第24話 密談
僕は鍛治屋に戻る。
用事が2つあるからだ
「すみませーん!」
僕は鍛治屋の親父さんを呼ぶ
「ああ。なんださっきいた坊主か。忘れもんか?」
「いえ、相談というかお願いがあってきました」
「なんだ?」
「さっき注文した剣の支払いをしにきました。それで僕が払いにきた事をニーナ……注文した女の子には秘密にして欲しいんです」
「それは構わないが、払いに来たらどうするんだ?」
ヤバい、考えてなかった。
「えっと……どうしましょう?」
「いや、俺に聞かれても困る」
当然の答えが返ってきた
「すみません。秘密にはしなくてもいいです。払いに来たら、お代は貰っていると言っておいて下さい」
何も思いつかなかった
「わかった」
「ありがとうございます。それと武器が2本欲しいです。時間がないので既に作ってあるやつで、さっきと同じようなやつと片手用の軽いやつをお願いします」
「誰用だ?」
「片手用の剣は僕が使います。基本は魔法で戦うので、片手剣でお願いします。もう1本は、さっき一緒にいたもう1人の仲間が使います」
「ああ、あの嬢ちゃんか。悪くない選択だが、あまり力があるようには見えなかったから、さっきのより短い方がいいと思うぞ」
「そうなんですね。それではそれでお願いします」
「この2本でいいか?」
親父さんが2本の剣を持ってくる
「それでお願いします」
「2本で大銀貨4枚だ。エアリアの紹介だから少し安くしておいてやる」
「ありがとうございます」
僕はニーナの分も合わせて大銀貨8枚を渡す
お金がほとんどなくなってしまった
僕は剣を2本持って鍛冶屋を出た後、剣をストレージに仕舞う。
宿屋に行き、ヨツバに僕が異世界人だと言うことをエアリアさんに話した事と、ギルドには僕が田中君の言っている異世界人だと既に疑われている事を話す。
その上で、明日ギルマスとエアリアさん立ち合いの元、話をすることになった事を伝える
「そういうことだから、明日の話によっては予定が変わるかもしれない」
「わかったわ。私はどうしたらいい?」
「田中君に見られているのは僕だけだからね。ヨツバまで目を付けられる必要はないよ。とりあえず誰かが訪ねてきたら、僕が異世界人だってことは知らなかったって言えばいいよ。ギルドで新人同士パーティを組んだだけって事にしておいて」
「う、うん……」
「それと、さっき鍛冶屋で買っておいたからこれからはこの剣を使って。いつまでも果物ナイフを使うわけにはいかないから買ってきたよ。もうボロボロだしね」
僕はヨツバにさっき買った剣を渡した
「ありがとう、ニーナと同じような剣なんだね」
「ニーナのより短めになってるよ。鍛冶屋の親父さんがヨツバは力がなさそうだから短い方がいいだろうって」
「実際に力はあんまりないからしょうがないね。それで、これ高かったんじゃないの?」
「最近色々とあって大銀貨8枚稼いでたから気にしなくていいよ。前に冒険者を助けた話したでしょ?その時の治療代と救護班の報酬だよ」
「そんなに貰ってたんだね。色々ともらってばかりだけど、少しずつでもちゃんと恩は返すからね」
ヨツバは負い目を感じているようだ。
正直、お金に関しては本当に気にしなくていいんだけどなぁ。あるに越した事はないけど、僕の生活の基盤は日本なので金欠で切羽詰まることは今のところない。
「あまり気にしなくていいからね。とりあえず気持ちだけ受け取っておくよ。それじゃあ、また明日ギルマスとの話が終わったらくるよ」
「うん、わかった。頑張ってね」
翌日、僕がギルドの外で待っているとエアリアさんがやってきた。
「エアリアさん、今日はよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ。それと良い話がある。昨日君と別れてから、ギルマスに時間をもらえるように話をしておいたんだが、まだ賊の話はギルドから外には出ていなかった。緘口令を出して外部に漏れないようにしてもらっているから、面倒事にはならない可能性が高くなった」
「本当ですか!?ありがとうございます」
これは嬉しい。
ギルマスとの話がうまくまとまれば、急いで逃げるように街を出る必要は無くなるかもしれない。
僕はエアリアさんに付いていき、ギルマスの部屋に入る
「失礼します」
「君がクオンか。エアリアくんもご苦労、とりあえず掛けてくれ」
僕はギルマスに促されてソファに座る
「まず確認させて欲しい。君がサイトウユウタでいいのかな?」
「ええ、正しくは斉藤悠人ですが…」
「それは失礼した。クオンというのは偽名なのか?」
「斉藤悠人という名前は珍しいでしょう?なのでクオンで通しています。偽名というより、ニックネームくらいに考えてもらえるとありがたいですが……」
「それでクオンは異世界人ってことでいいのか?にわかには信じられないが……」
「答える前にお聞きしたいことがあります」
「なんだ?」
「僕が異世界人だとしたら、どうなさるおつもりですか?」
これを聞くということは半分認めているようなものだが、聞かないことには認めることも出来ない
「異世界人だからどうこうするということはない。賊と繋がっていたというならば話は別だがな。ただ、信じ難いが興味深い話ではある。色々と話を聞かせてもらいたい。これはギルドの長としても私個人としてもだな」
「その言葉を信じても良いですか?」
「ああ、もちろんだ」
「クオンくん、昨日も言ったがギルマスは話の分かるお方だ。こういった場面で搦め手を使うような人ではない」
エアリアさんがギルマスを信じていいと言う。
「わかりました。ギルドマスターを信じます。…僕は異世界から来ました。盗賊として捕まったのは学校のクラスメイトです」
「そうか。そうなると賊が言ったことも真実だと言うことだな」
「何を聞いたんですか?」
「この世界の神がそちらの世界の神と賭けをして、景品として君達をこの世界に呼んだとか、科学が発展していて離れた場所にいる相手と誰でも話すことが出来るとか……」
尋問されて仕方ないのかもしれないけど、ペラペラと話しすぎだ。
「そうですね。その通りです」
「はぁ。頭が痛くなるな」
ギルマスは頭を押さえながらため息を吐いた
「いきなり他の世界がありますなんて言われたら頭も痛くなりますよね…」
「それもそうだが、この話が真実として公表された場合、信仰心の強い国や、教会等の反応が読めない。この話を認めるということは、神の行いを認めるということにもなりえる。そうなると、これを認めたくない勢力が、異世界人を異端者として亡き者にしようとしてくるかもしれないな。異世界人を守ろうとした場合には、最悪戦争にまで発展する可能性も否定出来ない。なのでよっぽどの理由がない限り、国は異世界人を見捨てる判断をするだろう」
そうなるのか……怖いな。確かに自分の信仰する神が、賭けをして誘拐しているなんて言っている存在がいたら敵対してきてもおかしくはない
「それはマズいですね」
「ああ、だから確認をした結果、君は異世界人ではなかった。賊が助かろうとデタラメを言っていたということにする。これは決定事項だ。外に漏らすことは許さない」
「わかりました」
僕としてもその方が都合がいい
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