魔王「勇者よ! この儂の下僕にしてやろうではないか!」勇者「……は?」
味噌わさび
第1話 勇者と魔王と出会い
「だ、だから……儂の下僕にしてやろうといっておるのだ!」
目の前の人物……この世界を支配しようとする魔王は酷く間抜けな表情でそう言った。
……いや、すでにあらゆることが拍子抜けだった。
まず、魔王が俺よりも遥かに弱くて、無抵抗のままに、すでに窮地に追い詰められていることだ。
そもそも、魔王が俺よりも身長の低い、子供っぽい女の子の容姿だとは思わなかった。
頭に魔族特有の角が生えている以外、俺が転生する前のクラスメイトの女子と変わらない。
「……お断りします」
「……へ?」
「ですから……お断りします」
「……い、いやいや! この儂が直々に言っているのだぞ!? それなのに即答か?」
「はい。即答ですね」
俺がそう言うと、目の前の人物も自分の立場を理解したのか、気まずそうに苦笑いを浮かべる。
「ま、待て……よく考えるのじゃ。お主、良いのか? こんな機会を簡単にのがしてしまって?」
「はい。別にいいですけど」
「……わ、儂の下僕になれば……アレじゃ! 色々と良いことがあるぞ!」
「例えば?」
「た、例えば……か、金じゃ! 財宝なんかは無限にある! それをお主に授けようじゃないか!」
「いや、興味ないですね」
俺がそう言うと目の前の人物はさらに絶望した表情で俺のことを見る。
「……あ、後は……ち、力だな! 儂が人間では決して得ることのできない力を授けてやるぞ!?」
「それも、別にいらないですね」
……そろそろこの問答も大分無駄な時間に思えてきた。俺は手にした剣に力を込めて、思いっきり振り上げる。
「ま、待て!」
と、目の前の人物はいきなりそう言うと……地面に頭をつけて俺の前に這いつくばった。
「た、頼む! げ、下僕になるから! 助けてくれ……!」
そう言って土下座してきた姿を見ていると……今俺の目の前にいるのが、世界を支配していた魔王とは思えなかった。
なんというか……可愛そうなただの魔族の女の子にしか見えないのであった。
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