類は友を呼ぶ。-宮田と林編-

めがねのひと

番外 睡眠と恋人

「頭痛が痛い…」

「言葉重複してるけど大丈夫ですか?」


とある休日。つい数時間前に脱稿したと言ってベッドに沈んでいったはずの宮さんが見るからに体調が悪そうな顔をして居間に顔を出した。


「具合悪いなら寝てた方がいいですよ?」

「寝ようとしてたんだけどな…なんか眠れなくてな」


大きな欠伸をして頭を抱える。ここ数日原稿に追われていたことは宮さんから聞いていた。普段ならベッドに入ったら半日近くは外の真下で工事していたとしても起きることがないのに。そこまで考えて最近ゴミ箱に見慣れないエナジードリンクの空缶が捨てられていたことを思い出す。


「もしかしてエナジードリンク飲んだりしました?」


飲み慣れているならまだしも、そういう飲み物をまず飲むことがないのなら効果が長く持続していてもおかしくない。


「いや飲んでないなぁ」


宮さんの言葉に数秒前まで考えていた理論が崩れ去り、俺自身も漫画みたいにずっこけた。


「いや違うんかい!」

「頭に響くからやめてくれ…」

「あ、ごめん」


予想は外れたが宮さんの頭痛が治ったわけではない。薬を飲んで無理にでも寝るのが一番なんだろうが、生憎今この家には頭痛薬がない。


「俺頭痛薬買ってきましょうか?」


流石に徹夜明けの人間を外に出すわけにはいかないので提案する。しかし返答はない。


「宮さん?」


返答がない代わりにふらふらと歩いてくる宮さんに少しだけ違和感を覚える。まさか熱出てるのか…?そう考えた時だった。


「うわっ!」


いきなり俺の方に宮さんが倒れ込んでくる。何とか気が付いて二人共倒れは免れることが出来た。力なくだらりとしている宮さんの体から熱のようなものは感じない。


「みやさーん?」

「ちょっとこのままにさせて」

「え?」


残っていた僅かな力まで抜けて全体重がのしかかる。支えられなくはないが流石に長時間となると難しいので一旦ソファーに避難。


「…相当疲れてたんだな」


先ほどまで眠れないと言っていた人間とは思えないくらいぐっすりと眠っている。なんだか起こすのも忍びない気がして起こさずにゆっくり頭をソファーに移動させようとしたその時だった。


「え?」


僅かな違和感に気が付いて動きを止める。いつの間にか服の裾を引っ張られていた。少しだけ引っ張ってみるが結構きつく握られているようでしばらくはほどけそうにない。


「まぁ…いっか」


離脱を諦めてソファーの背に身を預ける。視線を下げると平和そうな笑みを携えている寝顔。なんだかこんな日も悪くないなんて、ぼんやりとそう思った。



(暗転)

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