第36話 牢獄の処理

 牢屋を出た私はアルメダを連れて、まずは盗まれた金品などの確保をすることにした。


 急がないと使用人に逃げられてしまうが、追っている間に仲間の男たちが起き上がって、盗品を持って逃走されても困る。


「なにかいいスキルは……」


 と、私は小声で呟きつつ、脳内のスキル一覧を探す。


 その結果、スキル『対象物所持禁止』を使用することにした。


 許可していない人物が対象物を持とうとしても、なぜか掴めなくなるという、結構怖いスキルである。


 ともかく『対象物所持禁止』によって、盗品は押さえた。


「こ、ここから出してくれ!!」


 捕まっていた複数の商人たちが助けを求めてくる。


 この場に何も対策せずに置いていったら、金品と同様、男たちから報復を受ける可能性があった。


「ビッグ! 壊してあげて」


 ビッグに全員の牢屋の鉄柵を破壊してもらえるよう頼むと、一瞬で全ての柵に穴が開けられた。


 だが、商人たちに別々で逃げてもらった結果、追ってきた男たちにまた誰かが捕まったりしたら困りものだ。


「私が戻ってくるまで、全員一ヶ所に集まっていて。絶対に安全を保証する。また捕まるのは嫌でしょ?」


 私は牢屋たちから出てきた商人を盗品の横に集め、『安全地帯Ⅹ』を発動する。


『安全地帯』はその名の通り、その場所にいれば、絶対に危害を加えられないスキルだ。


『安全地帯Ⅰ』は一人分の安全地帯しか作れないが、スキルレベルが一上昇するごとに、一人分の空間を拡張させることができ、『安全地帯Ⅹ』は十人分の空間を確保することができる。それなりに動ける余裕もあるはずだ。


「よし、これで盗品と人質の対策は完璧ね」


「あ、あの……私も、ここに残った方がよろしいのかしら……」


 不安げな表情でアルメダは言う。


「いや、アルメダのことは連れていくよ。依頼主には仕事の達成を見届けてもらわないとね」


 そうは言ったものの、怯えているアルメダをここに置いていくのが可哀想だと言うのが本音だった。


 私の言葉を聞いて、アルメダはわかりやすく明るい表情になる。


 私が一緒にいることで、恐怖が少なくなるのなら、そばにいてあげたかった。


 二度と人質に取られるようなミスはしない。


 きちんと警戒していれば、アルメダ一人なら守りきることができるだろう。


「それじゃあ、あいつをこらしめにいこう」

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