第6話 『世界』
アナザー
著者:ピラフドリア
第6話
『世界』
八月八日。東京駅に突如巨大な塔が現れた。
そして四人のヴィランがその塔の上から世界を見下ろし、宣言する。
「これから我々がこの世界を崩壊させる」
その宣言通り、各地で大規模な爆発が起きる。そして爆発した土地には空間にヒビのようなものが出来上がり、彼らの言葉が本物であると人々は理解することになった。
病室で眠る中村。ずっと追いかけてきた背中だ。その姿が今、目の前で悪に屈している。
中村がどうしてこのような状態になったのか。彼らは上層部から聞いた。
本来は事務所で行うように指示のあった仕事だ。しかし、中村はこれを一人で行おうとしていた。
この事件の規模をいち早く察したからだ。
未来あるヒーローである三人を危険な目に合わせたくない。そう考え、そして一人敵陣に向かった。
イナズマが彼にあったのはヒーローの新人時代である。無鉄砲に突っ込む彼を止め、それでも言うことを聞かない彼に付いていき、彼を守りながら戦った。
ウィングは元々他の事務所にいたが、ある作戦中に仲間に裏切られたところを中村に助けられ、彼ら事務所を移ることを決意した。
グラビティはイナズマの紹介で事務所にやってきた。新人最初の逮捕の手助けをしてくれたのが彼だ。
石崎は中村の同期に当たる。中村がヒーローになったのが遅かったため、年齢は彼の方が上であるが、対等な関係でチームを組んでいた。
能力の弱体化になっても彼は決して見捨ててくれなかった。だからこそ、どんな形であれ、彼の力になりたい。
そう思い、事務所を立ち上げた。
自由人でお人好しで、誰よりもヒーローであろうとした男。
彼を病室に置き去りにし、彼らは歩み出した。
塔の前にヒーローたちが集められた。
中村事務所の四人もその中にいる。
他にはこの東京駅周辺に事務所を構える墓鳥事務所のヒーローや、各地から集められた優秀なヒーロー。
今日は塔への突撃日。
世界の破壊者という名前に踊らされ、仲間になったヴィラン達は塔の周辺を囲んでいる。
警官の数も含めればこちらの方が多い。しかし、彼らの力は未知数。どれだけの被害が出るか予想がつかない。
指揮を行うのはヒーローの中でも集団戦を得意とするイワーシというヒーローだ。
突入は正午ちょうど、残り時間は一分。
突入班の一人が緊張で屈伸を始めた時、空から何かが降ってきた。
これは地面に激突すると、大きな衝撃音を放ち、塔へと続く道のど真ん中に落ちた。
それは鉄でできた箱。長方形でロッカーのような形をしている。
落下の衝撃で凹んでしまっている、どこから降ってきたのだろうか。
すると、箱が開く。そして中からタキシードを着た長身の男が現れる。男の口に牙があり、鋭い目で突入班を睨んだ。
「や、やつは!!」
その男の正体を知っているのか。一人のヒーローが口を開く。
「ヴィランの中でも残虐。殺人鬼ヴァンです」
その名前にイナズマも聞き覚えがある。
北東の積雪地帯にて、一晩のうちにホテルに住む職員や客を皆殺しにしたヴィラン。
現実世界でも犯罪に手を染め、ヒーローが欲を止めることのできなかった人物。
ヴァンの登場に驚いていると、その横にワープゲートが現れて次々とヴィラン達が現れる。
そしてヴァンが突入班に向かい言う。
「ここから先は、行かせない。あの方達のために!!」
やはりこいつらは吸収されたヴィラン。ヴァンの合図でヴィラン達が襲いかかってくる。
ヒーロー達は応戦し、ヴィラン達との乱戦が始まる。
この騒ぎの中、イナズマは塔の中に見覚えのある人物がいることに気づく。それは写真にあった人物。
追っていた中村を返り討ちにし、病院送りにしたヴィラン達。
イナズマは真っ直ぐに彼らに向かい走る。それに続き、ウィングやグラビティも塔へと向かう。
途中で他のヴィランに邪魔されそうになるが、気を利かせてくれたヒーロー達が道を開けてくれる。
敵の動きを封じて、塔までの一本道ができる。
中村の敵討ちという気持ちはないと言ったら嘘になる。だが、ヒーローとしての役目を果たす!!
塔に入ると、すでに奴らの姿はない。中は家具などはなく上に続く螺旋階段があるだけだ。
塔の広さは半径三十メートル。かなり大きな塔で動き回りやすいが、塔の端から端まで行くのには少し大変だ。
螺旋階段は上の階まで続いており、次の階までは通常の建物の5階分は登る必要がありそうな高さだ。
「よし、急いで登るぞ」
イナズマ達が登ろうとした時、上の階から巨体が降ってくる。それは人間。スキンヘッド姿のヴィランだ。
地面に着地すると大きな音を立てて、土埃を辺りにばら撒く。
「ヒーロー!! 俺を知ってるか?」
「ああ、知ってる。ヘッドだな」
ヴィラン名ヘッド。中村と対峙したヴィランの一人だ。
「なら、俺がなぜここに来たかわかるか?」
こいつは最も戦闘に特化した能力を持っている。そいつがここで現れるということは、ここでヒーローを止めようということか。
イナズマが一人で前に出る。
「お前ら先に行け」
そして超スピードでヘッドを蹴りつけた。
「ここは俺が引き受ける!」
ウィングとグラビティは一瞬戸惑うが、イナズマの顔を見て、二人は顔を見合わせて頷いた。
その後、任せた! と一言言い、二人は先へと行く。
イナズマの顔を見て、負ける気ではなく。確実にこのヴィランを捕らえた後、すぐに追いつく。そう言っているのを表情で理解したからだ。
二人を行かせるために、邪魔をしようとするヘッドをイナズマは足止めする。
ヘッドを連続で蹴り、ヘッドの動きを封じた。そして二人がいなくなり、ヘッドも諦める。それを知ってか、イナズマは一度攻撃をやめた。
第一階層。ヘッドvsイナズマ。
【後書き】
バトルものっぽい展開にしたい。
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