第42話 シスターサナリー救出任務 ①
今日のブラボー中隊の任務は、王都方面にある草原地帯で演習だ。
要するにモンスター退治だな。草原に居る沢山のモンスターを間引く必要があるので、演習と称して実戦訓練だ。
ブラボー中隊の面々が、一堂に会してグラウンドに集結している。
今まで知らなかったけど、ブラボー中隊は小隊数6,中隊長一人、予備隊員の計二十四人で構成されている。
小隊は三人で一つの小隊として機能するので、6小隊もあるという事は、中々幅が広い任務を任される事があるそうな。
中隊長の一人が前に出て、皆の注目を集め、今回の演習目的を説明しだした。
のだが………。
「おほんっ、えぇ~、今回の演習任務ですが、皆さん怪我などされない様に、十分に気を付けて任務に従事して下さい。それでは班分けをしたいと思います。まず、」
中隊長が話を続けようとしたその時、ブラボー中隊の中から誰かが大声を上げて、上空を指さした。
「な、何だ? あれは!?」
皆が一斉に空を見上げると、そこには一体のペガサスが上空を旋回していた。
よく見ると、誰かがペガサスの背中に跨っている。武装もしているみたいだ。
おそらくあれはペガサスナイトだろう。白いペガサスに跨った女性騎士だった。
そのペガサスナイトはゆっくりとした旋回速度で下降してきて、クラッチ駐屯地のグラウンドに降り立った。
皆が一様に様子を見ていると、基地からリカルド軍曹が出て来て、降り立ったペガサスナイトの方へ歩いて向かっていた。
一体何事だろうと、ブラボー中隊の面々はその様子を見ていて、中隊長の話も一時中断してしまった。
リカルド軍曹とペガサスナイトの女性騎士がお互いに近づき、何やら会話をしているみたいだ。
少しして、ペガサスナイトの女性騎士がクラッチの基地の建物の方へ歩き出し、リカルド軍曹がこちらへとやって来る。
リカルド軍曹が、ブラボー中隊の中隊長に向けて何か説明するみたいだ。
一頻り軍曹と中隊長が話をした後、俺達も話を聞く事になりそうだ。
ブラボー中隊の面々はその場で座り、中隊長が皆に向け、説明をする事になった様だ。
「皆さん、今回の演習は予定通り行います。ただ、サキ小隊とナナ小隊の両小隊はこの場で待機、別命あるまで待機して頂きます。いいですね、サキ少尉、ナナ少尉。」
「「 は! 了解であります。 」」
ふーむ、俺達の小隊も待機か、さっき降り立ったペガサスナイトと何か関係があるのかな?
兎に角、俺達サキ小隊とナナ小隊の二個小隊は、その場で待機している。
それ以外のブラボー中隊の面々は、予定通り草原地帯へ向けて移動を開始した。
俺達は取り残されたみたいになってしまった。
ニールとリップが話しかけてくる。
「なあジャズ、一体何だろうな?」
「私達だけってのがちょっと引っ掛かるのよね、軍曹とあのペガサスナイトとの間で何を話していたのかしら?」
「さあなあ、取り敢えず俺達はこの場で待機だ。詳しい話は偉い人が聞いた後に、こっちに話が回って来るんじゃないのか?」
サキ少尉もナナ少尉も、基地内の建物の方へ行ってしまった。
この場のグラウンドに残っているのは、俺達四人とペガサスが一頭。
ペガサスは大人しくしており、時折ブルル、と
しばらく待っていると、サキ少尉とナナ少尉がこちらに戻って来た。
そして開口一番、「お前達、ブリーフィングルームに集合」とだけ言って、とっとと行ってしまった。
しょうがない、ブリーフィングルームに行きますか。
「ニール、リップ、メリー伍長、俺達も行きましょうか。」
「そうだな、何があるのか説明が欲しいところだしな。」
「まあ、演習をしなくてもいいって事だけは確かよね。」
「さあさあ皆さん、行くですよ。」
こうして俺達は、基地内の建物の中にあるブリーフィングルームに集合した。
席に着き、黒板の前にサキ少尉とナナ少尉、それと先程のペガサスナイトの女性騎士が待っていた。
早速説明して貰えるらしい。
「まず初めに自己紹介を致します。私の名前はマーテル、女神教会に籍を置くシャイニングナイツ。「戦乙女隊」の隊員メンバーです。今回の私の授かった任務は要人護衛でした、だけど……。」
ここからはサキ少尉が説明を引き継いだ。
