第二章 人類と魔族と童貞

#14 息を吐くようにセクハラする童貞



 おはよう王都!! 今日も清々しい朝だな!

 こんな天気も良くて風も気持ちいい朝は軽く運動(性的な意味ではない)でもして、朝風呂とシャレこみたいもんだぜ!



「ひうんッ!? し、尻を触るなぁッ!?」


「ほぉ〜れフローラ♡ 今度はコッチが隙だらけだぞぉ?」


「うひゃうっ!? 脚を撫でるんじゃないッ!!」



 ……いや、もちろん性的な意味の運動・・なんかしてないんだからねッ!? だからフローラたんもイチイチ可愛い声出さないでもろて……!

 本気でムラムラしてきちゃうから!!



「くっ……! 何故当たらんのだこのッ!?」


「ふははは! 遅い、遅いぞぉー!!」


「きゃうッ!? き、貴様……ッ、よくも私の胸に……!!」



 違うからね!? セッ〇スはしてないからね!? これただの戦闘訓練だから!!


 とまあそんなわけで、俺は現在王都に購入した新居の裏庭で、フローラと模擬戦をしている真っ最中だ。


 ルールは簡単。フローラはとにかく殺す気で俺を攻撃する。俺はそれを掻い潜り、攻撃じゃなくてフローラの身体のタッチする。


 いやだって、俺女は殴りたくないし。そもそも殴ったり蹴ったりしたら、あのミノタウロスやブラッドオーガ達みたいにフローラ死んじゃうし。

 でもまあそれだと緊張感が無いと無謀なことをフローラたんが仰ったので、こうしてタッチどころかセクハラしまくってるってワケよ。


 フローラたんは触られたくなくて必死になる。俺はお手手と心が幸せになる。まさにウィン・ウィンの関係ってヤツだな!


 あとはまあ、この世界の魔法や剣撃に俺が慣れるって意味合いもあるけどさ。

 ぶっちゃけそんなことより、如何におっぱいやお尻や脚や脇を撫でたり揉んだりするか。その方が俺にとってはよっぽど大事だったりする。



「甘いぞフローラ!! 喰らえ、お尻百裂拳!! そぉーれツンツンツンツンツンツン♡」


「いやぁああああッ!? んやっ!? あふぁッ!?」



 フローラが殺意を込めて放った魔法の火球を殴って爆発させ、その爆煙に紛れて高速で背後に回り込み、お尻を超高速でつつく。


 うむ、良きモチモチ弾力であるっ!



「くっ、このぉ……ッ! 死ねこの変態がぁ!!」


「はーっはっはっ! 甘いわッ、クロスカウンターおっぱい掌握拳!!」


「ひぁああッ!? んんっ!? も、揉むなぁあああッ!!!」



 訓練って最高!! 普通にフローラも殺す気満々の本気で掛かってくるから、彼女もどんどん動きが鋭くなってきてるし。

 俺は俺で後でために色々な部位の感触をたくさん学べる……もとい様々な魔法をこの目で観ることができている。


 是非ともこの訓練はこれからも続けていきたいな!

 おっと隙あり! 脇腹コチョコチョ拳!



「ふやぁあああんッ!!??」



 あり? もうへばったのか?

 まだこれからベロも解禁しようかと思ってたのに。





 ◇





「ふぅ、ごちそうさまでした。今日の朝ご飯も美味しかったよ、レイラ」


「お粗末さまです、ハクヤさん。今日のご予定は?」


「あー、まだ王女アンリに今後のこと確認してないからなぁ。分かったらまた声掛けるわ。警備員の奴隷もそろそろ探したいし」


「分かりました。私は台所を片付けたら裏の井戸で洗濯をしてますので、また教えてください」


「あいよー」



 訓練と朝風呂を終え、サッパリとした気分で朝食を摂った俺。フローラ? とっくに食べ終わってまた裏庭で素振りしてるよ。また負けたのがよほど悔しかったんだろう、『次こそは一太刀入れてやる』って息巻いてたよ。


 今の女性はレイラといって、不動産屋に紹介してもらった住み込みの家政婦ハウスメイドさんだ。

 通い・住み込み問わず家政婦を募集したところ十数人が集まったんだけど、その中で特に輝いていた彼女を雇うことにしたんだ。


 一人一人面接をして選んだんだが、その選定基準は至ってシンプルだ。


 まずは若い女性を選んだ。理由はもちろん未来を見据えてだな。

 世界救済にどれだけ掛かるかは不明だが、その後セッ〇スが解禁となった時に結ばれるかもしれないんだからな!! そこは重要だぞ!?


 そして面接者が半分ほどに減った後、俺はある事実を、一人一人に小金を渡し守秘義務を契約させた上でカミングアウトしたんだ。それに対する反応で決めさせてもらったのだよ。


 レイラの反応はホント神懸かってたなぁ。



『俺は18だが童貞だ。しかし時期が来たら沢山の女性とまぐわいたい。お前にその覚悟はあるか?』


『奇遇ですね、私も17ですが処女です。その時は優しくしてくださいね?』



 もうね、即決だったよね!

 なんかフローラたんはドン引きしてたけど、彼女とはもう裸を見せ合った仲だから、合意は得ているものとして華麗にスルーしておいた。


 何度だって言うぞ? 異世界なんだからハーレムを夢見たっていいじゃない! 男の子だもの!!

