5話「深海を覗く」ー後編

(裏がある、とは?)

(あまり内容を大っぴらにできないのですが、うちが篠部の面接をした後に、少し"トラブル"が起きまして。それが御社でも起こっていないか訊きたいんです。)

(面接をしたのは部下ですが、そんな事は聞いてないですね)

(…その方に、何か変わった事は無かったですか?)

(そう言えば先日、飲み会の帰りに怪我をしたとか言ってました)

(その事について詳しく訊きたいのです)


"手短に"と言われ別室に案内された辰実は、味元と一緒に来た藤本という社員に挨拶をする。


「"アヌビスアーツ"の黒沢さんだ。…黒沢さん、こちらが面接をした藤本です。」

「すいません、お時間を頂いて」


味元は2人に気を遣ってか、一礼して去る。


「それで黒沢さん、訊きたい事と言うのは?」

「まずは、これを」


辰実は怜子を面接した後に投げ入れられた"脅迫状"を藤本に見せる。その内容を読むうちに、藤本の顔が険しくなっていった。


「黒沢さんは、脅しに屈しなかったんですね」

「人数の少ないウチに来てくれた貴重な人材ですから。何があっても手放す訳にはいきません。」


「強い黒沢さんが羨ましい。…実は私も、そのように脅迫の手紙が来たんです。ですが無視して採用を検討していました。ですが採用を発表する前に"襲われ"まして。」

「襲われた、とは?」


思い出すのも嬉しくない記憶なのだろう、左肩の後ろ辺りを抑えながら藤本は質問に答える。


「飲み会の帰りだったんですが、帰りにいきなり鈍器で叩かれたんです。目が覚めた時に、スーツの中にこんな手紙が…」


藤本から渡された手紙を受け取り中身を見ると、"応じないようであれば、こういうことになる。これでも応じなければその先はどうなるか分かるだろう?"と汚い字で書かれていた。


(どこの悪ガキだよ、本当に)


「黒沢さんも、気を付けて下さい。」

「ちなみにですが、襲われたのはどこで?」


「若松商店街の、"ダイニングあずさ"という店の近くです。怪我をした私を介抱してくれたのもその店の人でした。…若い女の子だった事は覚えています。」

「ありがとうございます、俺も気をつけるようには」


「事情を察するに、あまり良くない事が起こってるのは確かです。ですが黒沢さんなら負けずに戦えるものだと、私は信じています。」

「信じるってなにも、初対面の男を信じて良いんですか?」


「味玉…じゃなかった味元さんがよく言ってるんですよ、"何かを成す人は、目に力が宿ってる"って。」


藤本に挨拶をし、辰実は部屋を後にした。



 *


若松物産、牡蠣養殖場


普段はあまり見学できない所でも、"アヌビスアーツ"の社員だと分かれば通してもらえた。どうやら、その前身となる広告店時代からの付き合いの賜物らしい。


桟橋に挟まれるように広がるポールと、その2つに引っ掛けられるように海水に下げられた網籠が波と共にゆっくり揺れている。そんな揺り籠が怜子の目の前に10なんて桁じゃないくらいに拡がっていた。



遠くを見ると、青いばかりだと思っていた海が、実は灰色や緑と混ざっているのが面白い。その中で1つの生き物が呼吸をしているようにみえるのだが、それは波に揺られる籠の中の牡蠣が生きている証拠なのだろう。



「何をやってるのか、気になる?」


桟橋に座り込んで網籠が波に揺れる様子を眺めていた怜子は、ふと後ろから声を掛けられ立ち上がる。栗色の髪を後ろで結んだ、青い瞳の女性だった。年は取っているようだが、そこにある相応の美しさにどこかで感じた事のある優しさが見えた。


