第199話 フォロー
賊達のことはアルマロスさんに任せることで決まったことをレイハルトさんに伝えた後、僕は魔法都市にファストトラベルで戻っておき、自室へと帰る。
翌日、魔法学院に行くとまだ事件のことは知らないのか、それとも自分は捕まらないとでも思っているのか、クロウトは普通に登校していた。
クロウトが登校していることを確認した僕は、学院長の所に向かう。
「クロウト君がネロ君が育った孤児院に悪さをするように賊に頼んでいたという証言を得ました。あれでも貴族の息子になりますので、対処は子爵が到着してからがいいと思います。それまでは、昨日の僕へと態度が原因だということにして、反省室にでも入れて逃げないようにしておいてください」
学院長にクロウトの拘束を頼む。
「セルイド先生から聞きましたが、クロウト君が随分とあなたに対して失礼な振る舞いをしたそうですね。騎士団長が怒って帰られてしまったと、セルイド先生は頭を抱えて嘆いていましたよ」
「実際は全く怒っていないので大丈夫です。クロウト君に失礼な態度をとらせたのも、僕が原因ですし……。セルイド先生が気に病まないように、今日も同じクラスの訓練を見ますよ。子爵が来るのは早くても今日の夜でしょうから、時間はありますので。その後も、他のクラスの訓練も見学して、いい人材がいたら推薦状を渡しておきます」
「はい。お願いします」
学院長との話は終わりにして、昨日と同じ訓練場へと向かう。
「セルイド先生、昨日は取り乱してすみませんでした。学院長とも話をしまして、もうしばらく見学させてもらうことになりましたので、昨日の続きで他の子の訓練の成果を見せてもらえますか?」
「こちらこそ教育が行き届いておらずすみませんでした。昨日の件で生徒達の将来が狭まってしまったと悔やんでいましたが、そう言っていただき安心しました」
教育に熱心なセルイド先生には悪いことをしたなと、少し後悔する。
「今日もよろしくお願いします。それから、クロウトという子を呼んでくるように学院長から言伝を預かっています」
「わかりました。向かわせます。クロウト、学院長が呼んでいるそうだ。行ってきなさい」
クロウトがセルイド先生に言われて、訓練場を出て行く。
「昨日の子がクロウト君だったのですね。それでは、昨日の続きから訓練を見させてもらいます」
「お願いします」
昨日と同様に、目標にしている職ごとに分かれて生徒達に集合してもらう。
「はい、それじゃあ昨日の続きでみんなの訓練の成果を見させてもらおうかと思います。その前に、アルトにはこれを。昨日言っていた騎士団への推薦状。これを第1騎士団に持っていけば、入団テストを受けさせてもらえるから」
朝のうちに書いておいた推薦状をみんなの前でアルトに渡す。
「ありがとうございます」
アルトに注目が集まる。
「他の騎士団がどう思っているかはわからないけど、第1騎士団は、即戦力よりも潜在的だとしても優れた力を持っている人の方を欲しいと思っている。もちろん、力があるだけじゃなくて、騎士としてブレない心があるかや、キツい訓練を続けられるかなどの基本的なことも考慮しているけどね。だから、模擬戦ではなくて、それぞれ自分をアピールする為に何か一つ見せて欲しい。アルトにはその力があるのがわかったから、昨日の時点で推薦状を書くと約束したんだ。それじゃあ、端にいる君から順番に見せてもらおうかな」
一人一人、一芸を披露してもらい、出来る範囲でアドバイスをして、稀有なスキルを獲得していた2人に推薦状を書いておいた。
ただ、1人は猟師になりたいと言っていた男の子で、もう1人は錬金術師になる予定とのことなので、推薦状が使われることはなさそうだ。
他のクラスの訓練も見学させてもらい、同じようにアドバイスをして、数人に推薦状を渡す。
鑑定のスキルによって有能なスキルがあることはわかるけど、通常ならステータス画面は本人しか見ることが出来ず、教員は生徒が使えると言っているスキルが本当に獲得しているのか確認しにくいだろう。
色々と応用の効きそうなスキルを持っている生徒が、学院での成績が芳しくなく、騎士になるという夢を諦めるのも仕方ないのかもしれない。
「団長の方が先に着いていたんですね」
魔法学院の訓練時間が終わった後、学院の入口の辺りに立っていたエドガードさんに言われる。
「僕はスキルを使って移動したから早く着いたよ。子爵は一緒じゃないの?」
「ロンデル子爵は魔法学院の学院長に挨拶をしに行かれました」
「そう。エドガードさん達が到着するまでの時間で、子爵の息子が孤児院に賊をけしかけていた犯人だという証拠は見つけて学院長に伝えておいたから、今頃学院長から話を聞いているだろうね」
「仕事が早いですね」
「後は子爵に任せておけば問題ないね。孤児院以外でも何かやっていれば別だけど、孤児院で誰かが殺されたわけではないみたいだから、処刑はされずに済むんじゃないかな。そういうことで、この任務は終わりね。ネロ君への報告は僕がしておくから、エドガードさん達はゆっくり休んでから王都に帰ってね」
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