第84話 女戦士フィラ ②
フィラの為に、クラッチ駐屯地に部屋を用意して貰えるのかなど、住むことが出来るかどうかを聞きに、基地へと向かう事になった。
武器屋「ハンマーズ」を後にして、一旦基地の方へ向け、移動を開始した。
その途中、フィラは何だか嬉しそうに背中の武器を触っては「ウフフ」と笑みをこぼしていた。
やっぱり女戦士アマゾネスとして、しっかり扱って貰える事に喜びを露わにしている、と言った様子だ。
「フィラ、武器も手に入れた事だし、俺の背中はフィラに守って貰う事になった訳だけど、あまり気負わずにいてくれればいいからね。」
「何を言われるのですかご主人様、ご主人様のお背中はこのフィラが必ずお守り致します。どうか私をお使い下さい。」
うーむ、フィラはこう言うが、フィラだって俺の大切な仲間なんだよな。
あまり無理はさせたく無い。折角見た目も美しい女性なんだから。
もっとこう、大切にしたいんだよね。上手く説明出来ないけどさ。
もしかして、俺って不器用なのかな? それとも只単に女性と接点の無い人生を送って来たので、女性の扱いが解らんだけなのかも。
まいったな~。年齢イコール彼女いない歴の自分にとって、フィラはあまりにも眩しい存在だ。
上手い事付き合っていかなくてはな。
(俺がご主人様なんだからしっかりしなくては。)
「如何されましたか? ご主人様?」
「いや、何でもない。それよりももう直ぐクラッチ駐屯地に到着するぞ、俺の職場だ。ここにフィラが住む事が出来るか聞いてみようと思う。」
「はい。」
「それで、もし駄目なら冒険者ギルドへ行って登録、って流れになると思う、いいかい、フィラ?」
「はい、ご主人様。」
よし、早速基地の中へ入ろう。
基地の中へ入って、しばらく歩いて建物のある方へ向かっていると、何やら人だかりが出来ていた。
「ご主人様、あれは一体何でしょうか?」
見ると、リップとニールが何やらやっていた。そこには一人の若い女性の姿もあった。
「ああ、あれか、あれはね、恋人がいるのにも関わらず、若い女の奴隷を買ってしまった男が正座させられている、という構図だよ。あまり深く関わらない方がいいんだよ、ああいうのはね。」
「はい、しかし、あの方は先程の奴隷商会でご主人様と行動を共にされておられた方ではないのですか?」
「ああ、ニールと言う男で、俺の職場の同僚だ。同じ小隊員だよ。関わらない方がいいよ。」
「そ、そうでしたか。解りました。ご主人様がそう仰られるならば。」
ニールはこちらに気付いて、「助け舟を出せ」みたいな事を訴える目線を送って来た。
俺は「知らんよ、自分で何とかしろよ」と、いう様な事を言わせる目線をニールに送った。
ニールは「この薄情者」と言う様な目線を送って来たが、リップに「何やってんの! 人の話をちゃんと聞いてるの?」と怒鳴られていた。
フッ、さらばだニール、また会おう。
「さあ、フィラ、俺達は俺達の目的を果たしに基地内へ移動をしよう。あれは放っておいてもきっと大丈夫だと思うよ。ああいうのはあまり関わらない方がいいんだよ。」
「そ、そうですか。解りましたご主人様。」
うむうむ、これでいいんだ、もし関わったらきっとこちらも碌な目に遭わないだろうし、いいんだよ。これで。
ニール達の後ろを素通りして、基地の建物の中へと向かう。
リップは一度こちらを向き、「ジャズ、貴方もなの?」と聞こえてきたが、「ああ」と一言だけ返事をして、そのままスタスタと通り過ぎる。
フィラの手を引いて、急ぎ足でこの場を離れる。
危ない危ない、危うくこっちまでとばっちりを受けるとこだった。
クラッチ駐屯地の基地内にある大きな建物へと入った。人事部があるのはここだ。
人事部で話をしようと思い、人に声を掛ける。
「すみません、少しお話がしたいのですが、」
「はい、何ですか? ジャズ伍長。」
対応してくれたのはキエラ中尉だ。この人なら安心して話が出来るな。よーし、早速聞いてみよう。
「実は、………………という様な事で、この奴隷を購入し、自分の戦闘奴隷としてこの基地に住まわせたいと考えています。どうでしょうか?」
キエラ中尉は「うーん」と唸っていたが、その後すぐ、答えてくれた。