ハーフ系だろうか、純日本人には見えない。筋が通ったような姿勢と顔立ちが、いつか憧れていた彼女に"そっくりそのまま"似ている。



頷いた怜子に、職員の女性は話を続ける。


「そう言えば、先月か先々月くらい面接に来てたかしら?」

「そうです。面接を受けさせて頂きました。」


結い上げた髪が、凛々しさを感じさせる。


「"アヌビスアーツ"に入ったんだ」

「採用してもらえました。今は黒沢さんにお世話になってます。」


"良かったわ"と笑む姿が、愛結と被って見えた。髪の色や目の色、全てがシンクロしている。


「そう…、あの人は破天荒だから色々振り回されて大変でしょう?」

「優しい方ですよ、黒沢さん。」


"そうね、あの人は"と、遠い目をしながら笑んでいた。


「ところで、この牡蠣は?」

「…この行程は何をしてるのかって事?」

「はい」


「これは"抑制"って言って、牡蠣の赤ちゃんを浅瀬の波に晒して強い種にしているの。…強い種が生き残って、弱い種は死滅していくんだけど、川から流れてくるプランクトンのお陰で、強い種は栄養たっぷりの牡蠣に育つわ。」


若松物産の養殖場は、県西部の山間から流れる川の河口に位置する。穏やかな湾内であり、豊富なプランクトンに恵まれている場所であるから、養殖に適しているのだろう。


牡蠣の養殖が始まるのは7月頃で、"殻さし"という作業から始まる。ホタテの貝殻に穴を空け、そこに針金を通し連ねた"原盤"(一連の枚数は70から80枚程度)を使い、海中に漂う牡蠣の赤ちゃんを捕まえる。これを"採苗"と言い、海を1週間から2週間漂った後に近くの岩礁にくっつく牡蠣の性質を活かして、集まりやすい場所に原盤を投げ込む作業になる。


そこから、先に彼女が話していた"抑制"という過程で育った牡蠣を浅瀬の波に晒し、育った牡蠣を沖に移動させ育てる過程があり、その次に水揚げとなっているのだ。



…貝が網籠の中で浮き沈みしているように見えるのだが、それもまた暗に"弱肉強食"を表す社会の縮図であるように見えてしまう。


「厳しい世界なんですね」

「そんな風に言う人は貴女が初めてよ」


波の上下に揉まれて、自分なら溺れずに沈まずにいられるのか?知らずに生存競争をしている牡蠣と、自らの状況は全く別物のようには思えない。


(今はちゃんと、仕事をするのに集中しないと)


先日に真崎から送られてきた写真と、その時の喜びは片隅にあるのだが"アヌビスアーツ"の社員として踏み出せた一歩も怜子にとっては大事であった。戻らない歓びとこれからの歓びとの上下に、彼女も揺られている。



「何か、悩んでるの?」

「…何でもないです」


ハーフ顔の職員に訊かれ、思わず怜子は答えてしまう。自分の心を覗いてたような浅瀬から、憧れた彼女の瞳を思わせる遠くの海へと目線が移る。隣にいる女性の青い瞳も、全く同じように揺らめいていた。



「鯛釜飯の試食を、市場で今やってるみたいよ。」

「そんなのがあるんですか?」


急に眼を光らせた怜子に、"早く行かないと無くなっちゃうわよ"と急かす職員の女性。怜子が養殖場を離れてから暫くして、桟橋まで船を漕いで戻ってきた黒いパーカー姿の男がその背中を見送っていた。



「お帰りなさい、"店長さん"。可愛い女の子を雇ったのね。」

「"わわわ"の元グラビアだよ」



牡蠣の養殖をやっているこの女性は"倉田マドリーヌ"と言うのだが、何を隠そう辰実の"義理の母"である。グラビアの黒沢愛結と"酷似している"と思われていたが、親子なのでそりゃあそうだろう。


