第5話 勇者と魔王と退屈

 転生する前の俺は本当につまらない状況だった。


 特に人生に目標があるということもなく、親しい友人がいるということもなく、ただ、漫然と日々を過ごしていた。


 それが、まさか唐突に死んでしまうとは思っていなかったし、その先で転生するとも思っていなかった。


 だけど、転生した先の世界でも別に俺は変わらなかった。むしろ、転生とともに与えられた強大な力のせいで、余計に孤独になった気がする。


 考えてみれば、魔王を勇者一人で倒しに来るってなんだか昔のRPGだ。普通は仲間と一緒に倒しに来るはずだ。


 でも、俺には仲間なんてできると思わなかったし、作ろうともしてこなかった。


 結果として、魔王には俺一人で挑むことになったわけだが……結果としては俺一人でも問題なく、圧倒することができた。


 ……いや、そもそも魔王とは戦ってすらいないのだが。


 だけど、この後どうなるのだろうか……魔王は下僕になるとか言っているが、命令は抹殺だった。


 魔王の言い分とかは無視して抹殺してしまおうか……いや、おそらくもっと泣きわめいて命乞いするだろうな。そこまでされてしまうと、俺もやる気がなくなるというものだ。


 まぁ、そんなことは後で考えればいいか……と考えて、俺はそれ以上考えるのをやめ、そのまま本当に深い眠りについたのだった。

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