第7話
一方。
「でやぁ!」
ここは離れ小島です。
武は剣で背中から弧を描きました。そのまま刀の切っ先はガコンと大海のど真ん中に見事鬼姫と同じような大穴を開けました。
けれども、大海にできた大穴は鬼姫ほどではありません。ある程度の範囲の海水と魚が遥か空へと舞い上がります。ウニや珊瑚までもが海面から天空の天辺に向かって登っていきましたが、あまり規模は大きくありません。
「お見事です! よくできました!」
「お見事!」
水のなくなった大地に、空から海水が豪雨のように降り注ぎます。辺りには濃霧が生まれました。それでも、鬼姫と蓮姫が感心して頷いていました。
どうやら、早くも武は幻の剣の一つの龍尾返しの初歩を習得したようです。
ですが、幻の剣はまだまだあるようで、これからの修行次第ですね。
早く、早く、戻ってくださいまし……武よ。
「武。今日の稽古はこれくらいにしようか。後は麻生さんとデートかい? こんな時だからこそしっかりとデートするんだよ。辛いだろうけど、もう二度とできないと思いな……。あと、幻の剣の龍尾返しはまだまだなのだから、水の惑星でもしっかり稽古するんだよ」
蓮姫の茶化す声に鬼姫が顔を真っ赤にして、即座にそっぽを向きました。こちらからでは鬼姫の横顔しか見えません。いや、見ない方がいいかも知れません。
「はい!」
疲れが吹っ飛んだ元気な声の武です。
武は一人小島から船を漕いで存在しないはずの神社に意気揚々と戻りました。鬼姫の横顔は決して見ないようにしましょうね。
私は武の後に少し興味が湧きました。
後を追いましょう。
さて、ここは存在しないはずの神社です。浜辺についた小船にはすでに麻生が飛び乗っていました。二人は二三話すと、そのまま船で神社を一周したようです。
どうやら、デートに海が選ばれたようです。
野暮ですか?
そうです。野暮です。
今は夏の季節ですね。青葉にサンサンと降り注ぐ日光に照らされた海面には、晴れた空がどこまでも写りっています。ですが、気温は熱くもなく寒くもないのです。不思議なところですね。途中、武と麻生を湯築と高取さんが赤い橋の上で見つめていました。私の知っている限り湯築も高取さんも武のことが好きだったのでしょう。いえ、武のことが好きな人は武と関わった女性ほぼ全てなのですね。
皆、複雑な心境なのでしょうか。
いえいえ、少なからず応援もしていようです。
鬼姫は除いてですが……。
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