(06)淡水は何処から
衣食住で「食」は大切だと言った。
つまり「食」につながる「水(飲料水/淡水)」も大切である。
水を飲まないと3日で人間は大変なコトになるそうだが、その「3日」の目安はドコからくるのか……所説あるので、エグイ話は置いといて。
古来より、人類の文明は水辺で繁栄している。
人間の飲料水、そして農耕へふんだんに使える水の確保が容易な場所。
その場所に、海上は適切か?
まぁ、真面目に考えれば不適切な訳で。
幸いにして時代は21世紀。海上でも淡水を手に入れる方法は幾つかある。
普及しているのは海水をフィルターで越して水を得る方法。元は不純物を含まない工業用水を得るために発達した技術で、ほぼH2Oのみの純水が作れる。デメリットとしては不純物のついたフィルターの処理と、純水では人間が「美味しい」と思えないので、バランスを調整したミネラルなどを後付けで付与しなければならない。
逆に名水と呼ばれるような湧水に限りなく寄せたミネラルバランスも再現可能。
後は海水を真空に近い状態で低温蒸発させて、蒸気から真水をとる方法。システムとしては簡単であり、フィルターより大量に水が得られるが、デメリットは採取する海水の汚染度が低いことが必要で、かつ残る塩分濃度の上がった海水の廃棄の問題。
この塩分濃度の上がった海水の廃棄問題はフィルターでも発生する。そのまま海へ返してしまえば簡単だが、長期に渡れば海流変化や生態系への影響など、害悪になる。
で、単純に「塩作ればいいんじゃね?」と思った。
過熱して蒸気を飛ばす従来の作り方でもいいし、沖縄の塩づくりでギネスをとった「常温瞬間空中結晶製塩法」という、海水を霧状に噴霧して温風を当てて塩を作る工法とか。
他の方法だと、一時期ニュースでも取り上げられていたが、意図的に結露を起こし、空気中の水分(蒸気)から水をとる方法。
温度差の大きい、例えば真冬の窓サッシの結露とか、真夏の冷たい飲み物のグラスを滴る結露とか。
詳しく聞きたい? 眠くなる、OK。メカニズムの詳細はググって下さい。
企業説明だと「熱交換器によって空気中の水分を強制的に結露させ水をつくる」とのこと。砂漠や乾燥の強い大陸の内陸部などでは諸々の影響から難しい方法だと思えるが、夏が蒸し暑く、海に囲まれた日本、島々や船舶、そして海上都市でも活用の可能性は高い。もちろん水を得る寒暖差を作るのには電気がいりますけど。
熱源さえあれば冷気を無電力で作る方法もありますが、条件がありますし、今回に適用できるか未定なのでパス。
電力を使わず水を得る、で「Warka Water(ワルカウォーター)」などで有名な、メッシュ状の布に水分が付着する方法。設置場所(風通りの良さ、川や海のそばなど)を工夫すれば、施設の規模にもよるが1日100リットル程度集まるとか。
海上都市の場合、防風壁にでも併設しておけば自動的に水が集まるわけで。
少し脱線するが、防風壁で面白いモノが。
東北工業大学・環境応用学科の助教授、野澤壽一氏の開発した「風エネルギー吸収型減風発電システム」。簡単に言うと、防風壁代わりに風車を並べて強風をそよ風にし、ついでに発電もしよう、という機構。風車はよくみるプロペラのような水平軸風車(風を正面から受ける)ではなく、公園でみかけるダリウス型のような垂直軸風車(風を側面から受ける)。この垂直型風車をずらっと並べると、台風並み30km/sの強風も10分の1の3km/s程度、そよ風になる、というもの。
一見、壁というより柵のようなので、視覚的な圧迫感も少ない。んで、柵の内側にメッシュ布を張っておけば防風して水も取れる。防壁に斜傾つければ雨水もゲット。
デメリットとしては騒音ですかね。正確なデータがないのでアヤフヤですが。メッシュ布は光触媒でコーティングでもしておけば、汚れはつきにくいと思う。
光触媒は外壁材・タイル・ペンキなどに幅広く使われる成分で、大雑把に言うと光(紫外線)と反応し、表面についたゴミなどを分解・浮かせて流してしまう。最近のトレンドだと、光を当てれば除菌脱臭を行う空気清浄機とか、水の浄化、など活用の幅は広い。
