第88話 勇者と魔王と狂宴

「はぐっ……もぐもぐ……これも美味いではないか!」


 大きな声で叫ぶようにそう言うマオ。そして、肉、野菜、魚……どんどんと目の前の料理を食べ尽くしていく。


 俺たちは宿屋の主人にこの町で一番美味い料理が食べられるのはどこかを聞いた。


 結果としてこの町にはそれなりの大きなレストランがあるとのことで、俺たちはそこを訪れた。


 この世界にもそれなりの大きな町にはレストランが存在する。無論、味は店ごとに大きな違いがあるが……。


「……確かにそれなりに美味しいですね」


 俺が食べても確かに美味い味だった。


「すまぬが! こちらに料理を追加してほしいのじゃ!」


 そして、マオは好き勝手に料理をバンバン注文している。ドラコもその料理を無限に食べている。


「あ、あはは……お腹が減っていたみたいですね……」


 セリシアもニコニコ笑っているが……目の前で重なった皿の数をみれば、それなりにコイツも食べていることがわかる。


 性欲と食欲は比例すると聞くが……サキュバスが大食らいだったとは知らなかった。


「ソーマ様? どうかされましたか?」


「……いえ。アナタも、もっと食べたかったら追加していいですよ」


 俺がそう言うとセリシアは少し恥ずかしそうにしていたが、しばらくすると、おずおずと追加注文するために手を上げていた。


 しかし……こんな調子だとさすがの蓄えも少し不安になってくる。


 そんな俺の不安をよそに、狂宴は一時間程度続いた。


「ふぅ~……流石に儂も満足じゃ……」


 嬉しそうにそういうマオ。ドラコもお腹をさすっている。セリシアも満足したようだった。


 ……というか、このレストランの食事をすべて食い尽くしたのではないかというレベルなのだが……大丈夫なのだろうか。いろいろな意味で。


「……全員、もう満足しましたか? じゃあ、そろそろ――」


「素晴らしい!」


 と、いきなり大きな声が聞こえた。声のした方を見ると……上等な身なりをした男性が拍手をしながらこちらに近付いてきたのだった。

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