2である“その2、レイ君の事をむやみに他言しない。もちろんSNSで拡散してはいけない。”だ

誰かが調子にのってここの事をあれこれしゃべってしまったのだろう。

残念だが、治った箇所は元に戻されここの記憶は消される。

対価交換をする時の方式に組み込まれているのだ。


じゃあ、何で事務所にお客さんが来るのか?って思うでしょ。

言ってはダメ、記憶を消されてはこの事務所にたどりつきようがないのに。


まあ種明かしするほどでもないけど、聞いた方の記憶は消されないからと単純な事でした。

ほとんどの人は本気にしないが、稀に不確かな情報だけを頼りに来る人もいる。

嘘か本当かわからない都市伝説的な噂が一人歩きしているという理由もあるみたい。

全然はやっていない静かなブームって感じかな。


本当は3つの条件以外にも裏設定があるのだが、あえて言ってない。

結局解除するしないはこちら次第なのだ。


絶対王者なのだ。

この地球上に存在す覇王なのだ!


「踊らんでいい!っていうか舞うなよ!」

僕が久しぶりに前フリから覇王の舞を踊ろとするも、

踊る前につぶされた。


何度も何度も気持ちが昂る度にレイ君の前で覇王の舞を踊るものだから

舞アレルギーになってしまったようだ。


MYアレルギーってなんかかっこいい。

「何がMYなんだよ、わたしのじゃねーだろう!舞アレルギーじゃないし!ただゆずるの舞っている時の顔がひじょ~~にムカつくから見たくないだけだっつーの。」

「そうか、よかった。覇王の舞に変わる次の舞考えてきたんで見てもらえる?」


「だから舞うなつーの!」

レイ君は僕を強引にダンジョンへ飛ばした。


飛ばされた先にいたコボルト達が僕を見つけて足元にまとわりついてくる。


僕は舞った。

インドのバラタ・ナーティヤムを舞った。


コボルト達はどんどん僕にまとわりつく。

それでも舞った。

バラタ・ナーティヤムを舞った。


そして僕は気づいたんだ。

コボルト達にはバラタ・ナーティヤムを舞っても

何の効果もない事に。


だって今はもう20匹ぐらいに囲まれまとわりつかれているんだから。


冷静になった僕は舞を止め、コボルト達を瞬殺して歩いて帰った。


今これを見ている人2人1人は

バラタ・ナーティヤムを覚えてくれただろうか?

YOUTUBEで検索してみてもらえてるだろうか?


この歓声もつっこみも何もない静かな空間で

バラタ・ナーティヤムを覚えて帰ってもらう事が

僕の心の支えになっている。


ちなみに僕はバラタ・ナーティヤムの動画は見たことがない。





帰ってぐっすり寝た。

食後のプリンまで食べて

すぐ寝た。

……………………………………

……………………………………

……………………………………

こんなオチで大丈夫?

僕の事嫌いになってない?

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