第151話 魔獣討伐隊 ⑥


 ダンジョンの下層へと降りて行く俺達、油断無く進んでいくので、様子を見ながらの進軍だ。


ここまでの間、モンスターなどの襲撃は無い。静かなものだ。それもその筈。


「一本道だな。」


「そうね、この先に何があるのかしら?」


そう。下まで降りて様子を窺うが、辺りは一直線の一本道だった。


ずっと奥まで続いている、左右の壁には既に明り取りであろうか? 松明が備え付けられていた。


その松明の明かりが、ずっと奥にまで続いている。完全に一本道でまっずぐ歩く事になる。


(この感じ、間違いないな。)


これはゲーマーとしての勘だが、この先に待っているのは間違いなくラスボスだ。


そんな感じがピリピリと伝わってくる、皆もそれに気づいているのか、言葉数は少ない。


モンスターの姿も一切ない。余計なものは排除している。といった事だろう。


 通路の最奥に到着した、目の前には豪華な装飾を施された大きな扉がある。


うむ、実に禍々しい感じの扉だ、この先にボスが居ますと、その存在感をアピールしている。


この扉を開ければ、いよいよラストバトルが始まるだろう。


 ………俺の冒険も、いよいよ終わりが近づいて来た、って感じだな。


ステータスは万全。皆の様子も変わりない。寧ろ、気合が入っている。


俺は一度、皆の方を向き、一人一人の顔を見ながら言う。


「皆、ここからは凄く危険な戦いになると思う。もしかしたらとんでもない奴が居る可能性もある。おそらくだが、この先、混沌の眷属かそれ以上の存在と戦う事になりそうだ。」


「混沌の眷属?」


ガーネットが初めて聞いた様な声を出す。まあ、無理も無い。


「ああ、要するに、この先間違いなくラストバトルっぽい事になりそうだ。だから、無理に付き合う事は無い。命を賭ける覚悟がある奴だけ、付いて来てくれ。」


俺の言葉に、皆はお互いに顔を見合わせ、そして肩を竦ませた。


「今更水臭いわねえ、ジャズ。私はあんたの先輩よ? 後輩の面倒を見るのは当たり前じゃない。」


「わしもいいぞい。筋肉がかつて無いほどに躍動しておる。このまま進むぞい!!」


「うーん、儂は正直、酒に在りつきたいんじゃが、まあ、昨日今日知り合ったばかりの相手に命を預ける覚悟は無いな、すまんが、儂はここで待機しておる。」


ガーネットとアドンは参加してくれる様だ、ボム爺さんはここに残ると言った。まあ、そうだわな。


「解った、ボム爺さんは俺達が戻らなかった時の為に、ここに残ってくれ。万が一の時、仮設基地へ戻って報告してくれればいい。」


「すまんが、そうさせて貰う。わしゃぁ、もう歳だでのう。」


ボム爺さんはすまなさそうにしていたが、これも立派な役目だ。


「じゃあ、いくぜ。皆、覚悟はイイか?」


「いつでも!」


「わしに任せい!」


俺は大きな扉を両手でぐっと押し開き、ゆっくりと扉が開く様を確認する。


さて、この先何があるのやら。


鍵などは掛かっていなかった。扉もそんなに重くない。すんなりと開いた。


油断なく進み、中へと入る。


 目の前を見据え、まず目に入ったのは、その広大な広さの空間だった。


ドーム球場かと思う程の広さがある。全体的に明るい。至る所に松明のかがり火が有る。


壁にも等間隔で松明の明かりが設置されている、部屋全体が不自然なくらいに明るい。


 そして、その中央に人影らしきモノ。


更にその奥に、様々な骨で組まれた祭壇の様なモノ。


俺達の侵入を知ってか、人影がこちらを向き、指をパチンと鳴らした。


その直後、後ろの扉が閉まった。


ふーむ、閉じ込められたか。いよいよ逃げられんな。ラストバトルっぽくなってきやがった。


「おやおや? お客さんかな? なんてな。我を邪魔しに来たのは知っている。」


人影が喋った、いや、良く見るとうっすらと透き通っている。ゴースト系のモンスターか?


いや、まさかな。俺は知っている。奴こそがラスボス、禍々しい祭壇といい、間違いない。


「お邪魔しますよ、ちょっくら調べに来たんですがね、まさかとは思いますが、ここ、「混沌の王」カオス復活の為の儀式場じゃありませんよね?」


戦闘態勢で近づく。ガーネットもアドンも油断なくついてくる。


「だったらどうだと言うのですか? 邪魔はしないで頂けるといいんですが。」


………こいつ、まさかとは思ったが、やはり人間じゃないか。


黒いオーラを纏った禍々しい存在の魔術師。カオスの眷属の類だ。


「ウォーロックだな、こんなところで何を?」


「はあぁ、いいですか? 邪魔はしないで頂きたい。カオス様復活の為の儀式なのですから。」


やはりそうか、不味いな。普通TRPGってのは、魔神王だとかが復活した時点でゲームオーバーだ。


世界は混沌に包まれ、滅ぶというバットエンドシナリオになる。


カオス復活だけは何としても阻止しなくてはならない。絶対にだ。


「おや? たったの三人だけですか? まさかその人数で我が儀式を邪魔しようと? 随分と見くびられたものですね。」


「いやなに、あんたを倒せば決着が着くと思うんだがね。」


「それこそ見くびられたものだ、この私を倒すと? フフフ、ハハハハハ。」


この余裕、こいつ、強いな。


ウォーロックは指をパチンと鳴らすと、自身の周りに無数の魔法陣を展開させた。


「では、私は忙しいので、こいつ等で相手をしてあげますよ。」


ちっ、召喚魔法か、しかも部屋全体に魔法陣が出現している。


一体幾つ召喚するつもりだ? こんな数、一々相手に出来んぞ。


そして、俺達の前に召喚されたモンスターは、ゴブリン、オーク、オーガ、トロル、ミノタウロスといった様々な種類のモンスターだった。


「おいおいマジか? 軽く200体は居るぞ。どうなってんだ?」


おびただしい数のモンスターが、一斉に咆哮を上げ、今にも襲い掛かってきそうだ。


ウォーロックに辿り着く前に、まずはこいつ等を何とかしなくてはならん。という事だな。


一々付き合ってられん、精神コマンドの「大激怒」を使う。


こいつは「敵全体」に2500ポイントの固定ダメージを与える。


そう、「敵全体」に、である。問答無用で使用し、全てのモンスター及びウォーロックに2500のダメージを与える。


効果はてきめん。一瞬のうちに決着が着く。


召喚されたモンスターは、その全てに効果があり、悲鳴を上げる事無く砂へと変わった。


「な!? なんだと!? 貴様! 何をした!!?」


ウォーロックが慌てている、無理も無いな。召喚して早々、全て倒してしまったからな。


しかし、当のウォーロックはまだ倒れていない、タフな奴だな。流石ラスボスといったところか。


「さて…と………、ここからが正念場だよな。皆、油断せずいこう。」


「オッケー!」


「なんじゃ、わしの出番は無いかと思っておったが、筋肉をアピールする絶好の機会じゃな!」


気合十分。よっしゃ、一丁いきますか!!









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