第3話
特殊能力者養成機関付属学園グロウス初等部五年一組の落ちこぼれトリオ。
実力はあるのに、サボり癖があり学校一の問題児と呼ばれる「念動力者」青瀬 涼。
能力値は高いのに、方向音痴で行きたいところに行けない「瞬間移動能力者」星野 悠斗。
そして、霊を触って浄化することの出来る「霊能力者」でありながら、極度の怖がりで霊に触ることのできないこのあたし、朝賀 時音。
入学以来、実技試験は毎回不合格、常に仲良く追試に参加するうちに、誰が呼んだか「落ちこぼれトリオ」なんていうめちゃくちゃダサいあだ名をつけられてしまった。
今回もまた、三人並んで担任の米田先生に怒られる羽目になっている。
「あなた達も来年には六年生になるのよ。このままでは中等部に進学しても「落ちこぼれトリオ」と呼ばれ続けるわよ。それが嫌ならなんとかしなさい」
そうは言われても、あたし達だって……少なくともあたしと悠斗は好きで「落ちこぼれトリオ」なんて呼ばれているわけではない。
「追試の課題は「二丁目の幽霊屋敷に行ってイタズラ霊のマコトくんを捕まえてくること」よ!三人で力を合わせなさい!」
米田先生はそう言って、あたし達を職員室から追い出した。
***
二丁目にある洋館は、昔とってもお金持ちが住んでいたらしいのだが、三十年ほど前から空き家になっているらしい。そして、そこにはマコトくんという四歳くらいの男の子の霊が住み着いている。
家に来た人間を驚かすのが好きなようだが怪我をさせたりはしないので、子供達の人気の肝試しスポットとなっている。
「んじゃあ、作戦を確認するぞ。まず、マコトくんのポルターガイストには俺の念動力で対抗して」
涼が言う。
「マコトくんが逃げたら、僕の瞬間移動で追いかけて」
悠斗が自信なさそうに呟く。
「時音が捕まえて霊体捕獲保存容器に入れる、と」
「うう〜」
あっさりと言われて、あたしは肩を落とした。
川沿いを二丁目に向かって歩きながら作戦を立てるあたし達だが、涼はともかく悠斗とあたしにとっては難しい課題だ。
うまく出来る気がしなくて、あたしはため息を吐いて視線をさまよわせた。
ふと、向こう岸に女の人が立っているのが目に入った。
二十代前半くらいだろうか。夕暮れの川岸にたった一人、少し怖い顔をして川面をみつめている。
(何してるんだろう?)
少し不思議に思ったが、涼が「早く来い」と呼ぶので返事をして小走りに追いかけた。
曲がり角で振り向いてみたが、ほんの少し目を離した隙に女の人はいなくなっていた。
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