奇談ブートレグ ―怪異録remixes―
滝 ぴん
第1話 ボール探し
宮城県仙台市広瀬川沿いの広場
ある日の午後。川原に面した広場の一画に十数人の小学生達が集まり、ドッジボールを楽しんでいた。
日も傾き始めた夕暮れ時。だんだんと辺りも薄暗くなる。あと1試合で今日はおしまいにしようと話し合いで決まり、ゲームを再開した。その日最後のゲームという事もあって気合いが入ったのか、投げるボールにも力が乗って試合も迫熱。内野のプレイヤーにおもいっきりぶつけられたボールが大きく弾み、川原の茂みの中へと勢いよく転がっていった。
外野の少年1人が今取ってくると叫んで茂みのほうへ走って向かい、コートに残った皆は息を整えつつ待っていた。
しばらくすると、ハハッ、と笑い声が聞こえた。
しかしいくら待っても彼は帰ってこない。
ボールは見つかったか、などとしばらく皆で呼び掛けていたのだがボールを探しに行った彼からはなんの返事もない。
しびれを切らして皆で茂みのほうへ向かうと、少年はその場に痙攣して倒れていたという。彼は泡を吹いて気絶しており、すぐさま呼ばれた救急車で病院へと搬送された。
それから数日後、少年の意識が戻ったと聞きつけた友人達は病院へお見舞いに行った。
いくらか元気を取り戻した姿を見て安堵している友人達に、ベッドに横たわる少年が尋ねた。
「ボールはちゃんと見つかったか?」
あの後、ボールは見つかったと聞くと少年は安心したという。
そして、あそこで遊ぶのはもうやめよう、と告げた。
どうして?と、友人達が聞くと少年は怯えはじめた。
陰りを帯びた、なんともいえない表情をして少年はとつとつと話し始めた。
あの日。茂みの中へボールを探しに入った時、どこを探しても見つからなかった。
諦めて皆を呼ぼうとした時、なにげに目の前のこんもりした草むらを足で払うと感触があったので手を突っ込んで持ち上げた。
それを持ったまま振り返って戻ろうとした時、ボールの手触りが変なことに気づいた。
手に持っていたのは人の生首だった。
灰色の肌。虚ろな表情。充血した眼。髪を剃った血塗れの男の顔が、こちらをじとりと見ながら唇を蠢かしている。
目が合うとそれはハハッと高らかに笑った。
驚いて咄嗟に生首を放り投げた途端、目の前が真っ暗になり、気づいたら病院のベッドの上だったという。
昔、その河原の近辺は評定河原と呼ばれ、仙台藩の評定所と処刑場があった場所だった。
戦で捕らえられてきた武士や兵士、悪事を働いて捕まった罪人、政治犯等が裁定後、即刻切腹を命じられ、斬首された処刑場として知られている。
一説にはその近辺で5500人以上もの武士、罪人が処刑されたといわれている。
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