第38話 たまには自転車でお出かけを
さて、予定では移住まであと4日。
通販を頼んでも間に合わない可能性が出てくる。
必要と思われるものはほぼ購入したつもり。
しかし漏れがあってはまずい。
持ち物に関して参考になるページはいくつかある。
事務局が運営するページの中に、
〇 移住の際に持ち込んだものトップ100選
〇 事務局が選ぶ部門別人気グッズ
なんて特集ページがあるのだ。
それらのページと入力済みの持ち物リストを見比べる。
ふむふむ、やはり家はユニットハウスが一番人気か。
そんな事を思いながら漏れがないか確認。
アプリを起動してスマホで撮影すれば、箸1膳まできっちり持ち物リストに記載してくれる。
だから通販分も持ち込み分もほぼ全部リスト入力済みだ。
リストに入っていてアイテムボックスに入りきらない物は、出現場所の直近に外に出た形になる。
だから雨に濡れては困る物を優先でアイテムボックスに入れるようにしておけば、多少の超過があっても問題ない。
さて、確認の結果、私の準備したグッズはほぼ全分野を網羅している模様。
持ち物はおそらくこれで問題ないだろう。
背負子も注文したし。
持ち物リストには本もかなり入っている。
参考資料になる本も暇つぶしの漫画も。
まだ読んでいない面白そうな本、更にはかつて読んで記憶に残っている本まで通販で購入して用意済み。
元々私は活字中毒位に本が好きだった。
うつ病になってあまり読まなくなったけれど。
正確には読めなくなったというべきだろうか。
難しい文やセンテンスが長すぎる文を目で追えなくなったのだ。
かなり調子が戻った今でも読めるのは漫画やラノベまで。
それでも昔読んで気に入っていた難解な小説も持ち物に入れている。
もう戻れないから、少しでも後悔しないように。
紙資料系統で言えば資料のファイルもかなり充実してきた。
このために20ポケットのクリアファイルを10冊購入した。
それでも足りなくなりそうな勢いだ。
資料の内訳は、
〇 塩の作り方等、食べ物に関わるもの7割
〇 漁法に関わるもの1割
〇 サバイバルに関するもの1割
〇 ヒラリアや惑星オースに関すること1割
といった感じ。
向こうにはインターネット等という便利なものはない。
だからこちらで収集可能なものは印字して持っていく事になる。
しかし何が何でも印字しているわけではない。
惑星オースには便利な魔法がある。
知識魔法と呼ばれる魔法だ。
例えば漁で見知らぬ魚が捕れたとしよう。
この魚は食べられるか食べられないか。
そんな疑問を持った時にこの魔法を起動する。
するとあら不思議。
〇 過去に食べた者がいるか
〇 毒はあったか
〇 味はどうか
等がわかってしまうのだ。
残念ながら地球上ではこの魔法は試せない。
惑星オース上でないと使えないらしいから。
しかしこの魔法があれば大抵の事は魔法で判明する。
ただし魔法で回答出来ない事もある。
〇 惑星オース上で過去に経験されていないこと
〇 魔法起動者が思い浮かべられない疑問の答
〇 魔法起動者の語彙や思考力で表現できないこと
なんてのが代表だ。
なお語彙については何語であるかを問わない。
つまり惑星オースの共通語ではなく、日本語でもOK。
この辺のデータベースはどうなっているのだろう。
前に気になった魔法解釈のデータベースと同一なのだろうか。
その辺の記述はWeb上にはなかった。
移住して向こうで知識魔法を使えばわかるだろうか。
さて、本題に戻ろう。
持ち物リストは一通り確認した。
おそらく買い忘れ、用意し忘れはないだろう。
しかしそれでも現物を見ればまた変わるかもしれない。
そんな事を思ったりもする。
何か意外な使い道なんかを思いつくかもしれない
画面で見るのと現物を見るのはやはり違うから。
移住準備はほぼ終わって時間は余っている。
よし、出かけよう。
今回は100円ショップとスーパーでいいかな。
1km程度行ったところに隣り合って建っているし。
更に隣にはドラッグストア、道の反対側には中古釣具店まで。
外を見る。
雨はやんでいた。
なら久しぶりに自転車に乗っていこうか。
自転車は家の中に入れている。
盗まれたくないし雨ざらしで傷むのも嫌だから。
玄関から廊下にかけての壁際に立てかけている自転車を確認。
タイヤの空気があんまり入っていない。
そういえばかなり長い事乗っていない。
パンクしていないよな。
隣に置いてある空気入れを接続してシュポシュポ開始だ。
この自転車は12段変速。
前サスペンション付でタイヤは27.5インチ。
カゴと泥よけをつけクロスバイクに偽装したモスグリーンのMTB。
元々は坂入先輩の自転車で卒業して実家に帰る前に貰った代物だ。
自転車が無いと何かと不便だ。
ちょっと買い物に行く際にも。
だから欲しい欲しいと言っていたら餞別にくれた。
予備のタイヤチューブやメーター付き空気入れ、携帯型空気入れに整備工具一式。
そして実家へ持ち帰るのは面倒だからという言い訳もセットで。
先輩曰く貰ったフレームと手に入る安い中古パーツで組んだ自転車。
しかし一応原型はアメリカンでグランツーリスモな一流メーカー製だとの事。
ウン年経った今でも外見は先輩から譲り受けた状態のままだ。
カゴもタイヤもそのままで、シート高すら変えていない。
当時の私と先輩の身長は互いの自称では3cm私が低いけれど。
この自転車もヒラリアに持って行く予定。
勿論移住場所の近所では使えない。
しかし街へ行く途中、馬車道に出てからは便利だろう。
スペアタイヤ、スペアチューブ、ブレーキローターやパッド、パンク修理セットそのほか消耗品は購入済みだ。
なお自転車は惑星オースでもある程度存在している模様。
移住者が持ち込んだり、それを向こうでコピーしたりしているらしい。
Webにはそんな記載があった。
だから持って行っても問題ない。
部品も規格はほぼ同じで入手可能。
タイヤのゴム等、素材品質はいまいちらしいけれど。
先輩曰く街中での適正空気圧は空気入れの表示で70くらい。
結構頑張って入れないとここまで入らない。
軽く汗かくくらい頑張って何とか前後とも入れる。
空気が漏れている気配は無い。
玄関扉を開け、よいしょと自転車を出す。
扉を閉め、外廊下と階段を引っ張って運ぶ。
舗装道路へ無事到着。
よし、それでは行くか。
3か月ぶりくらいに跨って漕いでみる。
思った以上に快適で速い。
何せ元はそこそこいい自転車らしいから。
先輩によると、だけれども。
ただ、家に帰ったら一度整備をしておいた方がいいかな。
異世界でずっと使い続ける為にも。
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