魔法学院の下剋上 ~底辺のクラスで無能と呼ばれ、蔑まれたけど、いつかあいつを倒して頂点を目指します~

水城

1章 入学編

第1話 いざ、魔法学院へ!

俺はアレク。今年で10歳の誕生日を迎え、王立学院への入学を許された。レグリット王国では10歳になると4つの王立学院のうち1つを選んで入学できる。その中で俺が選んだのはここ、魔法都市シャンデラにある王立魔法学院だった。


「今日から俺もここで学ぶ事ができるんだな」


「ったり前だろ?ここから新生活が始まるんだぜ」


隣にいる金髪の少年はレイ。彼も幼い頃に両親を亡くしており、3歳の頃から孤児院で暮らしている。レイが孤児院に来てからは一緒に遊ぶ事が多く、親友ともいえる人間だ。魔法使いだったおじいちゃんの話をする度に目を輝かせており、魔法使いに憧れて魔法学院を選んだらしい。


「しかし、すっげぇな…広くて迷子になりそうだぜ」


レイは広大な城を前に、楽しそうにしていた。王立魔法学院はシャンデラの中心にあり、お城のようなモチーフになっている。周囲は魔法防御を施された城壁で囲まれ、城門以外からの出入りはできない。敷地も広大で、手前から2階建て、3階建て、4階建ての城館が並んで城の形を形成している。さらに奥には魔法闘技場、左右には城塞を模した訓練塔が建っている。


「そうだな。今日からここに住むって考えると大変そうだ……」


アレクは少し困惑した表情で答えた。学院は基本的に全寮制で、冬季にある長期休暇の時期やお祭りの時期の休暇は帰省が許される。俺たち孤児院の出身であっても例外ではない。『すべての国民は学ぶ権利がある』という王国の方針ですべての王立学院は貴族、平民などの身分を問わず入学でき、学費も公費で賄われる。ただし、ボランティア活動の一環として魔物討伐や奉仕活動などの義務が発生し、その依頼料や素材などが公費に充てられる仕組みだ。


「目立って魔導騎士団にでもスカウトでもされりゃー贅沢な暮らしができる。出世すれば貴族も夢じゃないぜ」


「それも大変だと思うけどな」


レイの話にアレクは少し呆れ気味に答えた。レイは貴族に憧れているようだが、アレクにはあまり興味はない。ちなみにスカウトと言うのは、王立学院で催しがある際に、騎士団やギルドを始め、一般人まで見学ができる。その際に目ぼしい人物には声がかかる可能性があるという話だ。


2人が話し込んでいるうちに、始業の時間が迫っているためか、周囲の人が次第に増えていく。


「ちょっと君たち」


自分たちが声をかけられたのに気づいてアレクとレイは振り返る。そこに立っていたのは自分達と同じ制服を着た上級生らしき人物だった。魔法学院の制服は白を基調としており、男子はネクタイ、女子はリボンを着用している。しかし、彼が身に着けるネクタイの色は自分達とは違った。目の前の生徒が身に着けているネクタイカラーは3年生を示すイエロー、自分達のネクタイカラーは1年生を示すグリーンだ。さらに、襟元にはゴールドのバッジが輝いている。


「見たところ新入生みたいだけど、通路の真ん中に立って話し込むと他の人の邪魔になるから移動した方が良いよ」


上級生に言われ、自分達が通行の妨げになっていた事に気づいた。


「あっ!すいませんでした」


アレクは上級生に誤り、道を譲る。レイは不満そうだったが、アレクに続いて謝罪し、道を譲った。


「ありがとう。次からは気を付けてね」


上級生は2人に挨拶をして城門を進んでいく。彼の後ろには2人の少女が控えていた。


「頭が高い」

「身の程をわきまえろ下民」


少女達は自分達とすれ違う際にこちらを睨んでそう言った。そのまま顔を反らすと彼に続いた。リボンカラーがイエローなので、彼と同学年のようだ。


「なんだよあの女!かんじ悪いな」


「仕方ないよ、悪いのは俺たちなんだから。俺たちも行こう」


一行が見えなくなると、レイが不満そうに言った。アレクはレイを宥めて一緒に歩き出す。大きな城門をくぐると広場になっていた。広場にはサクラと呼ばれる木が整列して植えてあり、満開の花びらは春を感じさせる。アレク達はその並木道を進んでいく。その先には校舎があり、入り口には人だかりができていた。


「多分あれだな」


レイがその人だかりを指して言う。遠目でも人だかりより大きな掲示板が見えた。近づくとクラス割りが張り出されているのが見える。


「ちょっくらごめんよっと……」


レイは人の間を縫って掲示板に向かって進んでいく。アレクもそれに続き、最前列に出た。


「あったぜ!俺たちのクラスは……」


「C組だな」


1学年の人数はおよそ60人でA、B、Cのクラスに分かれている。A組はエリートクラスで人数も10人と少ない。B組は20人、C組は30人といった感じだ。入学希望者は全員入学できるので、人数が増減する場合はB組やC組の人数を調整するらしい。1年間はクラスの変動はないが、学年が上がる際に1年間の成績によって、クラスが変動する事もある。


「場所もこっちに書いてあるよ」


クラス割りの隣に教室までの案内が書いてあるのをアレクが見つけた。現在位置が1号館入り口にある掲示板でクラスの場所は同じ1号館2階となっている。案内図によるとどうやら1号館が校舎、2号館が研修棟、3号館が宿館になっているみたいだ。


「早速向かおうぜ」


レイに言われて2人は掲示板を後にし、校舎へ入る。内部は入ってすぐ左右に分かれる形で階段があり、吹き抜けの廊下になっていた。奥には2号館に繋がる道が続いている。中央から左側は2年のクラスになっており、2人は右側の階段を登っていく。C組は階段を登って真っ直ぐ進んだ先、角部屋にあった。


2人は教室の扉を開き、中に入るのだった。


そこに待ち受けていた者とは――?

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