小説③


 先生は荷馬車の荷物の中から適当な鈍器を取り出した。


「これがいいな。小さくて軽いし使いやすいやろ」


 それを受け取ると今まで使っていた木製の鈍器と比べズシリと重みを感じる。


「メイスだ。使い方はわかるな? いざと言うときはこれで自分の身も守らなあかん。適当に振り回しても敵には当たらん」


 そう言って先生は自分のメイスを構える。


「こう、下から上に。下から上、下から上」


 それを真似て振ってみる。身体がメイスにつられて揺れてふらふらだ。


「そんなんじゃあかん。もっと腰を入れて、重心を低くする感じに」


 重心を低く、腰を下げて。


「もっと足開いて。そんでこうや」


 先生の丁寧な指導のおかげでなんとか形にはなってきた。逆に私は今まで戦い方も知らずに外へ出ていたのかと思うと恐ろしくなった。そして無力な自分がやるせ無い。

 私は力いっぱいメイスを上から下に振り下ろした。それを先生は見逃さなかった。


「上から下に振る方が強そうには見えるけどそれはあかん。隙が大きく出来てまう」


「すみません……」


「まぁゆっくり覚えたらええよ。無理せん程度にな」


「はい」


 それから暫く先生と練習をし、今夜から夜はギルドハウスに泊まると言うので一度宿へ戻り身支度を整える。荷物はそれほど多くは無いがあるものはどれも懐かしいものばかり。

 スーツはこの世界に来る前のことを、雑貨にはまるたちとの思い出が。私は、私たちは何故この世界に来てしまったのだろう。そんなおずおずとした感情が湧き上がってくる。



 ファンタジーの世界って、もっと華やかなものかと思ってた。



 なんて空想上の世界と比べてしまう。現実なんてこんなものだ、そう昔の自分は言っていた。

 



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サクリファイス‼︎ヒーラーが白いのはローブだけ。盾持ちヒーラーが今日も火力ごり押しPTで踏ん張ります‼︎ 胡桃もなか @aka87

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