第83話 女戦士フィラ ①


 装備を整える為、フィラの為に武器屋へと向かう事になった。


準備しているとフィラが革のブーツや革のグローブを身に着ける時、何やら嬉しそうにしていた。


 今までフィラは両足と片腕が無かったので、生え変わった新たな足と腕の感触を確かめる様に、ゆっくりとブーツを履こうとしていた。


「フィラ、やっぱりブーツか何かの履物を履くのはどうだい?」


「はい、とても嬉しく思います。履物を履くというのがこんなにも新鮮で嬉しいものだったのですね。自分の足の感触を確かめる事がこんなにも嬉しいなんて、ああ、ご主人様。それに女神様、感謝致します。」


「俺は何もしてないよ、魔法のスクロールを使っただけだし、それにフィラは俺の奴隷でもある訳なんだから、遠慮しなくてもいいんだよ。俺だってフィラのご主人様として、やっていけるかどうかは解っていない訳なんだし。」


 ちょっといい訳がましいが、こう言うとフィラは「ご謙遜を」と言って、俺が只者ではない風みたいに扱ってくれる。


 まあそれはいいんだが、いつかボロを出さないかとちょっと心配だ。


 フィラの前では、俺は恰好を付けたいと思っている。


「準備が出来ました、ご主人様。」


「よし、じゃあ行こうか。」


宿屋を後にして、町に繰り出す。


 モー商会で武器を買うのもいいが、折角なら職人がやっている店の方が目利きがいいと思うので、そのまま職人街の方へ足を運ぶ。


 いい武器が見つかるといいな、まあ職人の目利きなら問題ないと思うが、さて、フィラに合う武器といったらやっぱり戦斧かな? 


 ステータスの熟練度にも斧の数値は215だったし、それと、後で何かスキルを習得させるのもいいかもしれないな。


 職人街へとやって来た。そこかしこから武器や防具の手入れ用の油の匂いが漂って来る。


ハンマーで鉄を叩く音も聞こえてくる。職人の店が建ち並ぶいかにもな雰囲気だ。


「どこがいいかな? あ! あの店なんか良さそうだな。………いや、値段がちょっと………。」


懐事情があまり芳しくない、一応銀貨100枚ほど使えるが、全部使い切るつもりは無い。


少しは残しておかないとならない。斧って幾ら位するのかな?