 それに前世の29年間分の性欲ストックだってあるんだ! 一人の女に背負わせるのは酷ってモンだろうが!!


 とまあ、そんな経緯で我が専属メイドさんとして(次に出掛けたらメイド服と白いニーハイソックスとガーターベルトと下着も買ってこよう)新居に迎え入れたんだけども。


 何でも彼女は、田舎の家族に仕送りをするために王都に出稼ぎに来ていたらしい。

 家事全般は実家でも担っていたから得意だしと、家政婦の仕事をあの不動産屋に口利きしてもらうよう契約をしていたそうだ。


 働き先が見付かるまでは住み込みで宿の従業員をしていたそうだが、今回俺に雇われるに当たって、そこら辺はすぐに整理してきたとのことだ。


 俺のセクハラに対する対応といい、行動力といい大した胆力だよなぁ。


 茶髪のロングヘアーを颯爽と揺らしてキビキビと働く姿には、思わず目を惹かれてしまう。

 髪と同じ茶色の瞳は意志の強さを宿し、しかし母性を感じるようなタレ目で親しみやすい。体格は……うん、普通? 巨乳でもないけどちっぱいでもない。痩せすぎでもないしポッチャリしてる訳でもない。けどまあ、ぶっちゃけて言えば普通に抱きたくなるような、女性らしい女性だな。


 ふむ、試してみるか。


 俺は台所で洗い物をしているレイラに声を掛ける。



「なあレイラ?」


「どうしました?」



 声を掛けた俺に、洗い物の手を止めて振り返るレイラ。

 なんか、エプロンで濡れた手を拭く仕草まで絵になるよなぁ。良い奥さんになるぞ、彼女は。



「近々出掛けた時に、レイラの仕事着や普段着も買ってきてやりたいと思ってるんだ。俺が選んだので良ければだが、身体のサイズを測ったり下着の好みを聞いてもいいか?」



 さあ、どう出るレイラ!?

 俺は蔑んだ目で見られることも想定しながら、ドキドキしながら、余裕たっぷりのお姉さんキャラなレイラの言葉を待つ。


 すると彼女は。



「身体のサイズですか? でしたら触って確かめてみます? 下着は……」



 そう言ってなんと、自らエプロンとスカートを捲り上げて見せてきたではないか!?

 はたして彼女が履いていたのは、主にズロースやドロワーズと言われるゆったりとした物であった。



「なるほどな。俺の好みで選んでもいいか?」


「楽しみにしてますね。身体のサイズはすぐに測りますか?」


「いや、それは出掛ける前のお楽しみにしとくわ。記憶が新鮮な方が服選びに役立つだろうし。ていうかお前、もっと『いやーん♡』とか『きゃー♡』とか恥ずかしがらないの?」



 やべぇな……! あまりに動じないもんだから、この俺としたことがついつい日和ひよっちまったぜ……!

 レイラさん……恐ろしい子!!


 とはいえ面接の時といいさすがに動じなさ過ぎるので、ついつい興味から、俺はそんなことを訊いていた。



「恥ずかしい思いは当然ありますよ? でも、ハクヤさんは面接でも言った通り、私を大事にしてくれるのでしょう? この王都で住む所も、終身雇用先も見付かりました。これで田舎の家族にも、楽をさせてあげられますから」



 ……なるほど、コイツはアレか。自分の大切な人のためなら苦労も不幸も厭わないタイプだ。大切な人の幸せのためなら、自分が泥を被っても笑顔を浮かべられる、そういう類いの人間だ。


 やめろよな、そういうの。俺の……を思い出して胸糞悪くなるじゃねぇかよ……!



「気に入らねぇな……」


「え……?」



 気付くと俺はスカートを捲る手を放させて、そんなことを口走っていた。

 突然テンションを落とした俺に驚いたのか、レイラは初めて、少し慌てた様子で俺の顔を見返してくる。



「お前の家族への愛情の深さは理解した。だけどそれと引き換えに、自分が苦労を背負しょい込もうとしてるのは気に入らねぇ。誰がいつ、お前を不幸にするっつったよ?」


「あ……」



 レイラの女性らしい細い腰を抱き寄せ、困惑して見上げてくるレイラの目を間近で見詰めて、俺は宣言してやる。



「お前は、俺達と一緒に幸せになるんだ。もちろん、田舎の家族にも苦労させないようにしてやる。だから全部悟ったような、諦めたような目で俺を見るのはやめろ」


「わ、私は……!」


「雇用主だからじゃねぇ。ちゃんとのことを愛せるように、心から惚れさせてやる。だから……ちゃんと見てろよ?」



 そう言ってやると、いつも余裕を湛えていたレイラの頬が、ゆっくりと赤く染まっていくのが分かった。

 しばしそうして俺達は見詰め合っていた――――



「ふぅ〜。素振りとはいえ少々やりすぎたな……って、ふ、二人とも!? な、こんな朝っぱらから、なななナニをしているん……ッ!?」



 ――――のだが、鍛錬を終えてきたのか、真面目ちゃんなフローラが家の中に入ってきて大声で喚き出した。


 せっかくいい雰囲気だったのにぃ!

 その声に反応したレイラは慌てて手を振りほどいて離れちゃうし、なんか締まらねぇなぁ……!


 そんな騒がしい、ある意味いつも通りな朝であった。




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