第24話
「悠斗っ!」
バヂィィィッ
電撃のような音が鳴り、火花がほとばしった。
霊体を捕らえようとする力と、抵抗する悪霊の力がぶつかりあう。
普段、学校で使っているような子供用にダウングレードさせたものとは違う。プロが捕縛用に使う道具だ。やすやすと扱えるものじゃない。
相手だって、こちらに協力してくれる気のいい霊達じゃない。人を害する悪霊だ。
悠斗の体は、容器と悪霊の拮抗する力に引きずられて振り回された。
「あの馬鹿っ!」
橋に向かって走る涼が、悠斗に向かって手をかざした。
悠斗の手から容器が離れ、力に引きずられていた悠斗の体が橋の上に倒れ込んだ。
「ちぃっ……」
念動力でもぎ取った容器を投げ捨て、涼が今度は自由になった悪霊に手をかざす。
「時音!俺が動きを止めるから、お前が容器を拾って悪霊を閉じこめろ!お前の能力が一番、霊に対して強い!」
「——っ、わかった!」
怖いなんて言ってられない。
あたしと涼は橋にたどりつき、倒れた悠斗と悪霊の間に立った。涼は悪霊をにらみつけ、あたしは霊体捕獲保存容器を拾って構えた。
「やるぞ、時音!」
「はい!」
悪霊があたし達に襲いかかってこようとした。だが、涼がその動きを止める。
『グオオオオオォォ……』
「ぐっ……」
悪霊は獣のような声で吠えて暴れ回った。涼のおかげでこちらに向かってはこないが、完全に動きを止められていない。
「頑張れ、涼!」
「まかせろっ!」
涼は額に汗をにじませながらも不敵に笑った。
悪霊と涼のせめぎ合いは、どうやら涼の勝ちだ。じょじょに涼の力によって悪霊の動きがおさえられていく。
(よし、これなら……)
勝てる、と思った時だった。
「う……」
悪霊の背後で、目を覚ましたエリサが起き上がった。
悪霊が、ニタリと笑ったような気がした。
「え……?」
何が起きたかわからないようにこちらを見たエリサに、悪霊が飛びかかった。
「くそっ!」
力をふりほどかれた涼が呻いた。
「きゃああっ!」
悪霊がエリサにからみつき、彼女を橋から落とそうとした。
「危ない!」
あたしは咄嗟に、エリサの腕をつかんでいた。
だが、子どものあたしの力では、エリサを引き上げられない。バランスを崩したあたしの体ごと、悪霊はエリサを橋から引きずり落とした。
「時音!」
涼の叫び声が聞こえて、次の瞬間、あたしはごおごおという激しい水音を聞いていた。
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