第4話 Bパート
Bパート
玄関先での雪乃と寧音子の会話。
身バレを防ぐため忘れ物を届けに来たクラスメイトだと名乗る雪乃の声を聞いて紅葉の言う「ある人」が雪乃であることを察し、寧音子は自己紹介し、勇気を出して紅葉の配信の手助けをしに来たと伝える。(ライバル心を持ちつつも雪乃の声や雰囲気に好感を持つ)
雪乃は曖昧な返事と共に感謝を伝え、紅葉にノニジュースを渡してすぐに帰る。
紅葉の後に続いて部屋に入る寧音子。パソコンを立ち上げる紅葉に話しかける。
「コーちゃんの部屋、中二の時以来だけど、オタク趣味全開なところは変わらないねー。あっパソコンが新しくなってる! わわっ、すっごい光ってるよ!」
荷物を開けてマイクとミキサーを取り出す。
「はいこれ、指向性のコンデンサマイクとオーディオインターフェース付きのミキサーだよ」
「へぇ、よくそんなの持ってるな」
「パソコンに電子ピアノを繋いで歌を録音するときに使ってるの。へへん、イマドキの音楽家はDTMもできなきゃいけないのだ。……とは言ってもまだ勉強中なんだけどね」
ゲーミングチェアに座ってパソコンを操作する紅葉の隣で機材を準備する寧音子。
「コーちゃん、機材置くから机の上片付けて」
「はいはい、ちょっと待ってろ」
「この壁紙の子、可愛いね。えっと…… えいえい? ねいじゅ、ちゃん?」
「えなが、だよ。シマエナガのえなが」
「おー、なるほど! たしかにシマエナガだ」
デスクトップの壁紙のねいじゅを見て興味深々に聞く寧音子に紅葉はぶっきらぼうに答える。
「ふーん、この子がコーちゃんの今のお嫁さんなんだ……?」
「そっ…… そう、だけど……」
「はぁ…… コーちゃん、新しいアニメが始まる度にお嫁さんが変わるもんねぇ ダメだよ。浮気は。あーあ、私をお嫁さんにするんだって言ってたコーちゃんはどこへいっちゃったのかなぁ?」
「うっ、うるさいなぁ! そんなの、幼稚園の時の事だろ」
紅葉の顔を覗き込んでいたずらっぽく笑う寧音子から、紅葉はあわてて顔をそらす。
「はい、マイクとミキサーのセッティングはこれで完了。飲み物用意してくるからキッチン借りるね。コーちゃんはソフトをインストールしてて」
「はいはい」
「ココアで良い?」
「おう」
「ふふっ、相変わらずだね」
「なんだよ、文句あるの?」
「ううん、なんでもないよ」
インストールが完了する頃合いに寧音子がココアと紅茶を淹れて戻ってきて少し休憩。
その後、ゲーミングチェアに座りマイクに向かう紅葉のぴったり隣で寧音子がモニターヘッドホンをつけてマウスを操作する。
「はい、良いよ。なにか言ってみて」
「なにか、って?」
「何でも良いよ。それじゃあ、この子のこと、教えて」
壁紙のねいじゅを指差す。
「お、おう、そうだなぁ…… ねいじゅちゃんは――」
「もうちょっと高い声を意識して」
「えっ? えーと……」
しばらくねいじゅについて早口で語る紅葉。イコライザを操作しながら声の出し方を指示する寧音子。
「はい、終わったよ。私なりにコーちゃんの声をこの猫被?って子の声のイメージに近づくように調整したつもりだけど…… どうかな?」
モニターヘッドホンを外して紅葉に着ける。
「へぇっ!? これが、僕の声……?」
「うん、今は小学生の男の子ぐらいの声だけど、発声練習すればハスキーな女の子に近い声にはなると思う。じゃあ、使い方教えるね。ここが電源スイッチ、これがマイクのボリュームで――」
しばらく使い方を教えているうちに1枠目の配信の時間が近づく。
「んー、これで一通り使えるかな。配信のお邪魔しちゃダメだから、もう帰るね。……ふふっ、コーちゃんの配信、楽しみにしてるよ」
「だーっ! ダメダメ! 絶対聴いちゃダメだからっ!」
「えー、聴かなきゃコーちゃんがちゃんと発声練習してるかわかんないもん」
からかうように言って逃げるように玄関に向かう寧音子。靴を履きドアを開ける。
「あ、あの…… ねねっ! 今日は、ありが、とう……」
「あはは、やっとねねって呼んでくれた。コーちゃん。それじゃ、また明日。配信頑張ってね」
夕日を浴びる寧音子、満面の輝く笑顔で紅葉に別れを告げる。
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