ほかにも水中などに設置すれば光に反応し水を酸素と水素へ分解する。水素はそのままエネルギー利用できるし、二酸化炭素と反応させることでプラスチック原料にもなる。
地球温暖化ガス削減につながる、とっても興味深い触媒だ。
さて、話を戻すとして。
水の採取が可能として、次の問題は水の浄化。
日本人は殺菌環境に慣れすぎていて、他国の方々は病気にならない環境で感染症を起こす虚弱種族である。
多少の雑菌に慣れていた方が免疫力が活性化し返って防疫になる、という話もあるが、まぁ置いといて。
飲料水の浄化、そして排水の浄化は必要である。
日本式の浄水場、そして下水処理場では不純物を除去するため沈殿池の広いスペース、そして浄化のための微生物活性化で大量の空気を送りこむ大電力を必要とする。
これに対し、中国での下水処理を請け負ったTEIJIN(帝人株式会社)が省スペース高効率の、自社開発のカーボン素材を活用するシステムがある。
日本の規格とは異なるので国内の使用例はないが、中国では問題なく稼働している。
上水処理において、東京都水道局ではオゾンと活性炭素を使い水処理をしている。臭いや有害物質も一緒に処理できてしまうので画期的。
また、水の不純物除去、という点で軍配の上がるのは日本ポリグル株式会社の、納豆菌を活用した「PGα21Ca」通称ポリグル。社の方針で積極的な第三国への支援を行って、商品のポリグルさえあれば後は簡単なろ過装置さえあれば、生活排水等で汚染された、日本人なら重篤な中毒症状を起こしそうな汚水を、清浄な飲料水へ変えてくれる。
日本の規格通りの処理を行うにしても、大電力は処理層の微生物へ酸素を送り込むための酸素なわけで、ポンプではなくもっと効率的に、いま流行りのウルトラファインバブルを使えばどうか。
ウルトラファインバブル(直径1μm未満の小さい泡)は、最近いろいろ商品化されてたりして、活用範囲も幅広い。バブルを作り出す技術も多岐あり、用途に合わせてイロイロ選択できそう。
個人的にはハニカム構造を何層か通過させる方法が好きで……だから変態ではない。
ともかく、微生物への酸素供給をポンプではなく、ウルトラファインバブル(UFB)にした酸素で行う。ポンプより低電力で済むし、微生物の酸素吸収率もいい。
ウルトラファインバブルは今後の出演率高いので、以後ヨロシクお願いします。
排水も、できればリサイクルしたいなぁ
飲料水としては抵抗あるだろうけど、トイレだったり風呂だったり、農業酪農へ活用したり、システム内で循環させて、本当に余った水だけを排水したい。
排水する場合は、ちゃんと海域の塩分濃度に合わせてから。
そーゆー意味でも、海上都市での塩作りは大切かも。
地球は青く、水の惑星と呼ばれている。
しかし、その「水」の多くは海水であり、陸上で暮らす生物が必要とする淡水は全体の2.5%しかなく、しかもその淡水の7割りは氷河や地下水であり、つまり人間が使える再生可能な水資源は全体の0.01%しかない。
その0.01%ですら環境や地域によって格差がある。
日本は幸いにして水資源には恵まれている。
が、しかし。
21世紀は、水資源をめぐって戦争が起きかねない状況に陥っている。
安全に、気兼ねなく、水を自由に使える技術を、日本は保有している。
平和な水資源活用に、幸いあれ。
沖縄の海塩ぬちまーす(常温瞬間空中結晶製塩法)
https://www.nuchima-su.co.jp/
東北工業大学・環境応用学科(風エネルギー吸収型減風発電システム)
https://www.tohtech.ac.jp/dept/eng/ace/
TEIJIN 帝人株式会社
https://www.teijin.co.jp/
東京都水道局(オゾンによる水処理)
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/13.html
日本ポリグル株式会社
http://www.poly-glu.com/index.html
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