第二章 最低ランク冒険者からの成り上がり

修行編

第82話

 俺はシエスタたち冒険者仲間と酒場で飲めや歌えやのバカ騒ぎをした。


 まぁ俺は控えめだったが、カルナとムセンの騒ぎっぷりは酒場の名物らしかった。


 シエンが笑いながらものすごい量の酒を飲んでいたのは驚いたが。


 そして夜に宿屋で寝てむかえた朝。


 書類を記入し終えて、冒険者の証であるブローチをもらった。


 色の違いはよほど高ランクでない限りない。


 一見するとただの鉄のプレートにしか見えない。


 そこには名前と、種族(俺の場合は異世界人とされている)。功績点とランクが書かれている。


 Fランクの仕事はなんでも屋だとシエスタから教えてもらったが、その仕事の種類はある程度分類される。


 死体処理の特別な訓練を受けた身分の低い役職を担うFランク冒険者もいるし、もちろん警備や門番、迷宮や各地でけが人の搬送をする者もいる。


 他にも迷宮内の看板の設置、休憩所の設置、休憩所で振舞われている食事の用意や掃除、迷宮内の瓦礫の撤去やたいまつの油の補給も行う。


 魔物の卵や赤ん坊の管理もその仕事で入っている。


 魔物も生き物であり生まれたての命に罪はないとしているため教会で厳密な管理または教育を施されている。

 

 例えば討伐の対象であるゴブリンは森などで成体になると害悪でしかないが、ちゃんとした教育を施せば金勘定の計算が驚くほど速い。


 話がそれたが、鉱石の採掘や溝さらいも一般市民がやると事故やトラブルに発展してしまうため、Fランク冒険者が行う。


 意外だったのは引退した冒険者の介護や街道整備の土木作業や荷物の運搬もやるということらしい。


 功績点というのはあるが、細かい数字の話だから別に気にしなくてもいいだろう。


 ただ実績を積めばその点数が上昇し、ランクが上がるということだ。


 ステータスやスキル、使える魔法などの記載はない。


 魔法学校を卒業して資格試験に合格していれば記載はあるという。


 俺たちの世界でいう、履歴書の資格欄のようなものらしい。


 ここまで理解して、俺は自分がやれそうな仕事を選ぼうとする。


 木の板に文字が書かれた羊皮紙が貼られる。


 単にその仕事が楽で人気だったりその仕事をやるのにもある程度Fランク内でも上下関係が生まれることに気づく。


 そうして選ばざるを得なかった仕事は「荷物の運搬」と「介護」の二種類。


 俺はまず稼ぎの良い山賊などに襲われる心配のない介護の職を選ぶ。


 冒険者が介護ってなんだよと思うが、刺激的な冒険から連想される仕事は金なし低ランク冒険者の俺に選択の余地なんてないのだ。


 俺は内心不安になりながら、介護を待っている老人の家へと急いだ。

 

 

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