第73話 勇者と魔王と異様な光景
「……違う! 儂は魔王じゃ! 本物の魔王なのじゃ!」
動かなくなった巨狼を揺さぶりながら、マオは頭に角を出現させる。しかし、巨狼からは反応がない。
「おい! 聞いて居るのか! 儂はまだ死んでおらぬぞ!」
「……マオ。もうやめましょう」
俺は巨狼の身体を揺するマオを制止する。既に巨狼は物言わぬ屍体となっていた。
「……今、コイツが言っていた事は本当か?」
マオは悲しそうに俺のことを見る。俺は……何も答えられなかった。
「……さぁ。わかりません」
すると、マオは巨狼の屍体を前に、祈るように手を合わせる。
「アナタ……魔王でしょう? 神様に祈るんですか?」
「え? ……あ、あぁ……すまぬ。なぜか……こうしないといけない気がしたのじゃ……」
そういうマオはひどく憔悴していたようだった。俺は流石に気の毒になって、そのまま何も言わずに村に戻ることにしたのだった。
そして、それから無言のままに森の入り口の方まで戻ると……なぜか村の方が明るくなっていた。
「な、なんじゃ……何かあったのか?」
驚くマオを他所に、俺はそちらに向かっていく。
と、村が明るくなっていたのは……松明のせいだった。村人が無数の松明を持って立っている異様な光景がそこに広がっていた。
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