第26話 

 霧から姿を見せたのはのグールだった。


 少なからずパーティ内に動揺が生まれる。

 

 「遅かったか……いや、でもなんでだ冒険者がグールになるにしては早すぎる……まさか……」ポールは考える。


 「そんなこと考えている場合か!俺らと同じ階級の冒険者のグールで様子を見る限りピンピンしているぞあいつら」とムセンが怒鳴る。


 「ここは一旦退きましょう」とアリサは冷静にいい、シエンが激しくうなずき、カルナも悔しそうに同意する。


 「いや見たところ、数はたった五人だ、数はこちらと同じだし勝てる可能性は十分にある」とポールはいい放つ。


 「俺も賛成だ、第一、ここで倒さなければ冒険者のグールなんてなにをしでかすかわからねぇし、人語を解すほどの奴だった場合、上位アンデットに成長するのも時間の問題だ」

 

 男性陣と女性陣で意見が分かれる。


 そうこう言っているうちに、また一人、また一人と冒険者のグールが現れる。


 「クソ、数が多い!逃げるぞ」とムセンがいいポールも渋々頷く。


 俺は書類を慌ててカバンにしまい、パーティ全員は無事に逃げ延びる。

 

 ※ ※ ※

 

 迷宮の魔物は縄張り意識に近いものがあるため上の階層には追ってこない。


 上に上がると、他の業者が俺の書いた書類をもとに大規模な作業を行っていた。


 その中心にいたのはアイシャさんだった。


 「あら、どうしてあなたたちがここに、もう終わったんですか?」

 

 暢気にそういう彼女をよそに俺は慌てて事情を説明する。

 

 

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