第260話 トランプ

ルージュさんに話を終えた後、委員長と勝負内容について話をする。


「勝負の内容を伝える前に、勝負内容によっては僕が必ず勝つゲームもあるけど、それでもいいのか聞いてもいい?」


「クオン君がそういったゲームを選ぶなら従うわよ。でも、クオン君はそれで勝っても嬉しくないでしょ?」


「そうだね。それじゃあ勝負内容を説明するよ。委員長は僕が決めていいって言ったけど、不満な点があったら言ってくれていいから」


「わかったわ」


「委員長は戦争っていうトランプを使った遊びを知ってるかな?」


「聞いたことはあるわ。やったことはないから詳しくは知らないけどね」


「うろ覚えではあるけど、とりあえずオーソドックスなルールを説明するね。ジョーカーを抜いたトランプをよく切ってからお互いに26枚ずつ配る。手札は見ずにお互いに1枚ずつ出して、数字の大きいカードを出した方がカードを取る。それをカードが無くなるまで繰り返して、最後にカードを多く取っていた方の勝ち。もしも数字が同じで引き分けならプールすることになって、次に勝った方がプールされたカードも総取りする。ここまではいいかな?」


「いいけど、それってほとんどっていうか、全部運任せじゃない?」


「そうだね。だから、少し特殊なルールにしようかなって。まず、ジョーカーを2枚入れたトランプを三等分して一つは山札にする。手札は見てもよくて、出すカードは自分の意思で決める。ラウンドごとに山札から1枚カードを場に出して、そのカードを見てお互い手札からカードを選んで勝負する。カードの強さはジョーカーが1番強くて、その次はエース、後はキングから2までね。強いカードを出した方が山札から出されたカードを手に入れて、勝負に使ったカードはゲームから除外する。一気に話してるけどここまで大丈夫?」


「大丈夫よ」


「手札が無くなるまで繰り返して、最終的に山札から取ったカードの数字を合計して、高い方の勝ちにする。山札から出たカードがジョーカーだった場合、このラウンドに勝った方は、次に手に入れたカードの数字を2倍としてカウントする。これでどうかな?」

委員長に駆け引きメインの頭脳戦を提案する。


「勝負はこれでいいわよ。ルールでわからないところがあるんだけど、ジョーカーが場にある時にラウンドが流れた場合はどうなるの?ジョーカーがプールされている状態で場に出たカードが2倍の数字となるのかどうか」


「ジョーカーを獲得した状態になってから、次に獲得したカードが2倍になるってことにしようか。ジョーカーがプールされている時に場に出たカードが2なら、そのカードは2としてカウントする」


「その後引き分けになって、複数枚獲得することになったら?」


「最初に場に出ていた方のカードを2倍にするってことで。例えば2が山札から出た時に引き分けになって、次の5の時に勝ったなら、2は倍の4として計算して、5はそのまま5として計算する」


「わかったわ。もう一つだけ、イカサマが発覚した場合はどうするの?」


「この後説明するつもりだったけど、イカサマの現場を抑えられたらその時点で負けにしようか」


「つまり、その時を逃したらイカサマされたと気付いても諦めるしかないってことね」


「そういうこと。トランプはルージュさんに頼んで、作れそうな人を紹介してもらうことにするよ。委員長が作ってきてもいいけど、どうする?」


「クオン君に任せるわ。仮にイカサマを仕込んでいても、すぐに見抜けばいいってことでしょ?」


「そうだね。それじゃあ作っておくよ」


ルージュさんに職人を紹介してもらって、トランプの作成を頼む。

ルージュさんに話をしたことで、トランプ作成は国からの仕事ということになった。

ルージュさんはトランプが国益になると考えたようだ。


こういった物がこれから拉致られてくる人達にとって、過去に地球から拉致られた人がいたのだというヒントになるのだろう。


あまりにも地球の物で溢れさせるのは、神の選定の妨害になりそうでもあるので、ルージュさんにはトランプという名称は教えず、トランプを使った遊び方もババ抜きだけを教えることにした。


現状でこの世界に地球の知識の形跡が中途半端に残る程度になっているのは、この世界を管理する神が、神の力をつかってバランスを管理しているのだと勝手に思っている。


あまりにも召喚しなさすぎて忘れられただけかもしれないけど……。



地球に戻り、サモナーストーリーを立花さんとプレイした後、翌日の予定を入れる。


「訓練に付き合ってくれてありがとう。どうしても委員長に勝ちたいから、悪いんだけど対戦相手をお願い。ゲームのルールはメールに書いた通りだけど、何かわからないところはあった?」

立花さんに相手をしてもらい、委員長に勝てるように訓練を始める。


「大丈夫そうだけど、実際にやりながら確認してもいい?」


「うん、わかった」


お互いにカードを見せた上でルールの共有をした後、立花さんと対戦する。



「僕が少し勝ち越したくらいかな。正直、このくらいだと委員長に勝てる気はしないな」

カードを切って配る時点で運に左右されるところもあるけど、駆け引きの部分で考えが足りていないと実感した。


このゲームで大事なのは、いかに大きな数字のカードが場に出ている時に勝てるかではあるけど、だからといって大きい数字のカードを取ろうと強いカードを出してしまうと、後々キツくなる。

そして、強いカードを出したのに負けるのが1番ダメな行動だ。

カードが取れても、相手が勝負を捨てて弱いカードを出しているのに、こちらがエースやジョーカーを出していたら、それも良くない。


山札からジョーカーが出た時にどうするかも重要だ。

次に手に入れたカードの数字が2倍になるから、大きい数字のカードをある程度選ぶことは出来るけど、その為には大きい数字のカードが出るまで負け続ける必要がある。


「立花さんにはつまらないことをやらせることになるけど、既に出たカードにチェックして、カウンティングしながら相手をしてもらえる?」

立花さんに全てのトランプの札が書かれた紙を渡して、既に場に出たカードと自分の手札を除くことで、僕の手札と山札に何が残っているのか予想しながらプレイしてもらうことにする。


結果として、僕はほとんど立花さんに勝てなくなった。


やっぱりカウンティングの効果は高すぎる。

でも、委員長なら頭の中で簡単にやってそうだから、僕も出来るようにならないといけない。


駆け引きという部分でも立花さんよりも委員長の方が上手うわてのはずなので、カウンティングしている立花さんに安定して勝てるようにならないと話にならないだろう。


少なくとも、最初に配られたカードが立花さんより優れていたのに負けるというのは無くさないといけない。


神下さん、中貝さん、桜井君、それから平松さんにも対戦相手になってもらい、訓練漬けの日々を送る。


そして、心身ともに万全な状態で決戦の日を迎える。

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