第四十二話☆袖付け作業
私の手元には今からアレンジするつもりのノースリーブのワンピースがある。
色もつけたいけど、やっぱり袖を優先して付けたいよね。
半袖のワンピースが出来上がるようにまず、筒状の布を2つ作る。
ワンピースを裏返し、両側の袖に先ほど作った筒状の布を縫い付ける。袖の先を軽く折り返し、縫い付ける。
そして、元に戻すと、袖付きのワンピースの完成!!
……とはならない。
「なんでだ…?」
私の目の前にあるのは私の想像とは少し異なっていた。袖が真横に伸びている。
まぁ…、着れない事もないよね?うん。きっと。
実際に着てみる。
すると、左右の袖の長さが全く合っておらず、袖の先が外側に行くほど短くなっており、水平とは程遠かった。
こんなデザインの服もあったような気もするが、私の作った服はなんだか不恰好に見える。
「そっか……。ただの筒状じゃなくて、少し布を寄せて袖の先が斜め下に向くようにしなくちゃいけないのか…?」
左右の袖の長さにバラつきがある。
…複製魔法でコピーすれば良かったのか!
早速作り直してみる。
肩の部分の方が少し長く、脇の部分の方が少し短くなるようにサイズを調整して、筒状の袖を作る。
一つ作ったら、それを複製する。
そして、まだノースリーブ状態のワンピースを裏返し、袖を縫い付ける。
「できたんじゃない?」
ワクワクしながら、袖を付けたワンピースをもう一度裏返し、元に戻す。
「アイロンとか有ればいいんだけど…。魔法で代用して、燃やしたら嫌だし、まぁいいか。」
もう一度着てみる。
…なかなかいいのでは?
早速、私は机の端で余り布を使い、何かをしているレアを呼ぶ。
「ねぇ、レア!どう思う?上出来じゃない?」
私はレアの目の前で一周クルッと回って見せる。
「あら!いいじゃないの!…でも、色があった方がもっと可愛いと思うのだけれど…」
「あ、やっぱりレアもそう思う?そうだよね、染料のやり方がわかればな…」
「…?せんりょう?あぁ、人間のあの難しいやり方ね。それでもいいけど、私は魔法で色付けれるけど。」
「やっぱ難しいよねー。……ん?」
私の耳がおかしくなったのかもしれない。ちょっともう一度聞いてみる。
「今、なんて言ったの…?」
「え?染料って人間のやる難しいやり方よね?」
「そのあとっ!」
「あぁ、私も服に色を付けるくらいだったらできるわよ?だって、草花の成分を滲ませるだけだもの。私の専門分野ねっ!」
レアが胸を張り、自慢げに語る。
褒めて欲しそう。でも、言葉が出てこない。
レアってすごいっ!と思う前に頭の中に咄嗟に広がったのは、早く言ってよっ!!と言う気持ち。
今まで悩んでたのに…。もう一度言いたい。早く言ってよっ!!
…でも、染料のやり方についてレアに聞いてなかったから、レアに非はない。
でも、早く言ってよー!!
「レア!この今さっき、袖を付けたワンピースに色をつけて欲しいんだけど、どうかな?」
「あらっ!お安い御用よっ!」
レアはワンピースに軽く手を翳す。
次の瞬間、ワンピースがみるみる緑色に変化した。
フワッと心が落ち着くような草木の香りが辺りに漂う。
「わぁ…すごい。」
思わず口から感嘆の声が溢れる。
「よし、可愛くなったわね。」
「ありがとう、レア!!早速、増やして……」
そこで私はハッと気づく。
「ねぇ、レア。その…、緑から他の色に変えることってできるの?」
レアは当然の事のようにあっさり答える。
「え?無理ね。もう、染めちゃったもの。」
「くぅぅぅ……!」
私は思わず拳を握りしめる。
全部緑のワンピースになっちゃうじゃん!!!白色の時に複製すれば良かったのに!
……また袖、付けなきゃだめかな…?
思わず私は遠い目をしてしまった。
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