「…うっかりだったわ。何で早く教えてくれなかったの?」

「俺も、愛結が撮影のあと市場のフードコートで"打ち上げ"だって今思い出したんだ。」


"事情がある"元グラビアと現役のグラビアがもし鉢合わせでもしてしまえば、気まずい事間違いなしである。辰実の表情を見て、良くない状況をマドリーヌは悟った。


「マドリーヌ」

「はい?」

「今日は、鯛釜飯の試食やってるのか?」


「そんな事よりあの子の心配をしなさいよ」



 *


魚市場。


辰実は辰実で、怜子の心配を全くしていない訳では無い。…このような事を今の時点で言うべきではないのかもしれないが、彼なりには"結局は彼女自身が解決すべき問題"だと思っているからわざわざあれこれと気を揉む必要が無いと思っているが故の発言であった。


自分の問題には、結局は自分しか向き合えないのである。



…そんな事を辰実が考えていたにも関わらず、怜子の今は鯛釜飯の試食で頭が一杯なのだ。


現に魚市場に到着した怜子が何をし始めたのかと言うと、獲れたて産地直送の魚達には目もくれず、市場を見回して探し当てた鯛釜飯の試食コーナーに照準を当て早歩きで向かう。コーナーに置かれていた取り皿と割り箸を手に取り、買い物客の列に並ぶ。


グラビア時代から全ての生活費を自分で賄ってきた怜子は常に"倹約"を心がけていた。そんな彼女だから、"鯛"なんて豪勢そうなものを試食程度でも口にできるのであれば喜んで向かう。


買い物にやって来た老夫婦、子連れの主婦、暇を持て余した大学生くらいの男女が心待ちに並んでいる。…その後ろで、まるでジャーキーを目の前に引っ提げられた犬のように嬉しそうな顔をして待っている怜子がいた。



(何だあれは!?試食であんなに目を輝かせる奴がいるのか!?)


試食コーナー担当のオッサンも、若松物産で働いて15年目になるのだがここまで試食に目を輝かせる客は初めてである。美味しい鯛釜飯である事は重々承知なのだが、それにしてもこの驚きようは逆にオッサンの方が驚きなのであった。


(何でい、嬉しそうに鯛釜飯を待ってやがる!…しかしこの子可愛いぞ!)


黒いパーカーにジーパン姿の、茶色みがかかったロングヘアの女の子が箸と取り皿を持って目の前にいるのだが、女の子のパッチリお目目が潤んで"早く鯛釜飯を下さい"と訴えているので、たじろぎながらも炊き立ての美味しそうな匂いを醸し出す鯛釜飯を取り皿によそって手渡す。


「ありがとうございます」


恭しく頭を下げる怜子の様子が、突き抜けてオッサンに好感を持たせてしまった。


昆布だしと鰹だしの合わさった匂いが香ばしく、怜子の欲求を徹底的に刺激する。"早く鯛釜飯を口にしろ"と伝える電気信号に忠実に従って、一口だけのだしご飯に鯛の切れ端がちょびっと乗ったものを割り箸ではさみ口に運ぶ。昆布だしと鰹だし、醤油をみりんで整えた味が、米粒によく染みている。更におこげで濃縮された味が嬉しい。


(美味しい、美味しすぎる…!)


鯛釜飯をよく咀嚼すればする程、涙が溢れてくるようだった。鯛なんて高そうなものを一介の女子大生が買った事は無いし、大学生になって自分の生活ばかりで実家に帰る事もなく倹約ばかりで過ごしてきた怜子にとっては"鯛釜飯"の味は一口だけでも贅沢なものに感じられた。


米粒に染みる魚介の味まで、味覚の隅々に伝わっていく。



試食を終え、感動の世界からロクでもない現世に戻ってきた怜子がフードコートの方に目をやると、驚くべき光景が目に入る。



「愛結さーん、今日の撮影も最高でしたよ!」

「ありがとうございます。」


愛結と、おおよそ編集者やカメラマンと思われる男性数名がフードコートのテーブルを囲んでいた。食べつくされた皿や、役目を終えたように置かれている箸が寂しそうだから歓談も終わりに近い。怜子にとっては、あまり嬉しい構図で無かったのに、それでも男達と会話をしている愛結が丁度分からないぐらいに歯切れが悪く見えるのを"どうしたのか"と心配してしまう。