「ジャズ伍長、まず、君が奴隷を購入するのは自由だ。だが、この基地は一応国の税金で賄われている。君の一存でどうこう出来る訳でもないんだよ。悪いとは思うが、そのフィラ君をこの基地に住まわせる事は叶わないだろうね。」
「そうですか、やはり自分の我が儘でしたね、お話を聞いて下さり有難うございます。キエラ中尉。」
「ジャズ君、奴隷を手に入れたのならば、その子の面倒を見なくてはならない。そっちの方は大丈夫なのかい?」
「はい、フィラには冒険者をやらせようと考えております。それと、自分の任務の時、フィラを同行させる事は可能でしょうか?」
「ああ、それは問題ない。所謂「善意の協力者」という形での任務参加ならば可能だよ。」
「そうですか、それが聞けただけでも良かったです。」
やはりキエラ中尉に聞いてみるもんだな、よーし、これでフィラが任務に同行する事も出来ると解った。
後はフィラの生活を何とかしなければならん。取り敢えず今はこの場を後にする。
「お話を聞いて下さり、どうも有難うございました。キエラ中尉、それでは自分達はこれで失礼致します。」
会釈をして、人事部を後にする。フィラも一緒に会釈をしていた。
うむ、礼儀作法はしっかりしているな、フィラは金貨5枚では勿体ない位の良く出来た戦闘奴隷だ。
………そういやあ、前の主人は貴族と言っていたな、だからなのか、礼儀作法がしっかりしているのは。言葉使いも丁寧だし、いいな、フィラは。
さて、お次は冒険者ギルドへ行って、冒険者登録をしにいかなくては、そう思って基地の外へ出た所で、休暇中のサキ少尉に出会った。
「サキ隊長、こんにちは。」
「ああ、ジャズ伍長か、ん? そこの後ろに控えている女性は誰だ?」
ここでフィラが前に出て、自己紹介をした。
「初めまして、私はフィラと申します、ジャズ様の戦闘奴隷としてこの場に控えております。」
「………奴隷? ………はあ~、ジャズ伍長、貴様が何を買おうが私の知った事ではないが、よりにもよって奴隷を買ったのか? それで、貴様はちゃんと面倒を見れるのか?」
「はい、実はその事で人事部に相談をしに来たのですが、やはり駄目でした。まあ、フィラには冒険者をやらせますので、こちらの事はお構いなく、それと、フィラですが、任務に同行させたいと考えております。」
サキ隊長は少し考えて、そして直ぐに返答をした。
「まあ、「善意の協力者」という形でならば可能だが、いいのか? フィラというのはジャズ伍長の奴隷なので、私の命令は聞かないと思う、もし私からの命令があった場合はその都度、貴様がフィラに命じる事になるのだ。いいな、ジャズ伍長。言ってみればフィラは貴様の部下扱いなのだ。しっかりと面倒を見ろよ、いいな。」
「はい。」
ほ、良かった、これでサキ小隊の任務にフィラを同行させる事が出来そうだ。
サキ隊長は話の解る人だったか、男嫌いだが、決して厳し過ぎるという訳でもない人なんだよな。サキ少尉って。
「ところで、ジャズ伍長、一つ聞きたい事があるのだが。」
今度はサキ隊長の方から話を振られた。一体何だろうか?
「自分にお答え出来る事ならば。」
「うむ、実はな、「銀影」さま………、コホン、銀影と言う男を捜しているのだが、伍長は何か知らないか?」
え? 銀影って、あの時の俺だよな。何故捜しているんだろう? 何か嫌な予感がするな。
ここは一つ白を切るか。何か面倒事は御免だからな。
「………いえ、銀影と言うのはちょっと知りません、お役に立てず申し訳ありません、隊長。」
「いや、いいんだ。そうか、知らんか、そっちのフィラさんは聞いた事は無いか?」
「はい、私も銀影という者は存じません。申し訳ございません。サキ隊長様。」
「そうか、いや、いい。自分で捜すしかないか。二人共、もし銀影という殿方を見かけたら、私に報告してくれ、頼むぞ。」
「「 はい。 」」
そう言って、サキ隊長はこの場を後にした。一体何だろう?
銀影を捜しているってのはよく解らんな。まあ、触らぬ神に祟りなしって言うし、ここは一つ、黙っていよう。
よっしゃ、お次は冒険者ギルドへ行って、フィラを登録だ。
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