店を物色していると、フィラが恐る恐るといった様子で言う。


「あの、ご主人様、私はどの様な安物でも構いません、戦士として扱って頂けるだけで十分なので。」


うーむ、フィラに気を使わせているみたいだな、いかん、いかんぞ。


ここはご主人様として、気前よくフィラに武器を買ってあげなければ。


 流石に武器無しではいくら戦士でも心許無いだろうし、ええーい、ここは一つ、銀貨30枚位使うつもりでちゃんとした店を選ぼう。


キョロキョロとしていると、一つの店が目に留まった。


店先でいかにも無骨そうなドワーフのオヤジさんが両腕を組んで仁王立ちしていた。


 ドワーフか、ドワーフと言えばやっぱり武器防具の鍛冶職人っていう勝手なイメージがあるのだが、さてと、この店にしようかな。


「フィラ、あの店にしよう。ドワーフがやってる店なら間違いないと思うし。」


「はい、ご主人様。しかし、あまり高い武器でなくても構いませんので、どうかご主人様のお財布とご相談下さい。」


「ああ、大丈夫だ。フィラに合う武器を買うぞ。」


 こうして、ドワーフが店先に立っている店、「ハンマーズ」という名前の看板が掲げられている店へとやって来た。


ハンマーズか、らしいじゃないか。いかにも鍛冶屋って感じだ。


 店のオヤジさんがこちらを見て、何やら上から下まで見て、人を値踏みしていそうな感じではあった。


そして一言、「客か?」と尋ねられた。「そうです」と答える。


「予算は?」


「そうですねえ、大体銀貨20枚位で。」


「小僧、武具ってのは命を預ける大事な道具だ。金をケチるな。」


「は、はい、それでは銀貨30枚で。」


「ふむ、それで、誰の武具が欲しいんだ?」


「この娘です。このフィラの武器が欲しいです。」


そう言うと、オヤジさんはフィラを鋭い眼光で睨み、上から下まで一瞥し、そして頷いた。


「ほーう、アマゾネスか、クラスはおそらくウォーリアだな。武器は剣よりもハンマーや斧の方が扱えるだろう。ちょっと待ってろ、今持ってくる。」


そう言って、ドワーフのオヤジさんは店の奥へと入って行った。


 それにしても、流石だ、フィラの事を見ただけで理解してしまうなんて、ドワーフのオヤジさんの目利きは本物だ。ここは任せても大丈夫そうだな。


暫くして、オヤジさんが二つの武器を持って戻って来た。


「待たせたな、こいつだ。お嬢ちゃんにはこの「バトルハンマー」か「バトルアックス」がいいだろう。どちらも両手持ちの武器だ。値段は銀貨30枚。買うか?」


ふーむ、どちらもいい感じの武器だ、新品で鉄の武器って感じがまたいい。


ハンマーの方はフィラには合わないと思うが、一応試してみるか。


「フィラ、まずはバトルハンマーを持ってみてくれ。」


「解りました、ご主人様。」


フィラはオヤジさんからハンマーを受け取る、そして握りを確かめて、軽く動かす。


「どうだ? フィラ。」


「はい、悪くは無いのですが、私には少し重く感じます。」


ふーむ、やはりフィラには斧が合うという事か。


「それじゃあ、今度はそっちのバトルアックスを持ってみてくれ。」


「はい、ご主人様。」


ハンマーをオヤジさんに返して、今度はバトルアックスを受け取る。


そしてフィラは柄の部分に手を添えて、握りを確かめ、軽く振り回す。


「どうだ? フィラ。」


「はい! しっくりと手に馴染みます。悪く無いです。これならばご主人様のお力になれると思います。」


 これを見ていたドワーフのオヤジさんは、うんうんと頷き、「やはりアマゾネスには戦斧だな」と言っていた。


「オヤジさん、このバトルアックスを下さい。これにします。」


「うむ、銀貨30枚だ。」


袋から銀貨を取り出し、オヤジさんにお金の代金を支払う。


「よし、商談成立だ。いつでもいいから手入れをしにこいよ、いいな。」


「はい、ありがとうございます。店主さん。」


フィラはドワーフのオヤジさんにお礼を言い、そしてこちらに向き直り、ペコリと頭を下げた。


「ご主人様、どうもありがとうございます、私の様な奴隷の為に、この様な良い武器をお与え下さり、誠に感謝致します。これで私は戦士としてご主人様のお役に立てます。その為にも、精一杯努めます。」


「うん、いい武器が見つかって良かったな、フィラ。」


「はい!」


 ついでに、フィラの背中にバトルアックスを背負う為のウェポンホルダーをサービスで付けて貰った。有難い、これでフィラの武器は決まったな。


ここで、ドワーフのオヤジさんがこんな事を聞いて来た。


「いいか小僧、武具ってのは鉄と刃だ。解るな?」


「はい?」


「鉄が全てなんだよ、解るな、小僧。」


「は、はあ、解る様な、解らない様な。」


「見てみろ、あの嬢ちゃんの持つ武器を、輝いておる。武器が人を選びよったんだ。」


「そ、そんなもんですかね?」


「ああ、そうだ。ところで、お前さんの武具は見繕わんでもいいのか?」


「あ、はい。自分はもう武器がありますので、それに予算的な問題もありまして。」


「そうか、何時でもいい、何か用向きがあれば来い。小僧には剣が合うと思うが、いや、もう少し小型の刃ってところだな。うむ。」


このドワーフ、凄いな、流石オヤジさんの目利きだ。


 確かに俺は剣も扱えるが、正直しっくりくる武器は忍刀ってところだからな、まあ、忍者なだけに。


「オヤジさん、ありがとうございました。お陰でいい武器が買えました。どうもお世話になりました。」


「うむ、いつでもいいからまた来い。手入れをしにな。」


「はい、それでは。」


こうして、フィラの専用武器を手に入れた訳だが、銀貨30枚か。


中々どうして、これからの為に節約していかなければならんだろうな。


「ご主人様、ありがとうございます。」


まあ、フィラが喜んでいるのでいいか。これでフィラもいっぱしの戦士だ。


俺の背中を預ける為に、これからフィラとも信頼関係を築いていかなくては。


さて、お次は。








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