「朝日が昇るタイミングで、綺麗な写真が撮れたのでねー」

「…ええ、そうですね」


何かに気を遣っている愛結の様子が、怜子には見えた。もじゃもじゃロン毛のカメラマンが達成感に舞い上がって話をしているのと温度差が激しい。…それにしても、何で自信満々のフォトグラファーは皆同じ見た目をしているのかも気になってしまう。


皆が歓談している光景に1人、愛結が戸惑いを見せている"1つのコミュニティ"の中に離れ小島があった。

話に入っているような様子を見せながら、別の方向を向いて座っている男がいる。


古浦であった。



「怜子ちゃんが仕事できなくなった時はどうかと思ったけど、やっぱり愛結さんは"クイーン"だよ!」

「そんな事無いです、元はと言えば怜子ちゃんのための撮影ですし、あの子がモデルになってたら、もしかするとまた違う写真が撮れてたかもしれないから…。」



"怜子ちゃん"という単語が出てきたあたりで、古浦が眉をひそめている。そんな彼が何の思惑を抱いているのかは分からないのだが、同じように複雑な感情を抱きながら"わわわ"の面々が概ね歓談をしているのを茫然と眺めていた。


『フードコート待ち合わせで』


辰実から来たメッセージにすぐ目を通し、携帯をポケットにしまう。


"朝日が昇るタイミングで、綺麗な写真が撮れた"という発言から、愛結の撮影は元々"怜子が"やる予定だったものだという事を理解できた。朝焼けをバックに撮影した写真を表紙に、怜子の新しい写真集が完成する予定だったのである。


(こいつも、売れる事は間違い無しだね!これからどんどん人気出て、怜子ちゃんも色んなとこに引っ張りだこだよ!)

(いい写真が撮れたら嬉しいです。…古浦さんも、いつも私の為に色々と話とかしてくれてありがとうございます。)



その撮影にまで漕ぎつけた時の、古浦の苦労を考えると悲しくなってしまう。マネージャーをしながら記事を書いたりしていた男が、慣れない撮影の企画まで請け負うという"必死の"仕事ぶりが、今でも怜子の目に焼き付いているのだ。…そんな彼女のためだけに奮闘していた彼の様子には、今も感謝しかできない。意味の分からない"契約解除"の場にいたにも関わらず、これだけ信用が消えないのはそういった彼の"努力"の賜物と言っていい。



「そうそう、さっき撮った"動画"もPRに使わせてもらいましょう。…愛結さんが映ってれば、ここもまた話題になる事間違いなしです。」

「私が、じゃなくて"若松物産"は魚介類が新鮮で美味しいから、色んな人に愛されてますって。」


盛り上がる大衆を宥める愛結の真意は、調子に乗る男達を諌めるものか、その歓談に本来いる筈であった怜子に気を遣ってのものなのか…。諌めの言葉が終わった後に場の空気がお開きに近づいていったので大衆は愛結と共に帰り支度を始め、ぞろぞろと去って行った。


「すいません、僕はちょっと"若松物産"に挨拶してから行きますので。」


甲斐甲斐しく頭を下げ、先に大衆と愛結を見送った古浦は、また別の場所に去っていく。フードコートから"わわわ"の面々が居なくなったのを見計らって、怜子は空いているテーブルの一角に座って辰実を待つ。


"了解しました"とメッセージを辰実に返し、そのまま携帯電話の画面をこねくり回しながら待っていたら、いつぞやに撮影した砂浜が映っていた。大学の講義が無い日なのに"わざわざ"5時に起きて見に行った砂浜が水平線も海も焦がしていく写真、画面には保存しきれない焦熱を背に愛結が被写体となっていたのだろう。


