第99話 フィラ強化計画 ⑦
地下3階層の最奥、そこで待ち受けていたのは姐御ともう一人の黒ローブの女性。
それとやはりあった、大規模転移装置。
そこで、何やら姐御は黒ローブの女性と相対している様子だった。
おそらく姐御もこの異変に気付いて、ここまでやって来たという事かもしれない。
モンスターが居ないなんて普通じゃない、何かがおかしい。
考えられるのは、やはりこの大規模転移装置によってモンスター達が何処かへと転移した、もしくはさせられたかのどちらかだ。
「あらあら、千客万来ね、うふふ、いいわ。ちゃんと相手をしなくては失礼ね。」
そう言って、黒ローブの女性は懐から何か宝玉の様な何かを取り出した。
(あのどす黒い宝玉! まさか、モンスター召喚のアイテムか!)
黒ローブの女性は、幾つかの黒い宝玉を少し離れた場所へと投げて、地面へと転がす。
「さあ、あなたたち、出番よ。たっぷり楽しんでね。」
そして、宝玉から出た黒い霧が、辺りに漂い、周りを覆い隠した。そして、そこから現れたのは。
「カカカカカッ」
アンデットモンスターの代名詞、スケルトンだ!
「モンスターと遭遇! スケルトンナイト1! スケルトンソルジャー4! 気を付けろ! ナイトは手強いぞ!」
チッ、スケルトンナイトかよ、ゲームでは終盤に現れるモンスターだってのに!
「ジャズ! どうするの?」
「ジャズ様! 指示を!」
ガーネットとフィラが俺の指示を待っている。ここは的確に指示をとばしていくしかないな。
「俺とフィラでナイトの相手! ガーネット、男爵たちはソルジャーの相手! 油断するなよ! 手強いぞ!」
「オッケー!」
「はい!」
「仕方ない、やるか!」
「「「 おおーー! 」」」
よし! パーティー戦だ。気を引き締めて挑むしかない。黒ローブの女性は姐御に任せるしかないだろう、いまのところはだが。
おそらく俺やフィラが加勢しても足手まといになるだけだ。
スケルトンソルジャー、こいつはそんなに強くない、剣で武装しちゃいるが、大した事は無い。
問題はスケルトンナイトの方だ。こいつは剣と盾で武装し、鎧まで着ている。こちらの攻撃を盾で防ぎ、カウンターの剣による攻撃をしかけてくる厄介な奴だ。
ナイトの相手は俺とフィラで対処するしかない。他のソルジャーは何とかガーネットとポール男爵たちに任せよう。
「行くぞ! フィラ!」
「はい!」
さて、まずは様子見、俺がナイトの注意を引き付けている間に、フィラに後ろからバックスタブを仕掛けさせる。
うまくいくかは正直わからん。だが、やってみなくては始まらない。
まずは初手、雷の小太刀をナイト目掛けて振り抜き、当てる。
予想通り盾で防がれる。だがその直後、フィラがこちらの意図を読んで、後ろから接近。バックを取る。
「てええい!!」
フィラのバトルアックスが振るわれる。対象は勿論スケルトンナイトだ。
こちらの攻撃を防いだので、盾は使えまい。どうだ!
