スノードロップス
@fei1220
第1話
『初秋の候、九月に入ったとはいえ、まだまだ厳しい暑さが続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。
新学期を迎え憂鬱な日々が始まることに嫌気が差す今日この頃ですが、あなた様はどうでしょうか。また、9月の下旬には季節の花をお持ちしますから、一興として私が何を寄越すか考えてみてください。
最近は突然に季節が変わりますからくれぐれもお身体には気を付けてください。』
初秋と言えど、最近は全く秋を感じない。いつの間にか夏が終わって気付けば冬になって、日本の素晴らしい四季というものがなくなってきている。
私のたった一人の幼馴染みに送る月に一通の手紙でさえも、時間の流れと共に社交辞令じみてきた。いずれこの手紙も送ることがなくなるのだろうと思うと少しだけ寂しい気がする。でも、それでこそ、諸行無常という意味であるのだろう。
私がこんなセンチメンタルに陥っているのは今授業で平家物語をしているからであろう。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。……、それこそ数千年前から人の考え方特に心の部分は一緒であった。さらに遡れば、古代ギリシアのヘラクレイトスも「万物は#流転__るてん__#する」と言っていた。結局のところどんな世界や地域で生まれたとしても考えは一緒なのだろう。
例えば私が今抱えているこの「孤独感」という不安定な気持ちも流転するものなのだろうか。しかし、今、私が思うべきは「孤独感」でなく「罪悪感」であることは違いないだろう。
授業をサボって幼馴染みに手紙を書いて、さらに訳の分からない妄想の世界に入り浸る。間違いなく不良である。わざわざ親に学費を払ってもらいながら仇で返す。続けて親不孝でもあった。分かっていてもやめられないのだから達が悪い。
脳内会議はなんとも滑稽なもので、端から見ればこんなことで何を悩んでいるんだとか、誰も気にしてないようなことをぐるぐると反芻しているだけである。
そんな馬鹿げた反芻思考はチャイムの音で掻き消された。私はハッと我に返っていった。
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