はぐれ魔王はぐーたらライフを送りたい~ 目が覚めたら魔族は絶滅してたけど我は元気です ~

猫鍋まるい

第1話 我、目覚める

「な、なんじゃー!? これはッーーー!? 」


 ガラにもなく大声をあげてしまったが、誰だって起きて自分の胸に剣が突き刺さっていたら叫びたくもなるだろう。


 つまり我は悪くない、そうじゃろ?


(あ、アレ? 全然痛くないぞ…? )


 体を貫通しているというのに、不思議なことに痛くも痒くもない剣を一思いに引き抜き地面に投げ捨てる。


「寝起きからビックリさせおって、まったく…」


(というか、ここはどこだ…? )


 我が持つ瞳は魔眼のなかでもとびきり高性能なものなので、灯りが一切ない室内であっても問題なく周囲の状況を確認することができるが。


 ひび割れた床に半壊した柱と……今まさに崩落してもおかしくないような場所になぜ魔王たる我がいるのだと首を傾げる。


「ふむ……」


 ふと、先ほど自身の胸から引き抜いて適当に放っておいた剣が目に留まる。


「む? むむむ…! 」


(待てよ、アレは…。 よく見れば聖剣ではないか…? )


 我ら魔族の天敵ともよべる、強力な祝福が施された神器。


 この聖剣は魔王たる我の血を浴びたまま放置されていたせいか、性質が大きく変化してしまっているが。


 聖なる力、その残滓は確かに感じ取ることができる。


(そうか…思い出したぞ…! たしか、我はあの時…)


 てっきり、ただ眠りから目覚めたものだと思っていたがそうではない。


 我は勇者連合軍を名乗る鬼畜超人集団に包囲され、必死の抵抗もむなしくブスリと串刺しにされ意識を失っていたのだ。


 恐らく勇者たちは聖剣で貫かれた我を見て勝利を確信したようだが、我が封印されない限り所持している魔王スキルの一つ「再誕のほむら」で復活出来ることまでは知らなかったようだ。


 それに、聖剣が肉体に突き刺さったまま仮死状態でいたおかげか。


 我が持つ攻撃を受ければ受けるほどその攻撃に対して強くなる「蓄積耐性」が発動し、本来であれば魔族にとって防ぎようがない弱点であった聖なる力を無効化出来るほどの抵抗力を手にしていた。


「ふっ、フハハハハ! フハハハハハッ! 馬鹿な勇者どもめ! 弱点を克服し、まさに無敵となった我は、今こそ…今こそ…!! 」


 食ってッ! 寝てッ! 遊ぶッ!


 まさに、ぐーたらな生活を満喫するのじゃーーー!!!!

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