また腐る
@TheDreamer
また腐る
男の目の前に段ボール箱があった。
男は箱にリンゴを入れる。それが仕事だからだ。
リンゴを3、4個ほど箱に入れた時、あることに気がついた。
リンゴが全て腐っていたのだ。
しかし男だけにはリンゴが腐ることが予想ができていた。
それでも心は傷付いた。
あるとき、男は箱に白桃を入れることを決めた。
それは一歩だけ足を動かす必要があることだった。
さらに仲間の女も協力してくれる。男は一歩だけ努力できた。
それは大きな大きな小さな一歩だった。男が遂に白桃を箱に入れた。
男にとって白桃は腐らなかった。しかし女には腐って見えた。
女は腐りものに弱いため、協力を断った。
男にとって断られたことは重要じゃない。
なにより誰かに腐って見えたことに虚無を感じた。
そして白桃は腐った。
傷ついた男は夢を見た。それは悲しい夢。
人生、未来、可能性、それら全てが霞んで見えた。
男は目覚め、遠くを見た。見えたものは夢だった。
遠くまではっきりと、そして残酷なほど現実だった。
ああ、また腐ったリンゴを作ろう。
だが今回は少しだけ、酷い現実と違わないほど小さい変化が確かにあった。
箱のリンゴが腐る前、縄から腐り者が千切れた。
裁かれる者は、リンゴを腐らせる能無しか、能無しを見限ったアバズレか、
それともリンゴを箱に入れる仕事だろうか。
これを理解するには、今の私はあまりにも青い。
また腐る @TheDreamer
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