第17話 勇者と魔王と盗賊

「そ、ソーマ……村は……まだか?」


 それから少し歩いただけで、マオはまたしても疲れ切った顔で俺に聞いてくる。


「もう少しですから。文句言わないで歩いてくれませんかね?」


 と、俺が振り返ると、マオの背後に人影があった。


「……ん? な、なんじゃ……!?」


 マオは慌てて俺の背後に隠れる。俺は剣に手をかける。


「おい! お前ら、旅のものか?」


 でてきたのは、ガラの悪そうな3人の男だった。見た目からしてどう見ても盗賊っぽい。


「えぇ。旅のものですけど」


「そりゃあ良かった。身ぐるみ全部置いていけ。俺たちは優しいから、そうすれば命だけは助けてやるぜ?」


 下卑た笑いを浮かべながら見せびらかすようにナイフを持っている男達。


 正直、マオの件で俺はかなりイライラしていているのだ。さっさとこんな奴らは片付けてしまおう。


 俺はスキル「超速移動」を発動する。


「……は?」


 盗賊の一人が声をあげていたが、次の瞬間には、三人全員が俺に斬り捨てられていた。


「ひっ……!」


 三人がほぼ同時に倒れたのを見て、背後のマオが悲鳴をあげる。俺は剣を収め、魔王の方を見る。


「盗賊を見るのは初めてでしたか?」


「あ、あぁ……と、というか、ソーマ、お主……こ、殺してしまったのか?」


「えぇ。殺しましたよ」


 俺がそう言うと信じられないという顔でマオは俺を見る。むしろ、信じられないのは俺の方だった。


「まさかとは思いますが、殺さなくても良かったのでは、と言うんじゃないですよね?」


「そ、それは……だ、だが、お主が強いことを知れば、奴らも撤退したのではないか?」


 俺はその言葉を聞いて、わざとらしくため息をつく。


「……ダメなんですよ。俺はこういう経験何度もあるからわかるんです。アナタは……この世界を知らなさすぎる」


 俺はそれ以上言わずに歩き出す。マオは俺の少し後を遠慮がちに着いてくる。


 ……どうやら、転生してきた俺の方が、少なくともこの何もしらない魔王様より、この世界に馴染んでしまっているようであった。

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