第104話
ローガと俺はかなりの時間、剣技の応酬を繰り返した。
マレットとの戦いで奴は少なからず体力を消耗している。
今の俺がここまでやってきて一騎打ちを挑むことを奴は想定していないだろう。
奴の剣技と剣技のインターバルの隙間を狙って俺はチクチクと小技でもって奴を出血させる。
「小賢しい……」
忌々し気にうめく奴の剣技の速度が次第に落ち始める。
周りからすれば早すぎて見えない剣技で周りに血が飛び散り、次第にローガが押されているような感じで映っているだろう。
俺は容赦なく、奴に攻撃し続ける。
だがとどめの一撃を与えようとすると、奴は両腕の筋肉を肥大化させ、全魔力でもって俺の剣を受け流す。
俺は油断していたわけじゃない。
鈍い金属音が鳴り、金属片があたりに飛び散る。
—————俺の剣が粉々に粉砕されたのだ。
」
※ ※ ※
俺は折れた剣を見つめる。
「お前のそれ、名剣だが、かなり古いな。それだけの実力を短期間で身に着けたにもかかわらず剣の状態も見極められないとはわけのわからん奴だ」
「くそが」
剣を折られた衝撃が両手を震わせる。
俺は持ち手のみとなった剣を捨てる。
剣なんてただの道具だ。
訓練中になんども剣を折られたことがある。
奪われたことだってある。
だから俺は拳でも戦える。
剣が一番強いからと言って他が全て駄目だと決まったわけじゃない。
「ほう、この俺様と拳でやりあおうなんて大した度胸だ」
ポールが俺の名を呼び、俺に自分の剣を投げ渡す。
「それを使え!」
俺は頷き、抜き身の剣を構える。
「やっぱりそう来なくっちゃなぁ……このままだと俺様は負けるな」
やれやれだといった感じで笑い、奴は意外にも自らと俺の実力差を見つけた。
「これは戦争だ、言い訳はしねぇ、俺もお前も譲れねぇモンがある」
—————これで終わりにする。
奴は俺を実力者として認めたうえで全魔力を自分の剣に込める。
すさまじい集中力だ。
地面に亀裂が入り、暗雲が立ち込める。
雷が鳴る。
小石が震える。
周囲の兵士の中でそのすさまじい威圧感に気絶する。
見方の兵も敵の兵も、すさまじい大技に巻き込まれないように兵を遠ざけている。
俺は剣を構える。
赤い瘴気と金属音が鳴り響く。
不思議と恐怖はない。
俺は今までの冒険を走馬灯のように振り返る。
ポールが、ムセンが、アリサが、カルナが、シエンが、そしてマレットさんが俺の名を叫ぶ。
決して逃げない彼らに俺は目線だけで振り返り、力強くうなずく。
俺は深呼吸をする。
耐えてくれ、俺の体とそして最初の師匠、ポールの剣。
ローガが叫び声と共にすさまじい大きさの斬撃を閃光のような光と共に俺に放つ。
俺は叫ぶ。
戦場が赤い光に飲み込まれようとする。
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