第46話
《玲子:知らないなら教えてあげる! 次に健一郎が出る映画は学園ホラーなの! 年齢的にも、学制服が着られるのはギリギリだから、これが学生役として最初で最後になるんじゃないかって、みんな注目してる!》
あたしのスマホを横から覗き込んでいた厚彦が「まさか、これが原因?」と、聞いてきた。
まさかじゃなくても、どうやらその通りみたいだ。
有名人の言動や仕事内容は、ファンにとってとても大切なものであることがよくわかる。
そう理解した瞬間、梓も厚彦も盛大な溜息を吐きだしていた。
玲子になにかあったのではないかと、心配していたのだ。
「たったそれだけのことだって」
(それだけのことで幽霊騒動に巻き込まれに行くのもどうなのかと思うけど)
とにかく玲子の最近の変化の理由はわかった。
「教室に戻ろうか」
そろそろ授業が始まってしまう時間だ。
梓はスマホをポケットに戻して、教室へと急いだのだった。
☆☆☆
教室へ戻る途中、不意に厚彦が険しい表情を浮かべて足を止めた。
梓も自然と歩調を緩める形になった。
「どうしたの?」
聞くと、厚彦はジッと倉庫を見つめている。
「この中に誰かいる」
「え? 誰もいないよ?」
人の気配は感じられない。
試しにドアを開けてみようとしたが、しっかりと鍵も掛けられている。
倉庫なのだから、普段から開いているわけもない。
すなわち、ここに入り込む生徒はめったにいないということだ。
「いや、絶対にいる」
幽霊の感というやつなのだろうか?
厚彦はかたくなにここに人がいると言い張っている。
でも、今は倉庫内を確認している暇はない。
「また休憩時間に確認しに来ようよ」
梓がそう言った時、次の授業開始を知らせるチャイムが鳴り始めたのだった。
☆☆☆
次の授業中、厚彦は普段のようにふざけることもなく、ジッと梓の隣で待機していた。
それほどさっきの倉庫の存在が気になるみたいだ。
授業が終わりを告げるチャイムが鳴った瞬間、厚彦は勢いよく立ちあがっていた。
「玲子、ちょっと一緒に来てくれる?」
「え、なになに? まさか、幽霊がいたの!?」
目を輝かせて聞いてくる玲子に梓は顔をしかめた。
たのむから、教室内で堂々とそう言う話をするのはやめてほしい。
エリカみたいな、オカルト好きな子だっているんだから。
「まだわかんない」
梓は短く答えると、玲子と厚彦とともに教室を出たのだった。
☆☆☆
3人でまず訪れたのは職員室だった。
しかし、今日は新聞部ですと嘘をつく必要はなかった。
「倉庫の鍵?」
近くにいた先生を呼んで、本館一階の倉庫室の鍵を貸してほしいと願うと、先生は首を傾げながら鍵を渡してくれた。
「あの部屋に授業に使えるものなんてあったか?」
「い、いろいろとあるんです!」
慌てて梓は言う。
あの部屋に入ったことは今まで一度もないから、適当に『授業で必要なものが倉庫室にある』と言ってしまったのだ。
「まぁいっか。鍵はちゃんと返しにこいよ?」
「はい! ありがとうございました!」
玲子と2人で深く頭を下げ、逃げるように職員室を後にする。
「ふぅ、危なかったね」
職員室から離れて、梓が息を吐きだした。
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