(08)オイルと電気と熱冷気


 最近ガソリンが高い。

 ガソリン税や自動車税で言いたいコトは多々あるが、趣旨が違うのでパス。

 まぁ、ガソリンは地域によって価格差がけっこうある。製油所の場所や流通ルート・運送方法の違いによって格差が付く。

 都市部はともかく、地方は車社会が必然だ。そも、日本経済を支える屋台骨はガソリン自動車会社であり、その関連会社。

 しかし、世界は、政府は、2030年から新規ガソリン自動車販売を取りやめ、2050年にはガソリン自動車そのものの廃止、カーボン・ゼロ社会を目指す、と言う。

 10~30年で強制的な社会変革を強要し、日本経済の屋台骨を叩き割ろうとしている。


 こんな急激な確変を求められてるのに、日本人のん気だよね。


 輸入品である必要エネルギーのガソリンに振り回されるのは昔からだが、50年前から50年後には枯渇すると言われている石油に依存しなければならない日本は、エネルギー関連ではほぼ進歩がない。

「ほぼ進歩なし」での貴重な進歩は、油藻の研究で日本がリードしていること。

 石油の正体は太古の植物が液状化したもの、と言われてはいるが、実際は不明瞭で曖昧だ。諸説はあるがメンドイから省く。

 ともかく、事実としてプランクトンから石油に近い成分を作るモノを「油藻」と呼び、有名処だと株式会社IHIの榎本藻と、株式会社ユーグレナのユーグレナ(ミドリ藻)。油としての生産量自体は榎本藻に軍配が上がり、その後の活用という意味で幅広く魅力的なのがユーグレナ。

 植物プランクトンである榎本藻は正々堂々とカーボン・ニュートラルを謳える。

 植物性ではあるが半分は動物性プランクトンであるユーグレナは、しかし栽培時に酸性の高い(つまり二酸化炭素が多く溶け込んでいる)水であっても培養できるので、二酸化炭素を大量に消費して、かつ酸性度の高い水であるがゆえに雑菌が繁殖しにくい。

 榎本藻にしろユーグレナにしろ期待値の高いニュースが多いので、興味のある方は調べて下さい。


 んで、個人的に気になるのは「油藻」の栽培プールが屋外の一層構造であること。

 実験段階ならいいが、将来的な大量生産はどう考えているのかなぁ

 欲しいタイプは多層構造で、天候に左右されない屋内型。照明に頼るが、負荷(ストレス)をかけた方が油の採取量が増えるそうなので、水を流動させることによる水流発電で照明の電気代を自家発電させる。

 野望としては、滑走路や空港施設地下で油藻大量生産+発電を行い、燃料代や使用料が半分以下、なんてハブ空港が欲しい。

 野望という妄想。

 妄想楽しいよね。


 ええと……置いといて。


 油藻でカーボン・ニュートラルを目指すとして、それだけで社会を回すのは難しそう。

 場所は海上都市。場所は限られる。

 周囲は海なのだから、やっぱ利用したいのは波力発電、の、(01)で喚いていたスコットランドPelamis Wave Power社の「Pelamis」が好きです。

 波力発電は他にもイロイロあるのですが、躯体がデカいか小規模すぎて、効率が悪い印象。今後の研究開発を期待したい分野です。


 あと「海」そのものから燃料を取り出そう、という、海水に豊富に含まれているマグネシウムを燃焼させて火力発電の燃料に、というのを東大かどっかでやっていた、かな。

 マグネシウムの燃焼は二酸化炭素を出さず、燃焼後に変化している酸化マグネシウムも太陽光を集めた高熱でマグネシウムと酸素へ分離させ、再び燃料として再活用する無限エネルギー、という触れ込みだった、ような。

 商業ベースに乗せられるほどの効率かは不明。


 海からマグネシウムを取り出すのは難しい、って聞いてましたが、清水建設「環境アイランドGreenFloat」でも、構造体の多くは「海からマグネシウムを採取」というスタンスなので、なんぞ研究成果があるのかもしれない。

 マグネシウムと水が反応すると溶けてしまうが、酸化にも溶解にも強いKUMADAIマグネシウム合金(最近は航空マグネシウム合金というらしい?)があるし。

 それにKUMADAIマグネシウム合金は海水と反応させると発電する。

 細かい原理はしらんが(←無責任)


 再生可能エネルギーは発電が変則的であり、一定の安定した送電が難しい、というのがネックではあるが、セラミックで有名な日本ガイシ株式会社がNAS電池という面白いメガワット級電力貯蔵システムを作った。

