自由翻弄学園
@sorano_alice
第1話 波乱の生徒会権限
ここは桜之村(さくらのむら)高等学校。
この学校ではいろいろな噂が立てられている。
学費が普通の半分以下の価格で入れる上にどれだけ頭の悪い生徒でもその学校だけは合格した。
しかし、悪いうわさもある。この街には能力が存在する。能力の乱用がその学校では疑われていたり生徒会長になればどんな内容でも一つだけ生徒会権限として出すことができるという噂だ。良い意味にもとらえられるが悪い意味にもとらえられる。個人情報が流出するという噂まで流れ出している。ましてや生徒が出す権限である。その気になれば生徒会長だけいい思いをする権限を出す可能性も十分にある。
学費に困っている人や試験の点数に困っている人、そしてたまにその噂を聞きつけ興味を持ってしまう人が面接や試験を受けにやってくる。
時は二年前、面接。
「貴方は能力者ですか?無能力者ですか?」
能力に関する質問。
「貴方の能力をここで見せてください」
面接は異常な質問ばかりだったが試験の内容は一般レベルでちゃんとしていた。
そんなことを思ったのが別に高校なんてどこでもよくてその噂を聞き、興味本位で入学してきた人物。今は二年になるところである。その人物は質問していた。
「えーと、前の生徒会長とかはどんな権限出したんすか?」
「とあるデータをもとに2組しかなかったA組とB組から3組にしてA組とB組とC組に増やすという制度です」
金髪の整えているつもりなのだろうがだらしなさがにじみ出ているそのギャルっぽい彼女は頭をはてなマークにする。
ただし彼女に楽しみができた。この学校に何か裏があることを確信したからだ。
「その新しく追加されたC組に配属されるには何か方法があるのでしょうか?」
「それは入ればわかりますよ、貴方ならすぐに」
とある赤髪のロングの少女からはその学校から通知が来ていた。どうやらテストの点数は15点だったらしい。
「ぅ…終わった…」
しかし、その通知には続きがあった、合格通知という続きが。
15点は間違いなく赤点だ。頭が悪い彼女でもわかる。なのに不合格ではなく合格であった。他の高校も同じような点数だったがもちろん不合格。彼女に残された道はその学校だけだった。
彼は頭が悪いというわけではない。むしろ頭が良い人物だ。その人物は黒いフードを被り男にしては小柄だ。点数は95点。もちろん合格だ。
「ふむ、安いね」
彼の悩みはこの学費だけ。それさえ乗り越えれば問題はない。
それから三人は入学したがまずはわけのわからないソフトにより数値化された。これは後にわかるだろう。
入学初日に生徒会権限が出された。かつては一年、よって三年の宮生徒会長による彼の生徒会権限はつまらないものだった。
生徒会権限により次の生徒会長はこの三人が一年の時は二年である宮生徒会長の実の妹、宮蛹(みや さなぎ)が生徒会長となり議長や書記も宮生徒会長の権限により強制的に決められた。
そして興味本位で入った彼女、赤点で入る高校がなかった彼女、金銭に悩まされていた彼は二年を迎えた。
この入学式により波乱が起きることになる。
兄の権限により生徒会長の座を手に入れた宮蛹。舞台に立つ。元気そうなツインテールをしているがあまり生徒会長には見えない上に向いているようには見えない。
「あたしは新しく生徒会長になった3年B組の宮蛹。まずはそのソフトあるよねー」
そのソフトとは、わけのわからないソフトで数値化されたといったソフトのことである。正確には数値ではない。
このソフトにはルールがある。
A~Eの5段階で自分を評価されている通知表に近いものと思ってもらうのがわかりやすい。Aが一番よくてEが一番悪い。Cは普通である。
・人間関係=人望、校則、授業態度もここに含まれる。どれだけ授業態度が良くてもあまり友達がいなかったり独りぼっちだとその分落ちるだろう。
・能力=この世界には能力が存在する。その強さ。しかし物理的強さ、暴力もこの欄に入るため暴力的な部分で強くても能力的に無能力者も存在するため、無能力だったり大した能力ではないと判断された場合暴力が強くても能力が劣っていればその分落ちるだろう。
・学力=テストの点数、成績はもちろん、積極性。部活の有無もここに入るため部活に入っていないとテストの成績が良くても落ちる可能性は高い。
・身体力=運動神経、そして病気もこの欄に入る。運動神経が良くてもすぐに倒れたり体調を崩し欠席が多い場合その分落ちてしまう。
この4項目だがわかるようでわかりにくいシステム。
宮蛹の言葉により金髪のギャル、2年B組、音鈴佐紀(おとすず さき)はそのソフトで自分の数値を確認する。
・人間関係 D
・能力 B
・学力 C
・身体力 B
