第103話
勇猛果敢に戦う花蓮率いる俺のクラスのクラスメイト達。
多くは国王からもらったスキルで敵兵をなぎ倒している。
「ここは、私たちが引き受けるわ……って浅井!?どうしてここに?招集されてきたの?」
俺がこの場にいないと思っていたのだろう、花蓮が目を丸くする。
「いや、自分から志願した」
「はぁ?馬鹿なの?」
「シエスタを救うためだ」
「…………そう、そうなんだ」
少し寂しそうな笑いを浮かべる花蓮をよそに、俺は簡潔に話す。
「あの山賊野郎はどこだ、多分近くにいるだろう」
「たぶんあそこじゃないかしら?」
そういって敵と味方が集まっている場所を指さす。
だがそこは乱戦しているというより、何かを見守っているような形だった。
「一騎打ちをやっているようだな」
「……そうね、ここは私たちが食い止めるから……マレットさん直属の親衛隊もすぐに追いつくだろうしね」
「そうか」
それだけ言葉を交わす。
「浅井!」
花蓮が叫ぶ。
「死ぬんじゃないわよ!」
俺が手をあげて返事する。
花蓮は叫びながら剣を引き抜いて敵に立ち向かう。
「まったく、浅井の癖に生意気!」
※ ※ ※
ここは通さぬと敵兵がいるが、俺は難なく倒す。
呼吸器官が鍛えられたおかげか、あんまり疲れはない。
ただ不安に駆られる。
一体誰と奴が一騎打ちをしているんだ。
俺は兵の集団の中に突っ込み、叫び声に思わず耳を塞いでうつむく。
なんだ、どちらかが勝ったのか?
俺が前を向くとその光景に俺は驚き目を疑う。
「…………マレットさん!」
Sランク冒険者のクリーム髪の美女剣士が四つん這いになり、ローガの足がそれを踏み台にしていた。
ローガが味方の兵の声にこたえながらその声に負けないほどの大声で高笑いしていた。
※ ※ ※
「さぁてそろそろ、首を撥ねるとするか。Sランクのお嬢様の可愛いお首をよぉ」
「くっ……もはやここまでか」
剣先がマレットの首筋に当たる直前。
剣と剣がぶつかる金属音が鳴る。
「あ……なんだ、てめぇは。戦の作法も知らないのか?」
「んなもん知るか、俺はこの世界の人間じゃないからな」
「異世界人……」
俺の高校の制服を見て奴は一人納得する。
「恰好が違ってわからなかったが、お前、あの時の雑魚か……」
「シエスタはどこだ!?」
日本の剣が弾かれ、火花が散ったあと、ローガは抜き身の剣を持ちながら答える。
「お前、学習しなかったのか?」
「何の話だ?」
「俺がどうやってあの時、あの場所で消えた?」
俺は思い出す。
あいつは空間に穴を開いてそこから消えた。
つまり、奴はどこへでも瞬時に移動できる。
ということはつまり……。
「お前」
俺の怒りの声にローガは鼻で笑う。
「そう、俺は王城へ侵入し、シエスタ王女を監禁して、エルフの現国王も従えた。それでこの戦を引き起こしたのさ。すべては俺の女のためだ」
俺は冷静になろうと必死だ。
深呼吸を数回して気持ちを切り替える。
「安心しろ、姫には俺は指一本触っちゃいねぇ」
「ほざくな、外道が!」
「こいつとおなじことを言いやがる……いいか、俺は俺の女のためなら手段を択ばない、お前だってそうだろ……なぁ?」
俺は黙って剣を構える。
「はっ俺に勝てるとでも……ん、なんだ」
奴の顔から胸糞悪い薄ら笑いが消えた。
俺は剣先を奴に向ける。
マレットが俺の顔を不安げに見つめる。
ローガが感心して笑う。
「どうだ、今のお前なら、俺の部下にしてやってもいいぜ。他のエルフも好き放題抱けるし、お金だって好きなだけ手に入れられる。悪い話じゃないだろう?」
「ふざけるな!」
俺は一喝する。
「はん、そうやって目の前の現実を否定する……やっぱりこの話はなしだ」
そういって奴は血の混じった痰を吐く。
俺は奴の目を今度はしっかり見据える。
「俺はただの陰キャだ。目の前の現実を否定するしか能がねぇんだよ……それに」
俺は後ろを振り返る。
花蓮といつしか俺に道を切り開くために後ろで闘うムセン達。
「もらった優しさに応えなきゃ、好きな女に顔向けできないだろうがぁ!」
そういって俺は渾身の力でローガに立ち向かう。
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