第81話 奴隷市場 ③


 「店主さん、俺はこの戦闘奴隷のアマゾネスを買います。」


思い切って奴隷を買う事にした。金貨5枚だ、決して安い買い物ではない。


だが、ここらで一丁自分にとっての「本当の戦友」というものを欲しいと思った。


 奴隷という事でいささか見当違いかもしれんが、それでもいつかは奴隷が欲しいと思っていた事は確かだ。


「そうですか、買って頂けますか、いや~、これで私も肩の荷が一つ下りますよ、はい。」


俺がネモを買うと言った時、ネモの表情は幾分か和らいだ様に感じた。


 やはりこのままここで朽ちるより、奴隷としてもう一度役に立ちたいと思ったのかもしれない。


ここで、奴隷商の店主から、必要事項を言われた。


「お客様、奴隷を買われるのは初めてでございますか?」


「はい、初めて買います。」


「では、これだけは守って頂きたい事があります、よいですかな?」


 ふーむ、やはり奴隷を購入するとなると、色々と心得みたいなものがあったりするという事か。まあ、そうだよな。


「まず、奴隷にも生きる権利はあります。あまりぞんざいな扱いは慎んで頂きます。それと、主人になったからには、奴隷に衣食住の用意を出来るだけお願い致します。奴隷は主人の所有物という事になりますので、キチンと面倒を見て頂きたく思います。」


「なるほど、解りました。」


「先程、出来るだけと言いましたが、これは奴隷に主人の事を認めさせる事に他なりません。奴隷にも意思の自由はあるので、主人に相応しい奴隷でいようと努力します。なので、出来るだけ奴隷に優しく接して頂きたいのです。これは私共奴隷を商品として扱う者としての願いです。」