能力と身体力が良いが能力は能力と暴力を足して割っている。
身体力は運動神経、病気を足して割っている。
ややこしいシステムである。
赤髪ロングの小顔のその人物も自分の数値を確認した。2年A組、天鳥千奈津(あまどり ちなつ)。
・人間関係 E
・能力 A
・学力 E
・身体力 E
あまりにも能力に特出している。しかしそれ以外が最低ランクのE。
フードを被った彼もそのソフトを見る。2年C組。彼の名前は…
・人間関係 A
・能力 不明
・学力 A
・身体力 D
佐紀や千奈津よりは間違いなくいいだろう。しかし、一番わからないのは能力である。不明というAでもEでもないこのワードは何を意味するのか。
そして宮蛹の数値も見ることができた。余談だが宮蛹の兄はAクラスであった。
3年B組、宮蛹。
・人間関係 B
・能力 C
・学力 C
・身体力 D
人間関係以外あまりいい数値とは言えない。三人の中では佐紀寄りの数値だろうか。
生徒会長蛹の権限は発動する。
「そのソフトを見るのが最後になる人間がいるなんて哀れだねー、始めよっか、戦争を」
蛹の権限が今、下される。
「あたしは生徒会長、つまり2倍のポイント、他の生徒会役員は8点ね、部活の主将は5点、副主将は3点。一番点数が高かった3年生以外の3年生の組は退学してもらいまーす」
蛹の下した権限は3年A組、B組、C組いずれか一番高かったクラス以外の3年生が退学である。
「えーと、クラス替えもないしお兄ちゃんが確かあの時2年B組の生徒しか生徒会役員に指名しなかったから副会長、議長、庶務、書記、会計、広報で8かける6で48点と…」
意味不明の生徒会権限にさすがに動揺している。特に3年A組とC組。B組はそうでもない。
「部活は12くらいあって主将がB組が5人と副主将が6人かー、C組元から少ないしね人数自体、勝ち目ないよ。5かける5の25と3かける6の18ね。43だね」
48点と43点の91点ということになる3年B組。さらに続きがあった。
「そしてあたしは生徒会長、91を2倍にするから3年B組は182点だよー」
その数字を上回るには部活の主将が仮に全員A組でも12程度。60点、副主将を入れても36点。96点。届きようがない数字。3年A組とC組がざわめきだす。もちろん蛹に向けてだ。無茶苦茶だ。そんなA組達に蛹は言った。
「無茶苦茶?こうなるのは決まってたんだよ?一年前からね。君たちがなんでこんな罰を受けるかわからないかなぁ」
小馬鹿にするように3年のB組以外の生徒にあざ笑う蛹。
「主将でも副主将でもない0点のゴミ風情を筆頭によくも3点に手出してくれたね。B組は誰も手を出してないからね。どうせ手を出した人間だけ退学させるって言ったら証拠を出せってなるんでしょ?これなら全員まとめて退学させられるからねー」
どうやら3年生間では何か問題が起きていたらしい。A組やC組の生徒がB組の生徒に手を出していたらしい。
千奈津以外の二人は気づいたが佐紀は納得いかない。
「いじめか…確かにいじめっ子は全員いなくなるがA組とC組の無関係のヤツまで道連れじゃねぇか…さすがに10割が加担してはねぇだろ…何でもありだな…この学校は…」
佐紀は闇を知り、ぽつりとつぶやくのであった。
3年A組、C組の生徒たちは座って聞いていられなくなり蛹に襲い掛かろうとする。しかし、蛹は中指を立てた。まるでゴミを見るかのような目で3年のB組以外を見渡すと急に3年A組、C組が怯えだした。
「わかったかなぁ?」
謎の威圧を持つ蛹。また座りなおして3年A組とC組はこくりと頷く。震えながら。
「やっほー2年生。これからは他クラスは全員敵だから、あたしという生徒会長の座は点数が倍になるからねー、あとアドバイスするならそうだなー。生徒会役員を確保しておいた方がいいよー、点数高いから。ま、あたしは卒業してるけどせいぜい一番高い点数取れるようにねー、そのクラス以外退学っていうルールだから」
蛹生徒会長による権限によりこの問題は2年生、1年生にも発展する。そしてもう蛹は生徒会権限を使ったため使用できない。
「3年生、つまり今回の勝ち組はB組だったってことだねー、さっさと負け犬は退学しろよ、じゃーな」
それだけ言うと蛹はマイクを投げ捨て演説を終えた。
蛹の権限発動、この瞬間から2年生や1年生はA組、B組、C組と亀裂を生むことになる。特に生徒会長は二倍のポイントになる。そのためには点数の起点となる生徒会役員は確保しておきたいだろう。
蛹の権限により、2年生A組、B組、C組の生徒会長争奪作戦が開始される。すべては自分の退学を防ぐために。
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