「いいかお前達、しっかり聞いとけよ。今回、私達サキ小隊とナナ小隊にコジマ指令より任務が下った。その前に少し説明する。この国の第二王女、サナリー様が王位継承権を破棄されて、修道院に入って修行されているのは知っているか?」
この問いに、ニールが即座に答えた。
「いえ、初耳です。なあ皆。」
「ええ、そうね、初めて聞いたわ。」
「私も初耳です。」
「自分も初耳です、隊長、それが何か?」
俺達の返事を聞き、サキ少尉は「まあ、そうだろうな」と漏らし、説明を続けた。
「今回、そのサナリー様が修行を終えて、王都にある女神神殿に務める事になったのだ。相手が王族だけあって、修道院から王都までの護衛にはシャイニングナイツが選ばれた訳なのだが、一つ問題が発生した。」
ここでまた、ペガサスナイトのマーテルに話が及ぶ。マーテルは俯きながら説明しだした。
「私がその護衛をする事になりましたが、修道院の周りに不審な人達が取り囲んでいたのです。数は10人程、武装していました、おそらく山賊かと思われます。流石に私一人では多勢に無勢。引き返して戦力を整えようと考えたのです。」
ここでニールが挙手をして質問をする。
「あのう、質問があります。要人の護衛でしたら、もっと多くの人を向かわせるべきではありませんか?」
ニールの質問にナナ少尉が答えた。
「いいですか、よくお聞きなさい。一国の王女を護衛するというのは簡単ではないのです。もし多人数で護衛していたら、賊や政敵などから、「ここに重要人物がいるぞ」と教えている様なものですわ。なので、要人の護衛には少数精鋭が望ましいのですわ。」
「な、なるほど、そういう訳があったのですか。解りました。」
更にマーテルが説明を続ける。
「それで、修道院の周りに山賊達が見張っているので、こちらが迂闊に近づけないのです。」
そこで俺が質問した。
「その山賊達は、王女サナリー様の存在を知っているのですか?」
「いえ、貴方方が知り得ない情報という事は、その山賊も情報を知らないという事になるかと思います。」
ふーむ、要人護衛というより、要人救出任務になる可能性が出てきたな。
これは厄介な事になってきたぞ。
ここでまた、サキ少尉が説明を続ける。
「兎に角だ、我々各小隊は速やかに修道院まで移動し、不審者の情報収集と、必要ならば排除。修道院の周りの安全を確保したのち、サナリー様をお迎えし、取り敢えずはこの町、クラッチまでの護衛任務となる。修道院の場所はここから西へ4時間といった距離だ。現場は森の中になる、注意して掛かれ。いいな!」
「「「「 了解!! 」」」」
「尚、本作戦にはペガサスナイトのマーテル殿もご同行される。シャイニングナイツだからって頼りにせず、自分の出来る事をやっていけ。以上、準備に入れ。」
ふーむ、修道院まで行って、周辺の安全確保、おそらく山賊討伐、その後要人救出し、そのまま要人護衛、この町まで帰還する。
ざっとこんな流れになるか。簡単な様で難しい任務になりそうだな。
俺達はまず、装備課へ行って、おやっさんに武器と防具を受け取る。
今回の任務は、相手がモンスターではないという事ではあるが。
気を引き締めなければ、足元を掬われるかもしれん。慎重に行動しよう。
武具を装備し、備品課へ行って携帯食料と回復薬を申請する。
備品課のマドンナ、クリスちゃんはいつ見ても癒される。
物資を受け取り、アイテムボックスに入れて準備は整った。
サキ小隊とナナ小隊のメンバーがそれぞれ準備し終えて、グラウンドに集結した。
マーテルさんはペガサスのところで待機していて、何時でも出られるようだった。
「皆さん、本来は私の任務なのに、手伝って頂いて恐縮です。無理だけはしないで下さい。」
マーテルさんが優しい言葉を掛けてくれた。
この女性騎士はしなやかな物腰で、どこか安心感があるんだよな。
美人ではあるとは思うが。
サキ小尉が出発を宣言する。
「よーし! いいか皆! 気合入れろよ! わかってるな!」
「「「「 は! 何時でも行けます!! 」」」」
「よーーし! しゅぱああつ!!」
こうして、急遽任務が舞い込んできたが、俺達はそれに対応した。
目指すは修道院がある西の森。そこまで約4時間の距離だ。警戒しながら進んで行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます