第9話

 彼女はチップを俺に渡す。

 

 俺はそれを受け取り話し始める。


「まぁ、俺が持っている魔物図鑑に載っている種類の魔物なら多分どうにかなるし、食文化の改善についてはいろいろと順を追って話さなければいけない」


「構わないわ、今は朝だし、ここの肉とエールで乾杯しながら話しましょうよ、異世界人と真剣に話せる機会なんてそうそうないからね……ちょっと待ってあなたもしかして魔物図鑑持っているの?」


「模写本のさらに模写だけどね」


「バカ、そんな大事なことさらりと言わないでよ」


「いや、だって聞かれたらそう答えるしか」


「あぁ、もうお人よしなんだから、店主、このことは内緒にしてよ」


「なんのことだ?」


「よろしい!はい、お勘定、あんたの分も払っておくわ」


「いや、別にいいって」


「これでもおつりがくるくらいよ!さっさと宿屋にいらっしゃい!」


 彼女は俺の手首を引いて先を歩く。


 ※ ※ ※


 ニヤニヤ笑う宿屋のおばちゃんをよそに、俺は用意された部屋に入る。

 

「それで?」あわてて部屋のドアを閉めるエルフの美少女。


「何が?」


「図鑑よ、図鑑」


「まぁあるけど」

 

 俺は部屋に届けてもらったリュックサックから図鑑を取り出す。


「これが、この世界に百冊しかないといわれる魔物図鑑の模写本コピー……」


「俺のものだからな」


「わかっているわよ……それでこの本を……いや、みなまで言わなくてもいいわ、たぶんだけど異世界に召喚させられたお詫びにもらったのよね」


「お、おう」


「私が知りたいのは、最近森やダンジョンで悪さをしているワームよ」


「えっと……ワームねぇ」


 そういって二人でワームのページを見た。

 

 ……美女エルフとワームについて調べるとか謎体験である。



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