こころけっと1号18年目

@TheDreamer

こころけっと1号18年目

ある宇宙船が打ち上げに成功した。

それはふらりふらりと飛んでゆき、遂にはある宇宙空間に辿り着いた。

そこは通称「星の可能性宇宙」と呼ばれているかは分からない。

しかし船員にはそう感じたのである。ある日、船員がこう感じる。

「船長、我々が幸せになるには星を目指すしかありません。」

船長はゆっくりと体を起こしこう答える。

「うん。その通りだ。私に必要なのは星だけだ。きっとそうなのだ。」

「ふふふ、船長ったらやっとやる気が出ましたね。」

船長が行動したのは何光年ぶりだろうか。

ひどく時間の経過が身に沁みる。

やがて宇宙船は動き出し、ついに星を手に入れた。それは長い道のりだったはずだ。

励み、悩み、成し遂げた。

しかし、船長は船員に対して感謝はしない。

なぜならその苦悩は己に対する罰と感じるからである。

私を監視している何かからの戒め。船長の足跡にぽっかり空いた空白の証。

そう思わなければ船長の命はないだろう。

あまりにも酷くて、悲しくて、無情。

少し時間が経った。船長がまた動き出した。

今回は自らの意思で動き出した。あたりの輝く銀河系を見た。

それは直接見たわけではない。誰かは知らない、その輝きが本当かも分からない。

だが、船長は輝く銀河から、いくつもの星を見た。

星の集合体。いつか船長が夢見たもの。

船長は目を光らせ、すぐに星を調べ始めた。そして気づいた。

まだ時間はある。きっとある。まだ間に合うと。

そのような感情を抱くと、あることに気づかざるを得なかった。

それは、星があまりにも多いこと。それは可能性であり、苦しみもまた孕む。

船長は目指す星を選ぶ。銀河系を作るために。しかし選ぶことはできない。

なぜならココロケット2号は素敵な一等星を持っているからだ。

船長は2号になりたかった。そのためには星を集める必要があった。

5等星を集めて一等星にしなければ。

しかし問題がある。それは星があまりにも多すぎる。

多すぎて、なにより手間がかかること。さ

れど船長はためらわない。「全ての星を目指そうではないか。銀河を作るには必要なことだ。」

全て。ゴミ拾いとは訳が違う。

星という重みを船長は気づいているはず。だが場所はココロケット。

思うだけなら心地よい。

また時間が経った。星々を目指して船長はようやく気づいた。と言うより再確認だ。星の重みと、なにより不可能さを強く実感した。


この世の果に、やがては悟る。


「星、ああ星よ。星とは目指すべきものではない。

赤子から星のかけらを握りしめていたものが星となり、銀河と成る。

浮世のなんと虚しいことか。私にできることはなにもない。さようなら銀河。

あの日見た銀河たちよ。」

船員はただ見ていた。嘆く者もいた。恥じる者もいた。悔いる者もいた。

だが宇宙船がゴミに成り果てた今、関係ないこと。

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