二話『白』
あれから何日か日が過ぎた。私は強くなりたい、そう思った日からずっと、何も出来ずにいた。
空っぽだ。
明日こそ、明日こそはと毎晩心に思うがその明日は永遠に来ない。今日もただぼんやりと部屋の中で1日が終わる。あんなに何もない部屋が嫌だったのに、今はこのベッドしかない部屋が心地よく感じるから不思議だ。ここに居れば安心なんだ、ここに居ればもう何も失うものはない。
「アミちゃん、ここにご飯置いとくわよ」
みぃさんは毎朝入り口に食事を置いてそう声をかけてくれる。
「あ、あとサクリファイスのガットが話があるって下に来てるんだけど、どうする?」
ガット。そういえばあの日、ちゃんと来いよ、って言われたのに顔を洗ってそのままここに戻ってきたんだっけ。あの日からもう何日も経つのに今更何の用だろう。
「今日は帰ってもらおうか?」
ドア越しに心配そうなみぃさんの声がする。このままじゃいけない、そう自分を奮い立たせ立ち上がる。
「今、行きます」
「わかったわ。お茶でも用意して待ってるわね」
ぼさぼさの髪を整え身だしなみを整えドアノブに手をかけた。部屋から出るのは何日振りだろう。下へ降りると営業時間外で誰もいないテーブルにガットが一人腰掛けていた。
「よぉ」
「こ、んにちは」
「こないだずーっと待ってたのに来ないから、心配したんだぞ」
「ごめんなさい」
「ま、元気ならいいんだよ。元気なら」
「はい」
「ま、今日はこれをお前に渡そうと思ってきたんだよ」
ガットが真っ白なローブをテーブルに置くと重たい息を吐く。
「麻のローブ。まるって奴が製作ギルドの場所を借りて編んでたらしいぜ」
「え」
「そこのギルドの奴らに話してたらしいぜ。うちのヒーラーはかわいい装備に憧れてるんですよって」
よく見れば裾や袖には赤褐色の染色された糸で可愛らしい模様が施されている。
「まる……」
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