第10話 一人の少女

ある日、トゥナ・ブラウンは偶然見付けてしまった。彼女の金色の瞳は強く、懐かしくもあるその魔力を――


トゥナはトップの成績で魔法学院に入学した。彼女には生まれた時から特別な力を持ち、その力を制御する過程で幼少期には魔法の才能を開花させている。


魔眼――金色の瞳に宿る特別な力だ。魔眼と言ってもすべてが同じ力ではない。神が与えた力だとか、先祖帰りだとか、そういう逸話はたくさん残っているが、トゥナの魔眼は父親と同じ力を持っていたため、血の繋がりが力を継承しているという説が濃厚だった。


私の魔眼が持つ能力は力だった。この力が制御できないうちは、周囲の人すべての魔力の流れが視界に入り、怖い思いもした。父親と同じ能力だけあって、父の教えを受け、今では完全に制御できるようになっている。


しかし、最近一度だけこの能力が制御できない事件があった。それは職員室での事、日直だった私は朝早くから職員室を訪れており、担当の教師と話をしていた時だ。


「退学はしません!」


その張り上げた声が聞こえた時、とてつもない魔力を感じたのだ。そっちを振り返ると男子生徒が一人、教師と向き合っていた。能力を――魔眼を開眼していないはずなのに、魔力が溢れるように満ちているのがしまう。周りの教師も皆、彼を見ているが、その溢れる魔力がいるのは私だけの様だった。


「あら……。トゥナさん?眼が……」


担当教師に言われてはじめて気づく。魔眼が開眼していた事を……。トゥナの金色の瞳がきらきらと魔法によって輝いていた。


「えっ……。あっ……。す、すいません」


自分でも驚きを隠せず、その場から逃げ出してしまった。教師にはホームルームの後に謝っておく。その際、先ほどの生徒の事を聞いた。名はアレク……。私が知ってるとは違うけど、彼の持つ魔力はとても懐かしい感じがした。さらに驚いたのは、同じ1年生で、しかもC組らしい。C組と言えば、学年の中でも一番成績が悪いクラスだ。あれほどの魔力を持っていながらC組とは考えられなかった。その事実を確かめるため、昨日から張り出されている掲示板を覗き込む。


「っ!?」


まさか……0点!?あれだけの力を持ちながら……?実力を隠している……にしてはやり過ぎだ。どちらにせよ、何かある……。私は彼に興味を持つのだった。


お昼休み、双子の妹であるミーナと一緒に廊下を歩いていると例の彼とすれ違う。


「こんにちは」


彼は友人と一緒だったが、きちんと挨拶を返してくれた。私は少し嬉しくて微笑む。


「へぇ?トゥナが男の子に興味持つなんて珍しいじゃん」


ミーナが今のやり取りを見て、話しかけてくる。ミーナには彼の魔力がいない。魔眼は私だけが受け継いだ能力だったから――。


「ミーナ。そんなんじゃないよ。私達も早く教室に行きましょう」


私は誤魔化して教室に入っていく。ミーナはふーんと言いながら私に続いた。

面白くなりそう――トゥナにはそんな予感がした。

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