断罪を待っているのですが、ヒロインが(私の)婚約者を相手にしてくれないので物語が始まりません

あひる隊長

ヒロインとわたくし

 はじめまして。わたくし、エトワール・ブラン(17歳)、悪役令嬢です。

 キラッキラの金髪をドリル武装し、切長の吊り目でひと睨みすれば令嬢方は震え上がり、ちょっぴり残念なお顔の小者令嬢を引き連れて高笑いをするあの、悪役令嬢です。

 おうちは勿論代々続く侯爵家。残念ながら国家転覆や国庫を私物化するような悪行は働いていませんが…。

 そんな悪役令嬢な私の婚約者は勿論国の第一王子サミュエル様。いずれは(私が)ざまぁされるやつです。

 …そのはずなんです。


 「白石さま、サミュエル様は食堂にいましてよ!」

 「エトワール!なんでここに…」


 そそくさと逃げようとする女主人公、白石彩花…もといアヤカ・シライシを必死に捕まえる。もうそろそろ誘惑して頂かないとざまぁに至る流れに支障をきたします。


 「エトワール、離してよ」

 「そうはいきません!白石さま、せめてサミュエル様に自己紹介を‼︎」

 「え、やだ。好みじゃない。」

 「しらいしさま〜‼︎」


 そう。何を隠そう私エトワール・ブランは転生者。そして往生際悪く逃げようとしている茶髪の女子高生、白石彩花は聖なる乙女としてこの世界にやってきたのです。


 作品名『花咲き乱れるあの幻の花園にいつの日か再びあなたとたどり着けるまで…花の名を持つ聖女は時空を越えて貴方に愛を捧げる』略して『花愛』または『花いつ』。作品名の長さゆえ略した呼び名がこれほど助かる作品も無い事でしょう。

 あまりの長さに略し方も人それぞれ、私的にはやはり『花愛』がしっくりくると思っているのです。語感だけで『フラワー』と言ったりする人もいるようなのですが、ディープなファンとしてはやはり『フルール』と言うべきではと…いけない、話が逸れていました┏○))ペコリ

 ラノベ界で7500部の発行部数のちょっと微妙な売れ行きの『花愛』のあらすじを説明させていただきますと、女子高生白石彩花が予備校の帰り道、街灯が一つ灯る公園で小学生くらいの美しい男の子と出会って、その少年と美しい花園に紛れ込みます。その子は実は私が生まれ変わったこの世界、アースガルドの精霊王と言う設定なのだけれど、力を失っていて子供の姿しかとれなくなっていて、精霊王の力を回復させる聖なる乙女を探すために時空を越えて地球にたどり着いていたのです。精霊王は白石彩花に『また会えるよ』と言葉を残して消えてしまうのですが、その後アースガルドに召喚されて巡り会い、二人はやがて恋に落ちていくのです。

 その話で何故悪役令嬢の私エトワール・ブランと婚約者のサミュエル様が出てくるのか。実は精霊王は白石さまを召喚するために力を使い果たし、サミュエル・シュヴァリエとして生まれ変わってしまった為、精霊王としての記憶を無くしているのです。そして愛を知らない人形王子になってしまったのです。

 だから白石さまにはサミュエル様と出会って恋に落ちていただいて、私はざまぁされてフェードアウトしないといけないのです。


 「サミュエルの婚約者はあなたでしょ?あなたが愛を知らない王子様とやらに愛を教えたらいいじゃない!」

 「いえ、白石さま!それは召喚された貴女の使命!私如きの出る幕では無いのです!」

 「…でも私、花園なんて知らないわよ?」


 ………な、なんですと⁉︎


 「花園なんて知らない。高校生の時…やけに綺麗な子供…は見た。引き返してお巡りさんに連絡したし」

 「な、な、なんで⁉︎」

 「いや、虐待かと思って…」

 「な、な、なんで⁉︎」

 「いや、予備校帰りなんて夜中っしょ?普通小学生なんていないって。しかもあんな暗い公園。」

 「な、な、なんで⁉︎」

 「あんな暗がりに子供一人でいたら逆に怖いっしょ?」

 「な、な、なんで⁉︎」


 いけない、私「なんで?」しか言ってませんわ。…ん?そういえば、なんで…


 「よ、予備校って、小学生ってなんですの?」

 「なに今更言ってるのよ。全部あんたが言ってたわよ」

 「そんなばか…ん、ん!なんのコトデスカナ?」

 「そもそも私、社会人だから!大学卒業して社会人2年目!」

 「そ、あ?だって、でも…この学院に…」

 「そ、そうよ、ちょっと学生服とか恥ずかしいんだけど、この国の常識とか知らないだろうからって王様が通えって…」

 「そのように口を尖らせて仰る白石さまはとても20代半ばには見えませんから、ご安心くださ…い……だから茶髪なのですね⁉︎」

 「ちょっと‼︎転生者とやらじゃ無かったら茶髪なんて知らないでしょ⁉︎ってか、私の事20代半ばとか言ったわよね⁉︎知らないわよね?普通⁉︎」

 「な、なんの事を言ってるのかちょっとわかりませんな。」

 「ちょっと‼︎不◯家の◯コちゃんみたいな顔しないでよ!」


 …白石さまには私が転生者である事はお話ししていないので、不二◯のペ◯ちゃんはスルーなのです(ペロ)

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