太陽ですら、彼女を引き立てる要素でしかない。


もし、自分が朝焼けを背に映っていたらどうなっていたのだろうか?太陽を装飾品とするぐらいの表現ができていただろうか?…そんな思考を邪魔するように、声を掛けられた。




「怜子ちゃん」

「…古浦さん」


明からさまに居心地の悪そうな顔をする怜子の正面に、古浦は真剣な面持ちで座る。


「あんな事があったから、気まずいのも分かる。…その事をちゃんと謝っても済む事じゃない。」

「古浦さんにも立場があったのは分かります。」


「それで、罪滅ぼしになるような事じゃないけど伝えておかなければと思って。」


古浦の事であるから、さっき"わわわ"が愛結としていた話の様子を怜子が見ていた事は察知しているのだろう。…となれば、恐らく"愛結の撮影"に何か裏がある事を話すに違いない。



「今回、愛結さんがやってた撮影。…たぶん分かってると思うけど、本来は怜子ちゃんがモデルになる予定だった。」

「そう…、ですよね」

「だけど君が契約解除をされ、愛結さんが代役に。…本来なら君の写真集のセールスポイントを飾る撮影だったハズなのに。」


真剣な表情の裏には、怒りよりも残念な感情が透けて見える。


「朝日をバックに撮影した写真は、"そもそも"話題性があるものだよ。…勿論、その被写体が美しく無ければグラビアの写真としては駄目になるけど。だから話題性という一点を愛結さんは奪っていった。正確には彼女の"取り巻き"なんだけど。」

「その人たちからすれば、私は邪魔だったという事ですね。」


「そうなる。取り巻きからすれば、愛結さんはまだまだ長くやっていける"金のなる木"だ。収益や人気の事を考えれば、怜子ちゃんを排除して愛結さんの撮影にしてしまった方がいい。…これが事実なら悔しいかもしれないが、もし少しでも"どうにかしたい"と思うのなら、あの人を見返してやるんだ。」


少なくとも文字面だけ追ってみれば、古浦の発言は怜子に対する"激励"なのだろう。…だが、それが激励である事を否定した者が現れる。



「自社の企業秘密を、いちデザイン事務所の社員にべらべらと喋ってしまうのは感心できませんね。」



"アヌビスアーツ"の店長、黒沢辰実である。居場所を失い、モラトリアムのどん底に叩き落とされた怜子を拾い上げた男が、気づかぬ間に古浦の背後に立って彼を諌めていた。驚く素振りも見せず、少し眉をしかめて振り向いた古浦の端正な顔立ちと、ぶっきらぼうな彼の表情が対面する。


「失礼ですが、貴方は?」

「"アヌビスアーツ"の、黒沢という者です。…今は、彼女の上司ですよ。」


ポケットから名刺入れを取り出し、片手で古浦に手渡す。同じように古浦も座ったままの状態から立っている辰実に名刺を手渡す。"わわわ"のライターと分かるが読むのも面倒な肩書の字面の先に、"古浦湊(こうらみなと)"と書かれていたのは分かった。


「僕は、彼女のマネージャーだった者でした。…つかぬ事をお伺いしますが黒沢さん、"わわわ"の有名なグラビアアイドルとは何か関係が?珍しい苗字で、2人とも同じ苗字ですし。」

「…存じ上げませんが?」


辰実がはぐらかした答えの中身を、怜子は知っていた。そんな彼女からすれば、話をはぐらかした辰実に対しても疑問を感じてしまう。


はぐらかされたのを頃合いとしたのか、古浦は席から立ち上がる。そして正面にいる辰実とのすれ違いざまに…


「警告に屈しない人がいるとは、驚きですね」

「あの程度の事が警告だったとは驚きですよ」


このやり取りは、怜子だけには聞こえてないだろう。辰実も、怜子には見えない角度で口を動かしていた事から、会話の内容は察知されるモノでは無い。



(古浦さんだけじゃない、黒沢さんも確実に"何か"知ってる…!)


立ち去る古浦の背中を、辰実は見送る。…更に怜子は、古浦を見送る辰実の背中を切っ先を構えるような目で見つめていた。

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