「はい、解ります。奴隷も生きているという事、しっかりと理解しています。」


「以上の事を、どうか、宜しくお願い致します。」


「はい、出来るだけの事はします。」


店主はそう言い終わると、何処かの部屋へ向かい、その場を離れた。


暫く待っていると、何やら首輪の様な物と指輪を持って来た。


「これが隷属の首輪と、その首輪に対応した指輪になります。指輪は主人の指に嵌めて頂き、首輪は奴隷に嵌めるのです。」


「なるほど、主従関係のマジックアイテムという訳ですか。」


「それでは、代金を頂きたく思いますが、金貨5枚になります。」


アイテムボックスから袋を取り出し、お金を金貨5枚分のお金を出し、店主に渡す。


「はい、確かに、お買い上げ、誠にありがとうございます。では、この首輪をネモに嵌めて頂きます。それで奴隷契約は完了します。」


 隷属の首輪を受け取り、それをネモの首に嵌める、そして、指輪の方は自分の指に嵌めた。


「これで、このネモはもうお客様の所有者になりました。どうか、大切になさって下さい。」


「はい。」


うーむ、これで俺も奴隷持ちになってしまったか。面倒をしっかりと見ないとな。


そして、やはり魔法のスクロールの「エクストラヒールの巻物」を試してみよう。


上手くいけば、欠損した腕や足が復元されるかもしれないからな。


「今、台車をご用意致します。」


「その必要はありません、自分がネモを抱き寄せて連れて行きます。」


「なんと、そうですか、解りました。」


その後、店主はネモへ向け、言葉を掛けた。


「ネモ、しっかりとご主人様に仕えるようになさい。いいですね。」


「はい、今までお世話になりました。ご主人様にご迷惑にならない様に務めます。」


店主とネモの言葉を聞き、俺はネモを抱き上げ、お姫様抱っこをして店を後にする。


「それでは店主さん、自分はこれで。」


「はい、お客様にとって、良き主従生活でありますように。」


こうして、俺は奴隷を買った。


 人を買うという行為に少々心がチクチクとしたものがあるが、俺がこの奴隷の主になったんだと、覚悟を持ってこれから接していこうと思った。


 店を出ると、丁度ニールに出くわした、ニールはこちらを見て、顔を二ヤリとさせ、声を掛けてきた。


「なるほどなるほど、ジャズはそういうのを買ったのか。しかし物好きだなお前も、なにもそんな奴隷じゃなくてもいいのに。」


「おいニール、そういう事を言うもんじゃないぜ、このアマゾネスは立派に戦って負傷しただけなんだからな。」


「はいよ、解ったよ。これからどうする?」


「すまんニール、ここからは別行動だ。俺は俺でやる事が出来た、ここで別れよう。」


「へっへっへ、早速試したいって訳なんだな、いいぜ。ここで別れよう。さーて、俺はどの奴隷にしようかな。」


ニールとはこの場で別れた。何か勘違いをしている節がありそうだったが、まあいいや。


まずは宿屋へ行こう、そこで魔法のスクロールを試してみよう。


なるべく人に見られたくないからな。そう思った時、ネモが俺にこう言った。


「ご主人様、どうか私に名前をお付けください。ネモという名は前の主人に付けて頂いた名前ですので、あまり使いたくないのです。今のご主人様は貴方様なので、どうか。」


「そうか、解った。本当の名前は何て言うんだ?」


「奴隷になった時に、本当の名は捨てました。どうか、お願い致します。ご主人様。」


 ふーむ、ネモは前の主人が付けた名前か、ネモ、ネモか、………そういやあネモフィラなんて名前の花があったよな。よーし、それじゃあ。


「よし、決まった。お前の名前は今からフィラだ。フィラと言う事にする。どうかな?」


「フィラ、ですか。はい、とても良い名前だと思います。ありがとうございます、ご主人様。今から私はフィラです。」


よし、名前も決まった事だし、早速宿屋へ行こう。


 フィラを抱いて町中を歩いていると、町の人達がこちらを見て、何であんな奴隷を買ったんだ? みたいな表情をしていた。


まあ、別に構わないんだが、ちょっといい気分ではないな。まあしょうがないか。


 宿屋へと到着した。宿の主人にお金を払い、一人部屋を借りる。


一泊だけだ。部屋の中へと入り、フィラをベッドへ降ろす。


「ご主人様、私は床で過ごしますので、どうかベッドはご主人様がお使い下さい。」


「いや、その必要は無い。ちょっと試したい事があってな。」


「………そうですか、早速私を「お使い」になられますか?」


「いや、そうじゃない。そうだな、まずは服を脱いでくれないか。」


「………はい、解りました。」


 フィラは「なんだ、やっぱり使うのか」という様な表情だったが、器用に服を脱ぎはじめた。


 片腕だけで服を脱ぐのも大変そうではあったが、ゆっくりと時間をかけて服を脱ぎ終わる。


フィラは裸になり、ベッドに横になり目を瞑った。


「どうぞ、ご主人様。」


「うん、ちょっと待っててくれ、今用意するから。」


 さてと、まずはメニューコマンドを操作して、ショップコマンドを表示させる。


アイテム一覧をスクロールさせ、目的の品を探す、お! あったあった。


 魔法のスクロール「エクストラヒールの巻物」だ。ショップポイント200ポイントで購入できるみたいだ、よし、早速購入。


 よしよし、アイテムボックスに「エクストラヒールの巻物」が追加されているぞ、これを取り出す。


「フィラ、ちょっと待っててくれ、今試したい事があるから、何か体に変化があるかもしれないから、一応服を脱いでもらった訳なんだが、別にフィラに悪い事をするつもりは無いから。」


「はい、ご主人様のしたい様になさって下さい。私はこうして待機しております。」


フィラは大人しく横になっている。よし、早速「エクストラヒールの巻物」を試すか。


巻物の蝋封を剥がし、広げる。文字が掛かれている方を、フィラに向け、準備する。


「エクストラヒールの巻物を使用する。エクストラヒール、発動。」


 次の瞬間、巻物が一瞬で燃え尽き、目の前に光輝く優しい光の球が現れ、フィラへ向かってゆっくりと近づき、そしてフィラの体に光の球が触れる。


 と、同時に、フィラの体が淡い光に包まれ、ゆっくりとだが、確実にフィラの欠損した腕や足が再生し始めた。


(よし、上手くいった。)


「あ、ああ、あああああああああああああ!?」


「フィラ! 堪えて、耐えろ。今エクストラヒールの魔法を使ったから、辛いかもしれんが耐えてくれ。」


「あああ、は、はい! ああああああああああ!?」


 フィラの体はみるみるうちに再生していき、淡い光が部屋全体を照らして、エクストラヒールの威力の凄さを物語っていた。


(よし! フィラの腕や足が再生していく。上手くいくもんだな。)


 やはり最高位の回復魔法のエクストラヒールだけの事はある。フィラの欠損したところが復元されていく。


そして………。
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る