十四 大統領のハッタリと囚人部隊
その後。
「EUと環太平洋環インド洋連合国・PRIORUNが隣国に生物兵器を供与している。生物兵器の攻撃がありうる・・・」
露国大統領は、隣国の生物兵器使用をでっち上げて、隣国侵攻に生物兵器を使った。自作自演で危機状態を捏造して相手を攻撃する手は、大統領がかつて所属していた情報機関の戦術その物だった。
だが、これは、自軍兵士も死に至らしめたため、即刻、生物兵器の使用を禁止した。
「EUと環太平洋環インド洋連合国・PRIORUNは隣国に核兵器を供与している。隣国が我々の国土に一歩でも進攻したら核兵器で反撃する、本土を攻撃しても報復に核兵器を使う」
大統領は今度は、核攻撃を示唆した。
EUと環太平洋環インド洋連合国・PRIORUNの人々は思った。攻撃されてもいないのに、隣国の民族紛争を言いがかりにして軍事侵攻したのは、露国だ。これを露国が言うナチズムと呼ばずに、何と呼ぶのだろう・・・。
「占領地域の住民投票で、住民がどちらに帰属するか決定する」
露国大統領はそう言って隣国侵攻を正当化しようとした。
兵士が銃を構えて人民に投票させれば、どちらに帰属するか、結果は決っている。茶番劇だ・・・。EUと環太平洋環インド洋連合国・PRIORUNはそう思った。
「職業軍人だけでなく、国民を軍に招集する。国家が一体となって軍事作戦を遂行する」
そう言って露国大統領は露国軍と国民に檄を飛ばすが、いっこうに露国軍の士気は上がらない。軍は何をしている?なぜ、士気が上がらないのだ?露国大統領は退役将校を再招集して、軍の士気を上げようとしたが、無駄に終った。
当然だった。国民はよく状況を判断している。軍事侵攻は国策ではない。大統領の一存だ。国境は、軍に招集される前に国外へ逃げようとする国民で混乱している。そして犯罪者は刑務所から戦地へ強制連行されて兵士にされている。
アンドロ・ボスコノフは警察の証拠捏造で殺人犯に仕立てられて死刑囚になった。刑務所に留置されていたが、戦地に強制連行されて、兵士に仕立てられた。
アンドロ・ボスコノフは戦地兵舎で兵士たちに提案した。
「お前たちは、ここで死ぬ気か?それとも蜂起して、独裁者と戦うか?隣国に投降して独裁者と戦うか?」
ボスコノフが話しているのは、刑務所から戦地に移送されて兵士にされた囚人たちだ。
「大統領が考えているのは領土拡大だ。そのために、我々だけでなく、国民の命を踏み台にして隣国へ軍事侵攻している。
なんのためだ?国民のためか?
大統領個人の欲のためだ!
それを馬鹿な取巻きの閣僚が煽りたてて、国民の命と引き替えに領土拡大に伴う利益を得ようとしている。
俺は警察の証拠捏造で殺人犯に仕立てられて死刑囚になった。
大統領は軍事戦略と言って兵士を隣国へ送りこんで侵略させて、数万の我々の同胞の国民兵士の命を奪った。
俺と大統領のどっちが殺人犯!!?
お前たち死刑囚と大統領のどっちが犯罪者だ!?
我々は大統領のような大量殺戮者ではない!戦争犯罪者でもない!
他国から侵略されていないのに、隣国からの脅威をでっち上げて軍事侵攻する意味が何処にある?!
隣国をナチズムの国と言うが、大統領が行っているがナチズムだ!
よく聞け!
蜂起して大統領を抹殺するか?
投降して隣国の兵士として大統領を抹殺するか?
それとも、独裁者の犬になって戦死するか?どっちだ?!」
「我々はロシア軍兵士だ。クーデターは許さん!」
部隊指揮官の将校が拳銃を手にして軍警察とともに兵舎に入ってきた。
「わかった。指揮官の立場は充分に理解している・・・」
ボスコノフはおちついている。武器を軍警察に渡すふりをして将校を射殺した。同時に、兵士たちは軍警察を射殺した。
殺られる前に殺る。殺らなければ、戦死するまで戦地に留められたままだ。
そんな事はわかっている。ここにいる兵士は全員が死刑囚だ。ロシア軍の、いや、大統領の軍事侵攻の捨て駒だ。
大統領は自分の欲のために、我々だけでなく、国民を軍に招集して、国民の屍の上に、隣国占領の凱旋戦車を走らせようとしている。
大統領はいったいどれだけ蓄財すれば気がすむのだ?こういう輩は生きている限り金に執着する・・・。
「よく聞け!こいつら将校と軍警察は、隣国との戦闘で戦死した!
今後の指揮官はこの俺、アンドロ・ボスコノフだ。
今後、送りこまれてくる兵士を我々の部隊に引きこみ、我々は我が国家を独裁者から奪還する。みんな、いいな!」
「我が露国を独裁者から奪還するぞ!」
皆が、声を潜めて承認した。
戦地に強制移送された死刑囚たちは略奪や暴行や殺人の犯罪に長けていた。
兵士となった死刑囚は軍から武器と兵器と食糧を得て、戦地に送られてくる増強部隊を友軍にし、独裁者の意向を指示する将校と兵士を射殺して、戦死者として露国軍本部へ連絡した。
いつしか、死刑囚たちの部隊は解放軍として隣国軍に加わった。
隣国軍は露国軍を壊滅したが、指揮官ボスコノフは解放軍をモスクワへ侵攻させずに、時が来るのを待っていた・・・。
防衛省防衛局対潜入工作員捜査部の潜入情報官により、北方領土と台湾と中国西域で密かに人民投票が行われた。
北方領土の民は無条件で日本への帰属を認めた。台湾人民は中国本土を一つの台湾にするとの条件で、日本への同盟と帰属を認めた。中国西域の民は完全独立の意志を固めた。。
この人民投票と結果は公開されなかったが、中国と露国の両国政府の耳に入った。両国政府は怒り狂ったが、自国の政策をそのまま利用した人民投票の主謀者を割り出せぬまま、時間だけが過ぎた。
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