第115話 オーダイン王国の後日談


 その日は国葬が執り行われた。


 王都防衛戦にて、戦死した人達を弔う為、王様が労いと弔いの言葉を言い、しめやかに葬儀が済んだ。


その後は酒蔵が解放され、王都の人々に酒が振舞われた。


王都防衛に成功したとして、勝利の美酒を味わう人達で賑わう、俺達もご相伴に預かった。


 ヘイワードと知り合ったのも何かの縁だ、俺と同じ兵士という事で、話が合い、酒もすすんだ。


フィラとヘイワードが、酒を酌み交わしている。


「へえ~、するとフィラはシャイニングナイツになるって事なのかい?」


「ええ、そうです、ヘイワード、王都までの案内、どうもありがとう。」


「いや、いいよいいよ、それぐらい、それにしてもまさか、たった一人でオークロードを倒すなんてな、今じゃ王都中その話題で持ち切りだぜ。やっぱあんたすげーな。」


そんな感じで、和やかに時が過ぎて行った。


 翌日、フィラの奴隷契約を解除する為に、オーダインの奴隷商へと立ち寄る。


「そうですか、解りました。では、この方を契約解除してほしいという事ですな?」


「はい、お願いします。」


「では、この者の奴隷契約を解除します。」


商人が何やら詠唱をして、フィラの首に嵌まっていた首輪が、ガチャリと音を立てて外れた。


「はい、解除しました。これでこの方は自由です。ああ、それとこの首輪と主従の指輪はこちらで回収致します。」


こうして、フィラは自由の身になった。


「何だか不思議な気持ちです、ご主人様に買われて、ここまで生きてこられて、自由にして頂いて。しかし、私のジャズ様に対する感謝の気持ちは変わりません。今もお慕いしています。」


「ああ、嬉しいよ、フィラ。だが、もうご主人様はよせ、今のお前はもう自由だ。これからは対等な立場だよ。」


「はい、ありがとうございます。ジャズ様。」


ところで、何故かポール男爵たちも一緒だ、こいつ等ほんと暇なのか?


「なあポール男爵、ここへは何しに?」


「そんなの決まっておるではないか。この国の優秀な戦闘奴隷を買い付けに来たのだよ。その為にオーダイン王国までやって来たのだからな。」


なるほど、そうだったのか。「カウンターズ」の戦力増強を考えているんだな。


「男爵様、この女奴隷なんていいですぜ。」


「いやいや、こっちの女の方がいい身体つきをしていますよ。」


「お前等なあ、まあ、我がカウンターズには紅一点が欲しいと思っていたところだし、いいか。」


こうして、ポール男爵は金貨70枚の大金で、獣人族の女武闘家を買っていた。


さて、これからどうしようと思っていたところで、フィラがこんな事を言った。


「ジャズ様、私は今から女神教会へと赴き、戦士の魂に祈りを捧げたく思いますが、よろしいでしょうか?」


ふむ、フィラと共に戦った戦士に哀悼を、という事か。シャイニングナイツらしくなってきたじゃないか。


「そうか、解った、俺も行こう。付き合うよ。フィラ。」


「何だお前等、教会に行くのか? 我々も付き合うぞ。」


「ポール男爵は目的を果たしたんだろう? 別に付き合わんでもいいぞ。」


「そう言うなジャズ。我々だってこの街の防衛に貢献したのだぞ。付いて行くからな。」


「はいはい、好きにすればいいよ。」


 そんなこんなで、女神教会へとやって来て、早速フィラが女神像の前で祈りを捧げていた時の事だった。


なんと! フィラとポール男爵の体が光輝いた。


「こ、これは!? もしかしてクラスアップの輝きでは?」


「あ! ホントだ。男爵様! 遂にやりましたぜ! クラスアップですよ!」


「おお!? 遂に俺にも! よーし! 転職の儀をするぞ!」


「はい! 早速司祭様に報告を!」


何だか急に慌ただしくなってきた。フィラは解るが、まさかポール男爵までとは。


 こうして、フィラとポール男爵は、オーダイン王国の女神教会にて、沢山の人達に囲まれてクラスアップの儀を執り行うのであった。


クラスアップというのは、一生に一度あるかないかと言われているそうだ。


だからなのか? 二人を祝福する為に集まった人達は、どこかお祭り気分で参加している様子だ。


 祭壇を挟み、司祭様が二人の前に立ち、転職の儀が派手に行われた。俺はフィラの見届け人になり、男爵の取り巻きがポールの見届け人になり、クラスアップの儀は無事、終了した。


