第28話

 翌日。


 俺は起きて朝食をとる。


 少し疲れてきた。


 迷宮内でずっと緊張しているからかあんまり疲れが取れない。


 まぁ、戦闘では役立たずの俺が泣き言も言ってられない。


 周りを見渡すと女性陣が和気あいあいと髪をとかすのを互いに交代でやっている。


 さすがは高ランクの冒険者だ。


 ポールもムセンも少々予想外のことがあってもさすがはそこはプロ。


 すぐに剣を研いで準備を淡々と進めると同時に朝食の支度をしている。


 しょっぱい干し肉と乾いた白パンを野菜ゴロゴロシチューで流し込むいつもの食事。


 いいかげん異世界の食い物が恋しくなってきた。


 牛丼、カレーライス、チキン南蛮、オムライス……いろんな食べ物が頭をよぎる。


 俺は思わずため息がでそうになり慌てて押し殺す。


 ムセンがそんな俺の様子を伺って一言呟く。


「思ったんだけどよ……お前結構すげえよな、アイシャに聴くところによればお前のところの世界は魔物は空想のものらしくて、魔法もないって聞いたのに、肝が据わっているよな」


「そうですかね?」と俺は言いながらパンをちぎる。

 

「普通ならあれこれ愚痴るぜっていうか逃げ出すぞ普通。現地人の役人ですらそうなんだからな」


「あぁ、すごいことだよ」とポールも頷く。


「僕もリョウキは役割を理解してくれて仕事がはかどるよ、わからないことは素直に聞いてくれるしね……ひどい奴は泣きべそかいて僕が囮になったっけ」とポールがくすぐったそうに笑う。


「そうそう。それでそいつが逃げ出して俺達全員が減俸処分で危うく裁判沙汰になりかけてなぁ」


 そういってムセンは骨付き肉を食って笑う。


「私もすごいと思いますよ。そういえばリョウキさんの世界は勉強がたくさんできるらしいじゃないですか」とシエンが笑う。


 心なしか女性陣の距離が近い。


「そうね、魔物がいなくて勉強ができるのは結構うらやましいわ」とカルナが言いながら頷いてアリサも同意を口にする。


 和気あいあいとした朝の時間もすぐに終わる。


 テントから出ると、クリーム色の髪をした白銀の甲冑を身に着けた美人の女性剣士がアイシャさんから事情を伺っていた。


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