「大容量、高エネルギー密度、長寿命を特長とし、鉛蓄電池の約3分の1のコンパクトサイズで、長期にわたって安定した電力供給が可能。電力負荷平準によるピークカット、再生可能エネルギーの安定化に役立ち、節電対策やエネルギーコスト削減、環境負荷低減に貢献します」というのが謳い文句。実際に北海道の風力発電で実装済み。


 他に、地上でも出来る発電方法は。

 人間が活動し生活する以上、どうしてもゴミは発生する。日本の場合は焼却処分で、どんなに分別しても廃棄されるゴミは発生する。

 そのゴミをプラズマ分解して水素を得よう、というのが水プラズマ。

 九州大学 大学院 工学研究院 化学工学部門 渡辺隆行教授が主導の水プラズマ研究。物体を分子レベルまで分解して気体化させる技術で、分子まで分解された物質がどうなるかはワカランが、プラズマ発生に水を用いることで、物質分解時に水素が発生する。

 その水素をどう利用するかは様々だが、とりあえず燃料電池で発電したい。


 少々脱線するが、一口に水素で発電する燃料電池とは言うが、大雑把に分けて4方式ある。詳細は省くが、主に発電効率と反応温度が違う。家庭用のエネファームなどでは発熱が100℃と手軽だが効率は4割り程度。日本のTOTOなど森村グループ主体で開発したのは個体酸化物形燃料電池(SOFC)で、発電効率は7割り、スターターは遅いが、一度起動すれば安定稼働する。反応する発熱が1000℃と高くなるのが難点だが、副次的に考えれば火力発電所で1500℃の熱を燃やしているので、1000℃の熱を蒸気発電として、そして海上都市全体のセントラルヒーティング、植物工場への暖房と考えれば利用価値はある。

 個体酸化物形燃料電池(SOFC)は、森村グループ4社(株式会社ノリタケカンパニーリミテド・TOTO株式会社・日本ガイシ株式会社・日本特殊陶業株式会社)で「森村SOFCテクノロジー株式会社」を立ち上げたそうな。

 また株式会社IHIが水素ではなくアンモニアを使って個体酸化物形燃料電池(SOFC)で発電実験をしているそうだ。

 アンモニアは「二酸化炭素を発生しない燃料」として注目株で、最近でもアンモニア製造を常温常圧で行える研究発表がされたばかり。ただまだ研究段階で、実用効率には届かないらしいが。アンモニアを大量に安定して得ようとすると、高温高圧で、高電力を必要とする方法になる。

 日本で大量電力となると、現状は化石燃料を燃焼させる火力発電がメイン。

 元の木阿弥。


 脱線の上に脱線すると「熱」から「冷気」を作り出せる方法がある。

 地球温暖化の一番の大敵は「冷媒」だそうで、その冷気を電力からではなく熱自体を変換して作れればどうなるか。

 まだ効率は悪いですが「熱音響エンジン」というシステム。熱を音へ変換させ、音の振動をリニア発電(振動を電気へ替える)や冷気に変換する、というもの。

 300℃の熱を-100℃へ替える実績がある。

 熱音響エンジンの強みは、変換に稼働する機械や部品がないこと。熱から音へ変換するのにガソリンエンジンの排気につけるフィルターのような部品だけ。

 色々な大学が研究してますが、有名処は東海大学ですかねぇ


 個人的には、「熱」と「動力」があれば「冷気」を生み出せる「スターリング・エンジン」なんてのも好きです。

 本来は「熱」と「冷気」の温度差で「動力」を生み出すシステムですが、どれか2つがそろえば3つ目が作れる。最近ではスターリング・エンジン方式の冷蔵庫なんてのもあって、いや本当に楽しい時代ですね。


 ……いや、だから変態じゃないってば。




株式会社 IHI

https://www.ihi.co.jp/


株式会社ユーグレナ

https://www.euglena.jp/


Pelamis Wave Power社(波力発電「Pelamis」)

https://www.emec.org.uk/about-us/wave-clients/pelamis-wave-power/


熊本大学 先進マグネシウム国際研究センター

http://www.mrc.kumamoto-u.ac.jp/


日本ガイシ株式会社

https://www.ngk.co.jp/


NAS電池とは

https://www.ngk.co.jp/product/nas-about.html


九大 化学工学部門 渡辺研究室(水プラズマ・その他)

http://www.chem-eng.kyushu-u.ac.jp/lab5/


株式会社Helix(九州大学との共同開発研究機関)

https://www.helix-pls.com/


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