フィラは上級職のバトルマスターへとなり、ポール男爵はウォーリアへとなった。


(折角だ、フィラのステータスをチェックして、スキルを何か習得させるか。)


フィラのステータスを見る。スキルポイントは8ポイントもある。


よしよし、じゃあ、まずは体力に影響するタフネスの上位版。「ハイタフネス」を付けてみる。


お次は、敏捷に影響する「ハイスピード」、これも付ける。


これで残りのポイントは2ポイントだ。これは取っておこう。今後の為に。


フィラのステータスはこんな感じになった。


フィラ  HP 55

職業  アマゾネス

クラス  バトルマスター


筋力 S  体力 S  敏捷 S

器用 A  魔力 F  幸運 A


スキル

・幸運上昇

・ストレングス

・スピード

・タフネス

・斧熟練

・器用上昇

・最大HP中上昇

・ハイストレングス

・ハイスピード

・ハイタフネス


スキルポイント 2


武器熟練度 斧 410



こんな感じになった、凄いなフィラ。中々のステータスになっているじゃないか。


もう、俺の出番は無さそうだな、これからはフィラは一人でもやっていける事だろう。


 さて、フィラが上級職にクラスアップしたのならば、お祝いに何かプレゼントをしよう。何がいいかな?


 あ! そうだ。これなんかいいんじゃなかろうか。フィラはシャイニングナイツになるのならば、必ず必要になってくると思う。


ショップコマンドで購入、アイテムボックスから取り出す。スキルの書だ。


「フィラ、クラスアップおめでとう。これは俺からのプレゼントだ、受け取ってくれ。」


「こ、これは! スキルの書ではありませんか! この様な高価な物を私に!? よろしいのですかジャズ様。」


「ああ、こいつは「ホーリーインパクト」のスキルを習得できる書だ。通常攻撃が聖属性の攻撃になるスキルだよ、フィラがシャイニングナイツになって、カオスとの戦いになれば必ず必要になってくる筈だ。カオスの眷属は魔物だからな、聖属性が有効だろう。」


フィラはスキルの書を受け取り、大事そうに胸に抱き寄せた。


「あ、ありがとうございます、ジャズ様。感謝致します。なんとお礼を言えばよいのか、ジャズ様、私はこれで人々を守ろうと思います。ジャズ様に恥じない様に、務めを果たして参ります。」


「ああ、だが、あまり気負わなくてもいいぞ。自分に出来る範囲でやっていけばいいと思うからな。無理だけはするんじゃないぞ、いいなフィラ。」


「はい。私は、………私は、………幸せ者です。」


 うむ、いい笑顔だ、これが見たかった。やはりフィラには戦士の顔もいいが、こういう顔をしていて貰いたいものだな。


と、ここでシャルロット殿から俺にアイテムが渡された。


「ジャズ殿、お約束通り、この指輪は貴方に差し上げます。どうぞお受け取りを。」


「あ、はい、どうも。」


ふーむ、テレポートリングか。いいな、これで俺にも転移出来るようになった訳だ。


「それと、もう一つあります。」


「何ですかな?」


「これは、「フレンドリング」。シャイニングナイツの戦友ともの証の指輪です。これを貴方に。」


「ほう、戦友の証ですか、貰ってもよろしいのですか?」


「はい、ジャズ殿にこそ、相応しいと存じます。貴方のその指に嵌まっているブレイブリングを見た時から、渡すつもりでしたから。」


おっと、俺が義勇軍だって事は察しがついていたか。


「そうでしたか、では、頂いておきます。どうもありがとう。」


 こうして、オーダイン王国の平和は守られた。皆は必死になって戦い、傷つき、倒れ、それでも前に進み、生きている者が色んなものを背負いながらも、懸命に生きる。


今回、俺はあまり役には立たなかったが、まあ、こういう事もあるという事だな。


「戦友の証」を指に嵌め、それを眺めながら、ひとまずの平和を感じていた。









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