しかし、ナイトはその場から一歩後ろへとさがり、フィラの攻撃を意図も容易く避けた。
俺もその場から一歩後ろへとさがり、距離を取る。
(仕切り直しか。だが上手く連携は取れている。)
ちらりと、ガーネットたちの方を見ると、ガーネットの弓がソルジャー1体を仕留めたところだった。
「やるな! ガーネット!」
「…………うーん、何でかよく解らないんだけど、ジャズと一緒に戦っていると、何故か勇気が湧いて来るのよね、なんでかしら?」
ああ、それはおそらく俺の装備している「勇気の腕輪」の装備スキル、「指揮官」のお陰だな。
周りの味方に勇気を与え、士気を高める効果があるのだ。
「その調子で頼むぜ。こっちはナイトの相手で手一杯だ!」
「オッケー! 任せて!」
男爵たちの方も、ガイア、オルテガ、マッシュがそれぞれ得意分野で動き、しっかりと連携が執れていた。
スケルトンソルジャーが弱ったところを、ポール男爵が止めを刺し、確実に1体づつ対処している。
「こっちも負けてられない! フィラ! 同時攻撃だ!」
「はい!」
さて、俺達はナイト相手にまずは接近、距離を縮める。俺とフィラで挟み込むように動き、ナイトを起点に左右から攻める。
「くらえ!」
接近の途中で、クナイを投擲、ナイトの頭部に命中。かなりのダメージを与えた。
よし! いける! だが油断はしない、足元を掬われるかもしれんのでな。
先にフィラの攻撃が届いた。バトルアックスを振り上げながら接近し、攻撃範囲に入ったと同時、武器を振り下ろす。
物凄い武器の振り抜き速度だ。これは避けられまい。
案の定、ナイトは絶大なダメージを負った。凄いぞフィラ、斧との相性はバッチリだな。
間髪入れずに俺の小太刀も攻撃に加わる。フィラに負けない様に高速で武器を振り抜き、鎧ごと粉砕する。
その瞬間、スケルトンナイトが砂となって床に崩れ落ちた。召喚モンスターは倒されると、こうして砂になるのだ。
よーし! スケルトンナイトは倒した。俺とフィラの二人がかりだったが、倒した事に違いはない。
ガーネット達の方を見ると、ガーネットがスケルトンソルジャーをもう1体倒したところだった。
やはり倒すとその場で砂に変わり、床へと崩れ落ちる。
男爵たちも上手く連携攻撃で、スケルトンソルジャーの残り2体を倒したところだった。
「へ~~、やるなあ、ポール男爵たち、伊達に冒険者歴は長くないって事か。」
「はっはっは、まあ、これくらい余裕だよ。俺様に任せておけば問題ない。」
俺がちょっと褒めると、男爵は直ぐに調子に乗る。いかんよ、そんな調子じゃ。
「男爵様、俺達が上手く連携したからですよ、そこんところちゃんと評価してくださいよ。」
「まったくですよ、大盾のガイアが引き付け、オルテガのハンマーで粉砕し、マッシュがかく乱してモンスターを1体づつ対処していく。俺達の連携も捨てたもんじゃないでしょ?」
「解っておる、みな、よくやってくれた。よーーし! これで残すはあの女だけだな。それにしてもあの女は一体何者なのだ?」
え? 知らないで戦っていたのか?
「ポール男爵、あの黒ローブの女性はおそらく「ダークガード」だ。危険な奴等だと思う。」
それを聞いた男爵たちは、みな一斉に声を上げた。
「な、なんだと!? ダークガードとはあのダークガードの事か?」
「ひえええ~~。」
「なんてこった、そんな歴史の裏舞台に登場する様な奴が相手とは………………。」
「聞いてねえよ! そんなの!」
おや? ポール男爵たちは何か知っているのかな?
「知っているのか? 男爵。」
「ああ、俺様だって貴族だからな、それぐらいの情報は入って来るものさ。それにしてもまさかダークガードとはな………………。」
よし! こちらに差し向けられたモンスターは全て排除した。後は姐御が黒ローブの女性を何とかしてくれれば。
そう思い、姐御が戦っている方を見ると、丁度そこには黒ローブの女性が突き出した拳が、姐御の腹に一撃入ったところだった。
「な!?」
姐御はくの字に折れ曲がり、息苦しそうにしながら苦悶の表情をして、地面に倒れ込んだ。
「あらあら、もう私のかわいい部下達は倒されてしまったの? いやだわ、弱い者って。」
こいつ! 武器も無しに姐御と渡り合って倒しやがった。
(という事は、黒ローブの女性はモンクか? いや、姐御がソードマスターなんだから、おそらくあの女はマスターモンクあたりだろうか?)
「冗談じゃない! うちのギルドの看板冒険者を、あんな化け物、相手に出来る訳がないだろうが!」
「落ち着け男爵、確かにあの女は強い。だが、やってみなくては解らんだろう。」
「けどジャズ! あの姐御がやられたのよ! 私達じゃとても相手になんて出来ないわよ!」
確かに、ガーネットが言いたい事も最もだ。俺もあの黒ローブの女性には勝てそうにない。
だが、やるしかない。なぜだか解らんが、ここにある装置を早いとこ何とかしなければと思う。
姐御も言っていた、早くしなければ取り返しが付かなくなると。
今回の異変、やはりあの大規模転移装置が鍵となっているかもしれん。
「うふふふふ、今度は貴方方が私のお相手をしてくれるのかしら?」
この余裕の表情、只者じゃない。あの姐御が倒されたんだ、こっちは慎重に対処しなければこっちがやられる。
装置をはさんで、黒ローブの女性との戦いが始まった。
勝てるとは思えない、何か手は無いものだろうか。
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